【R18】絶倫社長との契約結婚〜借金のカタに売られた私は、契約夫の愛に溺れる〜

布団のノラネコ

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3話

 翌日朝早くから起き出して、私は部屋の整理を始めていた。
 ダンボールは玲司が手配してくれたものが朝っぱらから届けられたので、そこに荷物を詰めていく。

「結衣、本当に明後日引っ越すの? 急すぎない? その恋人の方は本当に大丈夫な人なの?」
「お父さんの借金を肩代わりしてくれる社長だよ。いい人に決まってるじゃん。親戚に結婚をせっつかれているから早めに同居がしたいんだって。その人と付き合い始めてから私も幸せだし、心配しないで」

 付き合い始めたと言っても、それは昨日から、ということになるのだけれど。
 母には半年前から付き合っているIT企業の社長だと説明している。
 仕事の取引先で知り合ったのだ、と。実際、お父さんの会社の取引先なのは事実だから、嘘ではない。

 できるだけ母には心配をかけないように誤魔化しながら、私は引っ越しの準備を進めていた。

「結衣、手伝うぞ」
「お父さん……昨日の今日だし、無理しないでいいのに」
「いや、お前には迷惑をかけるからな」

 父は背丈が一回り小さくなったように見えた。疲れたような顔で、今日もしょぼくれている。

 借金のカタに私を差し出したのが、よっぽど堪えているみたいだった。

 とはいえ、私が決めたことだ。父は土下座までして止めようとしてくれたのだから、罪悪感を感じる必要なんてないのに……。

「迷惑だなんて。それに、引っ越し先は超高級マンションの上層階だよ。私からしたら大出世」

 玲司は事業で随分と成功しているようで、住んでいる家もセレブそのものだった。

 そんな場所にこれから引っ越すだなんて、あまり実感が湧かない。

 都内の一等地にある高級マンションの上層階にふさわしそうな家具を持っていなかったので、それらは置いていくことにした。

 玲司に聞くと、必要な家財道具は客室に揃っているらしい。それを使わせてもらうことにして、家具と細々した私物は実家に置いていくことにしてしまう。

 主には着替えとパソコン、お気に入りの一人掛けソファと書籍の類くらいだった。

 そして三日後、引っ越し業者とともに、玲司が迎えにきた。

「玲司さん、わざわざ迎えにきていただいてすみません」
「いや。俺たちはこのまま車でマンションまで向かう。引っ越し業者より先回りしなければならないからな」

 そう言って玲司は引っ越し業者に手早く指示を飛ばすと、黒塗りの高級車へと私を案内した。

「こ、これに乗せていただけるのですか?」
「そう慄くな。ただの車だ」

 ただの車、という佇まいではない。いかにも高級感のある本革のシートは艶々で、私などのお尻が上に乗っかるのが申し訳ないほどである。

 とはいえ待たせるわけにもいかない。ひとまず助手席に乗り込むと、滑らかな動きで車は発車した。

「荷物は随分少なかったが、あれでいいのか?」
「高級マンションに似合うような家具は持っていませんし、細々したものは実家に置いて行こうかと」
「そうか」

 玲司はそれいこうむっつりと黙って運転していた。

 その怜悧な横顔は惚れ惚れとするほどに美しい。
 こんな人が契約結婚とはいえこれから自分の夫になるなど、到底信じられない。

「……なんだ?」
「いえ……」

 まじまじと横顔を見ていると、玲司は横目で私の方を見て、問いかけてきた。
 気まずくなり、俯く。

 こんな気詰まりな沈黙の支配する関係で、これから先夫婦として玲司の親族を誤魔化したりできるのだろうか。

 どう打ち解けたらいいか分からずに、私もただ黙り込んでいた。

 マンションに到着すると、そこはガラス張りのリビングを持つ広々とした部屋だった。
 見渡せば、東京の街が一望できる。夜景はさぞ美しいだろう。

 (ここが……これから私の家になるの?)

 実感が湧かない。まるで高級ホテルに迷い込んでしまったような気分だった。

 私に与えられた客間は、実家の自室よりも二回りほど大きい。
 ミニ冷蔵庫なども備え付けられていて、随分と快適そうだ。

 ベッドもダブルサイズで、ふかふかのいかにも高級そうなマットレスが使用されていた。

 それからすぐに到着した引っ越し業者が、次から次へと荷物を運び込んでくる。

 引っ越しはあっという間に終わった。

「俺は自室で仕事をしている。適当に過ごせ。用があれば声をかけるように」
「はい」

 私は荷物の開梱作業を終えると、ガムテープのゴミをまとめてリビングのゴミ箱へと捨てに行った。

 すると——。

 中には惣菜パンの包み紙と、カップ麺の容器。それに隣のゴミ箱には栄養ドリンクの空き瓶が三本入っていた。

「これ……」

 どうやら玲司の食生活は随分ひどいらしい。

 私が絶句していると、水を飲みにきたらしき玲司が声をかけてきた。

「どうした?」

 キッチンの冷蔵庫を開けて、ミネラルウォーターのペットボトルを取り出しながら玲司が問う。

 冷蔵庫のドアの隙間から覗く中身は、ミネラルウォーターと栄養ドリンクのみだった。

「玲司、さん。食事はいっつもどうされているんですか?」
「あ? 一階のコンビニで買うだけだが」

 確か階下にはコンビニがテナントで入っているのだったか。
 だからと言って、この食生活はあまりに酷すぎやしないか。

「あの、よかったら私、作りましょうか?」
「ん? 無理して妻らしいことはしなくていい」
「いや、無理とかじゃなくて」

 同居人がこんな食生活をしているのを見ていられない。なんだか自分まで引きずられて荒れた生活に当てられてしまいそうで怖いのだ。

「まあ、どうしてもと言うなら止めはしない。自炊したければ勝手にしろ。調理器具は欲しければこれで買え」

 そう言うと玲司は財布から万札を二枚ほど抜き取り、机の上に置いていった。

「えっ、あの、そんなっ……」

 お金が欲しかったわけではないのだが。

 まあ、この家の設備として調理器具を買うのであれば、玲司のお金を使うのもおかしなことではないのかもしれない。

 元々経営状態のよくない父の会社で働いていた私には、金銭的な余裕はあまりない。

 ひとまず明日、家電量販店で調理器具を買うことにして、その日私は慣れないふかふかのベッドで眠りについた。
 
 
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