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第3話 2人家族
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~織原朔真視点~
「ったく、先に言えよなぁ」
僕は配信を切ってヘッドホンを取ると、ボサボサになった黒髪を手櫛で直しながら妹の萌に文句を言う。オレンジ色の髪をしたエドヴァルドから目元を黒髪で隠すような僕、織原朔真に戻った。
「別に良いじゃん♪︎良いリアクションも撮れたことだし」
僕は上手く反論できずに腕を組んで唸るような声をあげる。
「で、でもさ例えば俺が鷲見さんから紹介されたことを知らないって口走ったら、鷲見さんが炎上するわけじゃん?」
「だからそうならないように鷲見さんの配信を見ながらお兄ちゃんの背後にスタンバっておいたの」
僕はまたしても腕を組んで唸った。何も言い返せない僕に妹の萌は満足そうに鼻を鳴らした。
「それよりも!これからどうなっちゃうのかな!?」
「何が?」
僕は呆けた声で尋ねると、萌はあきれたように答える。
「これからの生活だよ!チャンネル登録者数も増えたしお金もいっぱい入ってくるのかな!?そうしたらお兄ちゃんもバイトしなくていいし、美味しいものをお腹いっぱいに……」
目を輝かせながらはしゃぐ萌に僕は言った。
「今までと変わんないだろ?僕は高校へ行って、お前も中学へ登校する。収益化っつってもいつ、いくら入ってくるかもわかんないわけだし、取り敢えずバイトもそのままかな?」
「でもでも!チャンネル登録者も増えたんだから今まで以上に配信頑張らないと!?」
「ん~、今までと違うことやってもきっとボロが出るし、寧ろ見る人も増えたから逆にプレッシャーがすごいな……」
萌は頬を膨らませて僕に言い放つ。心なしかアッシュブラウンのツインテールも小動物が威嚇する時に逆立つ毛並みのように刺々しく見えた。
「もぉ~!!なんでそういうこと言うの!?エドヴァルドなら絶対そんなこと言わないし!!私は!お兄ちゃんが少しでも楽になってくれたら良いなって思って鷲見さんのオファーを受けたんだからね!!」
僕は萌を諌める。
「ご、ごめんて……」
萌は僕の言葉が気に食わないのか、そっぽを向いたまま独り言のように呟く。
「お兄ちゃんに謝られる為にやったわけじゃないもん……」
「そ、そうだよな!ありがとう!!萌にはいつも感謝してるよ!萌が書いてくれなければエドヴァルドも存在してなかったわけだし」
僕の操るVチューバー、エドヴァルド・ブレインは妹の萌がデザインしたものだ。つまり妹がママである。なんだか怪しい響きではあるが、妹と一緒に作り上げ、共に理想を叶えていく、今まさにその転換点にあるのではないかと思うと、確かに心が踊る。
まだアルバイトが認められていない中学生の萌は、僕が毎日のようにアルバイトをしているせいで、その身をいつも案じていた。また、萌は自分が僕のお荷物のような存在なのではないかと思い悩んでいたことがある。そんな時、絵を描くのが好きだった萌は自分の作ったキャラクターを使ってお金を稼げる方法を見付けてきた。それがVチューバーだ。
初め僕はその中身をやることに否定的だったが、萌は僕なら絶対成功すると言って聞かなかった。それに僕は人前で話すのが大の苦手でその練習になると言ってもきた。萌の後ろめたい気持ちが少しでも楽になるならと僕はバイトを減らしてVチューバー活動を始めた。
「そう!初めからそう言えば良かったのよ!さぁ、冷めちゃうから早くご飯食べよう?」
萌はそう言って、配信するためのパソコン機器等がある直ぐ後ろのテーブルにつく。
「お、おう!パソコンおとしてからそっちいくよ」
僕は開いていた動画投稿サイトを閉じようとしたその時、先程配信を終えたばかりのアーカイブに早くもコメントが投稿されていることに気が付いた。
『今日も、美しい配信をしてくれてありがとうございます』
ララさんからだった。
この言葉を残してくれるだけで明日も頑張れる気がした。僕の口元が緩む。
「いつもありがとうございます……」
僕はそう呟くと、萌が口にする。
「なんか言った?」
「ララさんがまたコメントくれてさ」
「え~見せて!」
萌はララさんからのコメントを読んだ。
「本当に元気が出るよねこういうコメントって!」
萌もララさんのことを知っている。僕ら兄妹はこうして日々の活力を得ているのだ。僕はもう一度ララさんに心の中でお礼を言ってから動画投稿サイトを閉じようとしたがしかし、とあるサムネイルに目がいった。
可愛いとも綺麗ともとれる女の子のサムネイル。艶のある黒髪を伸ばし、ふわりとした前髪が綺麗に切り揃えられている。
──あ、音咲華多莉だ……
彼女はVチューバーではなく、僕の通っている高校の生徒であり、現役のアイドルだ。有名プロデューサーが手掛けたアイドルグループ、椎名町45のメンバー。
──有名なグループなのにこういう個人的な動画とか出せるんだ?
