翡翠の森

中嶋 まゆき

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言葉の重み

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だがそれは、弟としてのロイの感情とは別物だ。

「僕が代わってあげることはできないし……たとえ、できたとしても嫌だから」

もちろん、アルフレッドもよく理解している。

「ひねくれ者にしては素直だな。そこは普通、“代わってあげられるものなら、代わってあげたい”というところだろう」

もうずっと昔、恐らくは彼らが幼いころから、受け入れてきたこと。
他の選択肢など、お互いにもってはいないのだ。

「……ごめん」

(……ロイも辛いだろうな)

優秀な弟がいれば、政権争いの道具になりかねない。
彼の適当にも聞こえる言い回しや態度は、それを防ぐ為についた癖ではないだろうか。
勝手な想像は失礼だが、ジェイダにはそう思えて仕方がなかった。

「きっとまた、大きな一歩になると思うわ」

口を出しては駄目だと思っていたのに、二人の様子につい漏らしてしまった。

「当たり前だ。……お前にも、苦労をかける」

表情の変化に乏しいアルフレッドに微笑まれ、驚きを隠せない。

「ジェイダを口説かないでくれる? 」

「……ふん」

言われて気がついたのか、アルフレッドがそっぽを向いた。

「あ、でも。笑顔の練習とかしておいた方がいいかも」

正式に王座に就いた際は、民衆の前で手を振ったりするのだろうか。
無理に話題を変えようとすると、この場には相応しくないものになってしまい、後悔する。

「確かに。やっといた方がいいよ、アル」

「……うるさい」

馬鹿な考えだったが、ロイは楽しそうに笑ってくれた。

(きっと……ううん、必ずいい方向に向かう。その日を見られるんだから)

重苦しい空気を何とか払おうと、じゃれ合う兄弟をジェイダも笑って見守っていた。

「そうなれば、早い方がいい」

そう言うと、アルフレッドはさっさと部屋を出てしまった。

「……アルにはきついことだ。でも、どれほど申し訳なくても、アルが嫌がったとしても……兄さんじゃなきゃ駄目なんだ」

ジェイダの目には、ロイだって素質があるように見える。

「仮に僕が、第一位で継承権をもったとしても、やっぱり無理じゃないかな。誰かの上に立ったり、管理したり……できそうにないよね」

おちゃらけて言うロイを、今はもう軽いとも不謹慎だとも思わない。

「ロイの存在は、ロイ自身が思うよりずっと大きいと思う。トスティータだけでなく、クルルにも」

彼のおかげで、未来はきっと変わる。
彼だからこそ、ジンもデレクも側で助けたいと思うのだ。

「ありがとう。でも、アルはいい王になるよ。父の代でもそうだったなら、もっと早く事態は好転しただろうにね」

軽蔑しているようにも、軽蔑しようと苦悩しているようにも見えるロイの話に、ジェイダは耳を傾けた。

「話もできなくなって……できなくても良くなって、どれだけ経ったか。ま、僕には、親代わりがいたから」

デレクのことだ。
ちょっと見ただけだが、ロイに心から愛情をもっているのが伝わってきた。

「……君は……」

言い淀む彼に、笑って首を振る。

「両親は亡くなったって。……だから、選ばれた」

ロイが唇を噛む。
明るい調子で言ったつもりだったし、本当に気にしていないのに。

「あ、でもね。任命された直後よりも、今の方が気が楽なの。変かもしれないけど」

「変すぎるよ」

すぐさまロイは肯定したが、ジェイダ自身はそれほどおかしなことだとは思わなかった。自分も同じなのだ。

(だって、ロイがいるから)



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