【R18】絶倫社長との契約結婚〜借金のカタに売られた私は、契約夫の愛に溺れる〜

布団のノラネコ

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18話

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 翌朝——。

「また祐司が結衣を狙って襲撃してくるかも知れない。結衣、今後は出勤も退勤も一緒にしよう」
「え、でも玲司さんに負担じゃない?」

 退勤も一緒となると、無理をして仕事を早く終わらせたりしかねない。私が玲司の仕事が終わるまで会社で待ってもいいのだけれど、多分玲司は無理をして仕事を終わらせようとするだろう。

「だが、放置するのは危険だ。油断は禁物だろ」
「うーん、確かにそうだけど……」

 親の医院を継いで、社会的な地位もある祐司がそう滅多なことをするとも思えないが。だけど、玲司は心底心配しているようだし、油断したせいでこの間は酷いことになったのだ。

「弁護士に依頼して、接近禁止の内容証明郵便も送りつける。これで少しは抑止力になればいいんだが」
「あの、ごめんなさい……。私のために随分心配かけて」
「お前が謝ることじゃない」

 言葉こそぶっきらぼうなものの、玲司は優しく私の頭を撫でてくれた。大切にしてくれているのだ。だからこそ、私も玲司に心配をかけないように生活には気をつけようと思った。

 会社では、軽い事情を説明して、玲司と出勤と退勤を一緒にすることを社員に共有した。

「ええっ、ストーカー!? それで社長が送り迎えですか。氷室さんも大変ですね。美人だから」
「美人だなんて、別にそう言うんじゃないですけど……。ただ、危ないからしばらくは社長と一緒に行動することにしますね」

 田中も随分と心配をしてくれて、お昼休みには、「気持ちが紛れるように」とちょっと高級なチョコレートを差し入れしてくれた。田中は甘いものに目がないらしく、机の中はいつもお菓子でいっぱいなのだ。

 それから、改めて私の父にも挨拶をすることになった。

 週末、私は父に連絡を入れた。玲司のことで話がある、と。

 父は随分と気を揉んだ様子で私たちの家に訪問してきた。びっくりさせようと思って事情を説明していなかったのは、ちょっと酷だったかも知れない。

「お義父さん。突然呼び出して申し訳ありません」

 玲司は以前とは違う、随分と殊勝な態度で父を出迎えたので、父はびっくりしていた。

「契約結婚という話でしたが、一緒に暮らす中で、私は結衣さんの人柄の良さに惚れ込みました。私は彼女を愛しています。今一度、言わせてください。お嬢さんを私にください」
「お父さん、私も、玲司さんと一緒に暮らす中で、彼のことを好きになったの。これからは正式な夫婦として幸せになりたい。認めてくれる?」

 私たちの言葉に、父は滂沱の涙を流して喜んだ。

「結衣……よかったなぁ。幸せになれよ。あの、改めて両家顔合わせなどは必要でしょうか?」
「そのことなんですが……」

 玲司は厳しい表情で、自身の複雑な家庭環境と、祐司の問題について父に話す。

「そういうわけで、弟は私を恨んでおりまして。それで復讐のために、結衣さんに危害を加えようとしたのです。しばらくは私も送り迎えをして守りますが、仕事で外せないときはお義父さんにお願いすることはできますか?」

 申し訳ありません、と玲司は深々と頭を下げて謝る。これには父も苦い顔をした。借金のカタに娘を持っていった男が、その家庭の事情のせいで娘を危険に晒しているのだ。だが、玲司は誠実そのものといった態度で真摯に父に接し、父もまたそれを受けて応えようという気になったらしい。

「娘のことは、私も守ります。何かあれば連絡してください。結衣、たまには家にも顔を出せよ、母さんが寂しがってる」

 そう言って父は、嬉しそうに私を見つめた後、帰っていった。
 玲司はなんとなく、その背中を寂しそうな顔で見ていた。ふと、愛のない家庭で育った玲司は、私のために土下座をする父を見た時、どんな思いだったのだろうかと思う。
 私は両親にたっぷり愛されて育ったから、彼の孤独を真には理解してあげられないかも知れない。だけど、寄り添いたいな、と思う。

「俺が出張で家を空ける時は、結衣は実家に泊まる方がいいな」

 そんな風に話し合いつつ、しばらく祐司を警戒する日々が続いた。

「結衣。俺の両親に祐司の件を報告することにした。被害者として、立ち会ってくれ」

 祐司との一件から一ヶ月が経つころ、突然、玲司はそんなことを言ってきた。

「ご両親に話すの?」
「ああ。結局、両親の教育方針が誤っていたのが、祐司があそこまで歪んだ原因だ。そのことも含めて、親父たちには一旦話をしなきゃいけないと思っていた」

 玲司は厳しい顔でそう言った。外で話すことでもないから、と、玲司はご両親を家に招いた。

 不機嫌そうな浩司と時子は、私の出したお茶にも手をつけない。

「で、大事な話があるって? 何の用だ。離婚でもするのか?」
「まさか。……この家で、祐司が結衣を襲った。レイプ未遂だ」
「…………は?」

 ご両親は唖然と口を開いて、沈黙した。何も言葉が出てこない様子だ。

「あんたたちの教育方針がおかしかったんだ。そのせいで祐司は歪んだ。俺があんたたちから自由に生きているのを恨んで、自分はあんたたちに支配されて、生きたいように生きられないからと。俺を逆恨みして、復讐のために結衣を襲った」

 玲司は畳み掛けるように捲し立てる。

「祐司の心を壊したのはあんたたちだ。俺の人生にも、もうあんたたちを介入させるつもりはない。もう二度と俺たちに関わるな。そして、祐司を俺たちに近づけるな」
「な、何を言って……そんなこと、許すわけがないだろう!」

 我を取り戻した浩司が激昂して机を叩く。

「だったら、被害届を提出する。評判の医院の医者が兄嫁をレイプ未遂……地元のニュースになるかもな」
「……っ!」

 随分と世間体を気にするらしいご両親は、その言葉に黙り込んだ。何か反論をしたいけれど何も言葉が見つからない、と言った様子だ。 

「玲司……私たちは人生を賭けてあなたを育てたのよ。その恩を忘れて二度と関わるだなんて、お母さん、悲しい」

 今度は泣き落としに舵を切ったのか、時子が眉を下げて上目遣いで媚びるように玲司を見る。

「子供はあんたたちの自己実現をするための道具じゃない。そういう姿勢が祐司を壊したんだろ。俺は、直接結衣に危害を加えた祐司よりも、あんたたちに対しての方が嫌悪感を感じている。二度と関わるな。そして、これ以上同じことを言わせるな」

 玲司は冷たい声で言い放つと、ご両親に帰るように促した。
 二人はまだ何か言いたげだったが、玲司の冷え切った雰囲気に呑まれたのか、黙って立ち去っていく。

「……良かったの? ご家族と完全に縁を切っちゃって」
「ああ。あの人たちは、変わることはないだろうからな」

 玲司は、ひどく疲れたような様子で、ソファに座り込んだ。
 その隣に座り、玲司の太ももにそっと手を置く。宥めるように、励ますように。

「私が、家族だから」
「結衣……」
「これからは私が家族だから、寂しくないよね」
「ああ」

 外はまだ寒い冬。窓の外には雪がちらついていた。だけど、マンションの中のこの部屋だけは、暖かかった。
 
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