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不機嫌な君と2
しおりを挟む原稿を納品し、いまいちピンとこない自分の非について考えながらデスクに座っていると、同じ部署の後輩の女の子が声をかけてきた。
「相川先輩!ちょっと怖い顔してますよ」
「わ、まじ?」
「まじです。なんか怒ってるみたい。なにかあったんですか」
黒髪のショートカットがよく似合う彼女は、神田日奈子という。俺の顔がよほど面白かったのか、口元をおさえて笑っている。
あまり目立つタイプじゃないので職場ではちょっと地味な子というイメージになっているが、実はメイクも薄くて結構可愛くて、この子が入社してきた時からちょっといいなあと思っていたりしている。最近は忙しいのもあり、そんな気持ちなんかすっかり忘れてしまっていたのだが。
「んー、人間関係かな。大したことじゃないんだけど、ちっとだけモヤモヤしてて」
「えー、先輩が人間関係で悩むなんて、ちょっと意外です!」
「待て、それは褒めてないな?」
「でも、悪い意味じゃないですから」
彼女は、会社の皆から日奈ちゃんと呼ばれている。実際若いのだが、その圧倒的年下オーラも相まってなおさら子供扱いされるのだろう。
可愛い子と笑い合っていたら、あれこれ考えていたのがなんだか馬鹿馬鹿しくなってきた。そもそも先日知り合ったばかりの、友人と呼べるかすらも怪しい美形のホストについて、俺は何をぐだぐだと悩んでいるんだ。
スバルは俺より若いんだし、もっと楽しいこともたくさんあるし、連絡が来ないのは単に飽きただけだろうし、別に、失ってもなんてことはない。
そう思うのに、つい聞いてしまった。
「もしも知り合いから避けられてるような気がしたら、神田ならどうする?」
俺はかっこつけながらもその実ビビりなので、皆のように日奈ちゃんと呼んだことは一度もない。
スバルのことも、友達とはなんとなく言いがたくて、知り合いとしか言えない。
神田は顎に手を当てて考えるそぶりを見せた。
「うーん、その知り合いが離れたくない大切な友達とかだったら、どうしたのって直接聞きますけどね。理由がわからないままいなくなられたら悲しいし、自分の勘違いならほっとするし」
離れたくない大切な友達。
理由がわからないままいなくなられたら、悲しい。
スバルに対しての感情としてはどちらもしっくりこないが、否定するのもはばかられる。
俺はあいつのことを果たしてどう思っているのだろう?
「大切かどうか考えた時に疑問が残る相手だった場合はどうすれば…」
「いやあ。避けられてるかもって考えて少しでもモヤモヤするってことは、すごく大切とまではいかなくても、そこそこ大切ではあるはずですよ」
神田日奈子の悪意のない笑顔がまぶしくて憎らしい。彼女の言う通りだとするなら、どうやら俺にとってスバルはそこそこ大切な友達であるらしかった。
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閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
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