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3.流れ星はきらきら光る
しおりを挟む流れ星が地上に落ちると隕石になるのではなかったか?
私は理科が苦手だったのではっきりしたことは分からないが、私の知っている流れ星は、黒くてごつごつしていて、火山の中から取り出したかのようなもののはずだ。
目の前にある石は半分透き通っていて、表面が結晶のようにきらきらと輝いている。光の当たり具合で色が変わるので大変美しい。
「ここの流れ星って、落ちてきてもこんなに綺麗なんだね。まるで宝石みたい」
思わず感想を述べると、セーレが私の常識を疑うような顔をした。
「何言ってるんだ?空にあって綺麗なものは、落ちてきても綺麗に決まってるだろう?」
「うん…」
いちいち反論すると疲れるので、話題を少し逸らすことにした。
「流れ星はどこへ行くと拾えるの?」
「城の東に大きな湖がある。そのほとりに落ちてくるんだ。僕は数年前、それを母さんと一緒に拾いに行った」
「そうなんだ。それは素敵な思い出ね。また行きたいと思うでしょうね」
何気なく口にした言葉だったが、セーレは途端に表情を曇らせ、小さく首を振った。
「……母さんは死んだんだ。僕と流れ星を見に行った次の年に」
「そうだったの……」
「父さんは母さんを愛していたから、そこから自暴自棄になって、城に寄り付かなくなったんだ」
悪いことを聞いてしまった。
申し訳なくなり、セーレのざんばらの髪の毛をそっと撫でた。
申し訳なくなったとはいえ、ここで謝ったらなおさら彼のことを傷つけてしまうと思ったからだ。
「僕、ミカエル以外と話すのは久しぶりだ」
「セーレはいま、楽しい?」
「楽しいよ。決まってるじゃないか。……僕の流れ星を見て喜んでくれる人なんて、これまでいなかったんだから」
照れ臭いのか、むすっとして目を逸らす様子が可愛くて、私はにっこりと微笑んだ。
「私も楽しいよ」
「ねえルナ」
「どうしたの?」
「ルナと僕はさっき出会ったばかりだけど、もう友達だろ?」
「もちろん」
「じゃあ、僕とずっと一緒にいてくれる?」
無邪気な子供の上目遣いにやられかけたが、すぐに思い直した。ずっと一緒になんていられるわけがない。いる気もない。
ーでもしょせん、夢を見ている間だけのことだ。
ここで頷いたとしても、どうせ目が覚めたらお別れなのだから、せめて今だけはセーレのことを喜ばせてあげたかった。
「……うん、ずっと一緒にいるよ」
「よかった!うれしい」
「セーレが喜んでくれて、私もうれしい」
心からそう言って、手にしたままになっていた流れ星のひとつを床に戻そうとする。
……そのときはずみで手を滑らせ、絨毯の上を転がった石は、机の脚にぶつかってふたつに割れてしまった。
「!!!!!!」
とっさに立ち上がって駆け寄りながら、彼の方を振り返る。
「ごめんなさいセーレ!!壊すつもりなんてなかったの」
必死に謝るが、うつむいて黙り込んでいる彼は顔を上げてくれなかった。当たり前だ。私はなんてひどいことをしてしまったんだろう。お母さんとの大切な思い出の品だったのに。
しばらく経ってもセーレが何も話さないので、私は謝り続けることしかできずに途方に暮れてしまった。
「……ほんとうにごめんね。どうしたら許してくれる?」
「どうしたら……か。ルナは僕になにをしてくれるの?」
「酷いことをしてしまったもの。私にできることなら、セーレがして欲しいこと、なんでもするよ」
それでまた笑ってくれるなら。
「……でもあの、お金とかはあんまり持ってないけど……」
なんとも情けない18歳だ。欲しいものを買ってあげるという切り札が使えないのはほんとうに情けない。
しかしセーレはその言葉を一蹴した。
「いらないよ、お金なんて。ルナ、ほんとうに僕のお願いなんでも聞いてくれる?」
「うん、約束する」
「じゃあ僕がいいよっていうまでずっとぎゅーってして」
いじらしくて涙が出そうになった。セーレは甘えたい時期に母親を亡くし、ずっと寂しかったんだろう。兄弟もお兄ちゃんだけだというし、母性に飢えているのかもしれない。
「わかった。セーレ、おいで」
「僕、ベッドじゃないと嫌だ」
「はい」
セーレは自ら要求したくせに、ベッドに座ると、おずおずとぎこちなく抱きついてきた。胸に顔をうずめられて、初めて少し恥ずかしいと思う。でも子供相手に恥ずかしがっている自分の方がおかしいと思い直し、気にせず抱きしめることにした。
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