瞬間移動して暴く彼女

檻中 箱猫 (おりなか はこねこ)

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死刑執行

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 目を覚ますと二人用の牢屋の中には私以外誰もいなかった。どうやら、あのまま眠ってしまったらしい。早くしないと朝ごはんの時間が終わってしまう。私は立ち上がると、無意識に食堂に引っ張られているかのように向かっていった。

「おい、それは私のパンだろ!」
「ふざけんな、それはうちのパンだ!」

いつものように、囚人AやBが言い合いをしている。こんな時は穂高さんが止めに入ってくれるんだろう。

「おいっ、よこせ!」

今、囚人たちが殴り合いを始めた。女同士の喧嘩だ。血が流れている、一人がピクリと動かなくなった。こんな光景見るのは初めてだ。いつもは穂高さんが、円満というわけではないが解決しているからだ。寝ぼけている私は、これを、何の感情もなく眺めている。周りでは囚人Aに加勢する組とBに加勢する組にわかれて、さらに喧嘩が始まった。

ピーッ

笛の音が鳴った。

そこに監視員がきて、主犯格の二人が連れ去られた。きっと、二人は今日中に死刑が執行されるだろう。

ん......死刑?

死刑、穂高さん!私は穂高さんのことをすぐさま思い出し、手に持っているパンを置き、すぐさま元居た牢屋に向かった。

「はぁ、はぁ、穂高さん!」

息が切れているせいで声量が出なかったが、私の中で一番大きな声で叫んだ。かすんだ視界が元に戻ったそこには、誰もいない、しかし地面に一つ何か落ちているのを見つけた。

手紙だ。

その手紙を私は無我夢中で読んだ。今までのことや、私を育ててくれた理由、穂高さんの野望、瞬間移動のこと、が書いていて、その最後には、今まで縁のなかった面会の仕方が書いていた。

手紙の前半は穂高さんに対する思いで泣いていたが、段々今後の話になってきていつしか涙は止まっていた。

そこには知らない人の名前が書いていて、ここに連絡とポップな文字で電話番号が書いている。ちなみにこの牢屋には全部の部屋に10円をいれてするタイプの電話がある。お金を持ってないのにと思ったが、よく考えてみると、部屋の中で貯金していた穂高さんは、貯金箱を部屋に置きっぱなしにしている。

穂高さんはわざとこの貯金箱を置いていったのだろうか、それとも忘れていただけなのだろうか。あの穂高さんだ、何か行動には理由があって、これからの私のアシストをあの世からでもしてくれていると思う。

穂高さんとの別れは一瞬だったが、私は穂高さんと会えてよかったと、心から思う。

この手紙は一生大切にすることに決めた。

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