【R18】絶倫社長との契約結婚〜借金のカタに売られた私は、契約夫の愛に溺れる〜

布団のノラネコ

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15話

 社内の人に「愛妻家、愛妻家」と揶揄われながらも、玲司は早めに仕事を終わらせて私と一緒に帰ることを、週に二回はするようになっていた。
 一緒に帰れない日も、私だけでも遅くならないようにと気を遣ってくれて、やけに過保護に振る舞っている。

「別にちょっとくらいの残業なら大丈夫よ? ご飯だって作り置きしているし」
「いや、やっぱり結衣は明るいうちに帰った方がいい」

 玲司がやたら私を心配するようになったのは、先日祐司と遭遇してからだった。別に兄嫁に何かしてくるとは思えないけれど、どうにもピリピリとした兄弟仲らしい。

 そんな折、日曜日に家で玲司とのんびり過ごしていると、突然チャイムが鳴った。

「ん? なんだ、宅配か?」

 特に何か頼んだ覚えはないけれど、急な来客の予定もない。

 疑問に思いながらも玲司が玄関に行くのを見送っていると、玄関の方から驚きの声が聞こえてきた。

「祐司!? どうしたんだ、突然」
「やあ、兄さん。たまたまこの近くに用があってね、寄らせてもらったよ」

 突然の訪問者は、玲司の弟、祐司だった。

 玲司と良く似た顔で、でも物腰柔らかな表情の祐司は、黒縁メガネの奥にある形のいい目を細めて微笑んでいた。

「あ、こんにちは、祐司さん」

 リビングに入ってきた祐司に、ひとまず挨拶する。

 突然の訪問に驚いてはいたが、夫の家族に失礼があってはいけない。私は愛想笑いを作って、祐司に椅子を勧めた。

「いやあ、いい部屋に住んでるよね、兄さん」

 祐司は我が物顔で部屋を見て回ると、リビングのソファにどっかりと腰を下ろした。

「祐司、何しにきたんだ一体」
「ええ? 兄さんのハートを射止めた女性の手料理を食べてみたくてね、夕飯、ご相伴に預かっていいかな?」
「はあ? 何を言って……」
「ねえ、結衣さん、どう? ダメ?」

 玲司によく似た整った顔で、上目遣いに見上げてくる。祐司は玲司と違い、末っ子らしく甘えたような態度も巧みに使いこなすようだった。祐司は長い脚を組んで膝の上に肘をつきながら、ふっと笑う。

「え? べ、別に構いませんけど……」
「ほら、結衣さんはいいって! 作る本人である結衣さんがいいって言ってるんだから、兄さんは断らないよね?」
「……わかった。勝手にしろ」

 玲司はすっかりヘソを曲げてしまったみたいで、不機嫌そうに眉根を寄せながら、ダイニングテーブルに座った。

 今日の分の買い物はすでに終えていて、あとは作るだけだ。私は気まずい沈黙の落ちている兄弟の方を気にしつつも、キッチンへ向かう。元々作り置きにも回す予定だったから、一人分増えるくらいなら材料も問題ない。

 今日の献立は鶏肉のトマト煮込み、カプレーゼ風サラダ、ガーリックトーストにした。白ワインにも合いそうな洋風の献立だ。

 オリーブオイルにニンニクで香りをつけ、鶏もも肉に焼き色をつけたらトマト缶とハーブで煮込んでいく。バジルの香りがキッチンに広がり、食欲をそそった。

 サラダはモッツァレラチーズとトマトを花が開くように交互に並べて、バジルを散らし、オリーブオイルと岩塩で仕上げる。見た目も華やかで、来客にも出せる一皿だ。

 ガーリックトーストは、バゲットにガーリックバターを塗って、オーブンでカリッと焼く。
 
「いい匂いだね。結衣さん、料理上手なんだ」

 祐司がキッチンカウンター越しに声をかけてくる。玲司はダイニングテーブルに座ったまま、不機嫌そうに腕を組んでいた。

「ありがとうございます。もうすぐできますよ」

 三十分ほどで料理が完成し、ダイニングテーブルに並べる。

「うわぁ。美味しそう。いただきます」

 祐司は嬉しそうに手を合わせる、スプーンを手に取った。玲司も渋々と言った様子でスプーンを手に取る。
 
「……うまい」

 鶏肉のトマト煮込みを食べた玲司が、ポツリと呟いた。

「へぇ、なるほど。この料理スキルで兄さんをオトしたんだ?」
「もう、やめてくださいよ。そんなんじゃないですから」

 祐司は絶妙に嫌味っぽく不愉快な感じの言動をするが、表立って敵対的な行動をしているわけではないので、私も扱いあぐねていた。

 図々しく人の領域にズケズケと乗り込んでくる感じは、あのご両親との会食よりもやりづらいかもしれない。

 やけになってか白ワインをガバガバ開けていた玲司は、不意に「トイレに行ってくる」と言って席を立った。

 祐司と二人きりにされて、気まずい沈黙が流れる。

「あ、電話だ、ちょっと失礼」

 すると、祐司もスマホを片手に席をたち、廊下の方へと出ていった。
 祐司と二人、テーブルで向き合う時間がなくなってホッとする。

 だが、数分後——。

「おい、ドアが開かないぞ! 結衣、ちょっと外から確認してくれないか!」

 玲司の叫ぶ声が、廊下から聞こえてきた。
 
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