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24.封印が解かれた日のこと
しおりを挟む「レオ?……それって」
記憶を手繰る。耳慣れない名前だけれど、僕はその響きを知っている。
しばし考え込み、ようやくピンときた。レオというのは、若くして亡くなった僕のひいおじいさまの名前のはずだ。
……ノアが愛していたのは、ひいおばあさまではなかったということ?
「ノアは、男性のことが好きなの?」
「……人間だったときから、そうだった」
「そうか。だから僕のことを嫁にするって言ったんだ」
「そういうわけでは」
僕の静かな問いかけに、ノアが狼狽するのがわかった。でも止められない。
「僕は、ノアが愛したひいおじいさまの代わりなんだね……?」
「ちがう!!」
ノアがこんなに大きな声を出すところを初めて見た。僕はひどく悲しい気持ちで、悲しくて辛い気持ちで、取り乱す彼のことを見つめている。
「お前にそう思われるのが怖くて、本当のことを言えなかったんだ。私はお前のことを心から大切に思っている」
「どうして僕なんか……」
「それはお前が、ウィリーが、孤独な私を見つけてくれたからだ。見つけて、永遠の眠りから解き放ってくれたからだ!!」
僕の脳裏に、棺の中で眠る美しい吸血鬼の姿が蘇る。いつか中庭で聞いたお姉様の話は本当だった。地下室には、吸血鬼が封印されていたのだ。
あの美しい吸血鬼がいま、生命を取り戻し、燃えるようなふたつの目で僕のことを見つめ返している。
「……それは、あの日のことを言ってるの?」
「ああ。……どうしてあの日、私にキスをした?」
「えっ」
「封印を解くには、キスが必要だったはずだ」
僕は即座に込み上げた恥ずかしさで死にたい気持ちになった。やっぱり、ノアはすべてを知っていたんだ。
「……僕、まるで吸い寄せられるみたいだったんだ」
やっとの思いでそれだけを言う。弁解しなければ。ノアに嫌われたくない。ノアは僕の向こうにいるひいおじいさまのことを見ているのかもしれないけれど、僕はいつだってノアだけを見てきた。
「あの日、棺の中で眠るノアのことを見た瞬間、胸がなんか、痛んで。これが伝説の封印された吸血鬼だって、すぐにわかった。ひとりぼっちで眠り続けるノアは……僕みたいに、孤独だと思った。そして、気づいたら、キスしてた」
ノアは先を促すように黙っている。僕は続けた。
「ここへきて、ノアに初めて褒められたとき、地下室でノアを見た日に痛んだ胸が、熱を持ったみたいに熱くなった。そして、血を吸われて、キスをして、その痛みが身体中にどんどん広がっていって……」
それは恋、なのだろうか。
話しながら、自分で答えを導き出してしまった。やっぱり僕はノアのことが好きだ。
身体中に至った痛みは甘い熱を持って疼き出し、いつも僕のことを苦しめる。
「これだけは信じてくれ」
ノアの声を振り払いたいのに、僕にはできない、と思った。好きになってしまったから。
「お前はレオの代わりなんかじゃない」
その言葉が本当だったらいいのに。
僕は、ノアのことを信じたい。
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