【完結】人前で話せない陰キャな僕がVtuberを始めた結果、クラスにいる国民的美少女のアイドルにガチ恋されてた件

中島健一

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第2話 おはようVチューバー

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織原朔真おりはらさくま視点~

 個人勢Vチューバーのリアル。なんて記事が世に出回っている昨今、Vチューバーでデビューしたからと言っても皆が皆、日の目を見るなんてことは断じてない。

 多くの視聴者は企業勢のVチューバーを見慣れてしまったせいで、最初のデビュー配信や流行りのゲームの実況をすれば視聴者や登録者が増えると勘違いしてしまう。日々数えきれないVチューバー達が個人でも企業でもデビューしているのだ。勿論動画投稿サイトにはVチューバーだけが動画を投稿している訳ではない。そんな数あるジャンルの動画から自分の動画や配信を見てくれる視聴者はかなり少ないのだ。

 実際、動画投稿サイトから自分の動画を見てくれる視聴者は殆どいない。動画投稿サイトはあまりに飽和し過ぎているため、現在ではSNSを使って短いPR動画を使ったり、タグを付けながらマメにポスト(ツイート)したりして、そのSNSから動画投稿サイトへと視聴者を誘導するのが現状だ。あとはショート動画で完成度の高いコント仕立ての動画やあるある動画を幾つもあげるとかが挙げられる。   

 そして今、僕、織原朔真おりはらさくまも新人Vチューバーとして配信をしている。いや新人と言ってももう少しで1年が経とうとしていた。『ラバラブ』に所属する、とあるVチューバーも活動して3年になるのにいつも枕詞のように新人Vチューバーと言っているあたり、僕もそう言っても良いだろうと自分を納得させている。

「終わろうとしてるって?まぁ、明日も朝早いからさ」

 そう言いながらも、僕はカチャカチャカチカチと忙しなくキーボードを叩き、マウスを操る。僕の動きに会わせて小刻みに、僕の操るVチューバー、エドヴァルド・ブレインが動く。現在僕のやっている配信の同時接続数は15人だ。つまり、世界中のどこかで15人の人が僕の配信を見ていることになる。

 少ないと思った?でもこれが実情だ。寧ろ15人もよく見てくれている。ここまで来るのにも約1年も掛かっている。よくこんな状況で続けていられるなと我ながら思う。しかし続けられる理由があった。僕はコメント欄を覗く。

 〉まだ続けて √

 このチェックマークのようなモノを付けた視聴者は、僕を昔から応援してくれている人の証だ。本来ならモデレーターと言って、僕の代わりにスパムなどの不適切コメントがないかチェックし削除する人の証なのだが、見ての通り同時視聴者数の少ない僕の配信なんかで不適切コメントを残す人はあまりいない。たまに嫌がらせを受けることもあるけれど、その時は僕自身でブロックすれば事足りる。なのでこのモデレーターの証は僕が彼女のことをただ見つけやすいようにしているだけだ。

 彼女と言ったが、実際に性別はわからない。このモデレーターのついた視聴者さんのアカウント名はララ。僕はララさんに親しみを持つようになった。いつも僕の配信を見てくれて、コメントを残してくれる。男かも女かもわからないこの人が見てくれて応援してくれるから僕は今までVチューバーを続けることが出来たと言っても過言ではない。他にももう1人良く見に来てくれる人がいるが今日はリアタイで見ていないようだ。

「いんや、つっよ!!チーターか?」

 対戦相手に苛立ちを覚えるが、ある意味感謝していた。ララさんや他の14人の視聴者には悪いがきりよく終われそうだからだ。カラーから灰色の画面に変わり、スコアが写し出され、ゲームの待機画面へと移動する。

「ふぅ、まぁきりも良いし、今日はこの辺で終わっときまーす」 

 僕の見る画面にはコメントが下から上へとゆっくりと流れていく。どのコメントも労いの言葉に満ちていた。

 〉おつエド

 〉お疲れ

 〉おつエド √

「チャンネル登録、好評価もよかったら押してください。じゃあおつ……はぁ!?」

 僕は前のめりとなる。

 同時接続者数、略して同接が15人から2015人に増えたからだ。

 画面に写るオレンジ髪のキャラクターが僕の動きに合わせて目を見開いている。僕とは似ても似つかない。陽キャの権化みたいなキャラクターだ。前髪の中央部分を上げて、両端からは触覚のように前髪がフェイスラインに沿うよう垂れ下がっている。その髪が僕が驚いた拍子にふわりと動いた。

「チャンネル登録者数も一気に増えたし……何が起こってんの?」

 チャンネル登録者数が150人から1010人へと増えた。

「え?マジで何が起きた?」

 僕はコメント欄に目をやる。

 〉鷲見が紹介してた

 〉イケボ過ぎます

 〉良い声ですね

 〉カミカミも悶えてた

「鷲見ってブルーナイツの鷲見カンナさん?」

 僕がそう言うと、僕の背後から気配がする。

 アッシュブラウン色に染まったツインテールを左右に揺らしながらやって来たのは妹の萌《めぐみ》だ。萌は申し訳なさそうに自分のスマホに打ち込んだ文字を僕に見せてきた。

『鷲見さんがエドヴァルドのこと紹介したいっていうからお兄ちゃんには黙って許可したの』

 僕はスゥーと息を吐きながら、前もって言えよなという表情を萌に向けると萌はスマホに文字を打ち込む。

『そのリアクションを動画にしたくてwww』

 僕は一杯食わされたという表情を萌にした、PCに向き直って僕は声を発する。

「鷲見さんの配信今日だったのか……」

 僕は鷲見さんに許可を出した本人のように振る舞う。

 〉チャンネル登録しました

 〉鷲見とコラボしないんですか?

 〉これからよろしく

 〉エドがとうとう世間にバレてしまった……

 先程まで個人勢Vチューバーの厳しさを体現していたばかりだというのに、一気に夢のような展開になった。

 僕は処理しきれない現状に戸惑う。自分という個は変わっていないのに自分を取り巻く周囲が生き物のように変化している気がした。

 いや、変化しているのは本当に回りだけだろうか?本当に僕自身は変わっていないのだろうか?僕は画面に写るもう一人の僕に目を合わせた。彼が、エドヴァルド・ブレインが僕に向かってウィンクをしたように見えた。
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