僕はその動画を何気なくクリックした。1分程のショート動画である。軽いステップと腰を動かしたダンスをしている。ヘッドホンを外したせいでどんな曲で踊っているのかわからない。僕が動画にみいっていると、食卓についた萌の声が後ろから聞こえる。
「お兄ちゃん!!まだ?」
背後からやって来る萌に見られないように僕は同級生の動画を自分の身体で隠しながら消した。
「あ!なに見てたの!?エッチなやつでしょ!?」
「ち、違うよ!この動画投稿サイトにはそんなのないし!」
「きわどいの結構あるの知ってるんだから!」
僕は萌の方を向きながら、立ち上がる。そして話題をすりかえた。
「先に食べてて良かったのに」
もう深夜だ。僕の言葉に萌は口を尖らせながら答える。
「だって1人で食べるより、2人の方が美味しいんだもん」
「…そうだな……」
僕ら2人家族は遅めの夕御飯を食べた。
「ったく、先に言えよなぁ」
僕は配信を切ってヘッドホンを取ると、ボサボサになった黒髪を手櫛で直しながら妹の萌に文句を言う。オレンジ色の髪をしたエドヴァルドから目元を黒髪で隠すような僕、織原朔真に戻った。
「別に良いじゃん♪︎良いリアクションも撮れたことだし」
僕は上手く反論できずに腕を組んで唸るような声をあげる。
「で、でもさ例えば俺が鷲見さんから紹介されたことを知らないって口走ったら、鷲見さんが炎上するわけじゃん?」
「だからそうならないように鷲見さんの配信を見ながらお兄ちゃんの背後にスタンバっておいたの」
僕はまたしても腕を組んで唸った。何も言い返せない僕に妹の萌は満足そうに鼻を鳴らした。
「それよりも!これからどうなっちゃうのかな!?」
「何が?」
僕は呆けた声で尋ねると、萌はあきれたように答える。
「これからの生活だよ!チャンネル登録者数も増えたしお金もいっぱい入ってくるのかな!?そうしたらお兄ちゃんもバイトしなくていいし、美味しいものをお腹いっぱいに……」
目を輝かせながらはしゃぐ萌に僕は言った。
「今までと変わんないだろ?僕は高校へ行って、お前も中学へ登校する。収益化っつってもいつ、いくら入ってくるかもわかんないわけだし、取り敢えずバイトもそのままかな?」
「でもでも!チャンネル登録者も増えたんだから今まで以上に配信頑張らないと!?」
「ん~、今までと違うことやってもきっとボロが出るし、寧ろ見る人も増えたから逆にプレッシャーがすごいな……」
萌は頬を膨らませて僕に言い放つ。心なしかアッシュブラウンのツインテールも小動物が威嚇する時に逆立つ毛並みのように刺々しく見えた。
「もぉ~!!なんでそういうこと言うの!?エドヴァルドなら絶対そんなこと言わないし!!私は!お兄ちゃんが少しでも楽になってくれたら良いなって思って鷲見さんのオファーを受けたんだからね!!」
僕は萌を諌める。
「ご、ごめんて……」
萌は僕の言葉が気に食わないのか、そっぽを向いたまま独り言のように呟く。
「お兄ちゃんに謝られる為にやったわけじゃないもん……」
「そ、そうだよな!ありがとう!!萌にはいつも感謝してるよ!萌が書いてくれなければエドヴァルドも存在してなかったわけだし」
僕の操るVチューバー、エドヴァルド・ブレインは妹の萌がデザインしたものだ。つまり妹がママである。なんだか怪しい響きではあるが、妹と一緒に作り上げ、共に理想を叶えていく、今まさにその転換点にあるのではないかと思うと、確かに心が踊る。
まだアルバイトが認められていない中学生の萌は、僕が毎日のようにアルバイトをしているせいで、その身をいつも案じていた。また、萌は自分が僕のお荷物のような存在なのではないかと思い悩んでいたことがある。そんな時、絵を描くのが好きだった萌は自分の作ったキャラクターを使ってお金を稼げる方法を見付けてきた。それがVチューバーだ。
初め僕はその中身をやることに否定的だったが、萌は僕なら絶対成功すると言って聞かなかった。それに僕は人前で話すのが大の苦手でその練習になると言ってもきた。萌の後ろめたい気持ちが少しでも楽になるならと僕はバイトを減らしてVチューバー活動を始めた。
「そう!初めからそう言えば良かったのよ!さぁ、冷めちゃうから早くご飯食べよう?」
萌はそう言って、配信するためのパソコン機器等がある直ぐ後ろのテーブルにつく。
「お、おう!パソコンおとしてからそっちいくよ」
僕は開いていた動画投稿サイトを閉じようとしたその時、先程配信を終えたばかりのアーカイブに早くもコメントが投稿されていることに気が付いた。
『今日も、美しい配信をしてくれてありがとうございます』
ララさんからだった。
この言葉を残してくれるだけで明日も頑張れる気がした。僕の口元が緩む。
「いつもありがとうございます……」
僕はそう呟くと、萌が口にする。
「なんか言った?」
「ララさんがまたコメントくれてさ」
「え~見せて!」
萌はララさんからのコメントを読んだ。
「本当に元気が出るよねこういうコメントって!」
萌もララさんのことを知っている。僕ら兄妹はこうして日々の活力を得ているのだ。僕はもう一度ララさんに心の中でお礼を言ってから動画投稿サイトを閉じようとしたがしかし、とあるサムネイルに目がいった。
可愛いとも綺麗ともとれる女の子のサムネイル。艶のある黒髪を伸ばし、ふわりとした前髪が綺麗に切り揃えられている。
──あ、音咲華多莉だ……
彼女はVチューバーではなく、僕の通っている高校の生徒であり、現役のアイドルだ。有名プロデューサーが手掛けたアイドルグループ、椎名町45のメンバー。
──有名なグループなのにこういう個人的な動画とか出せるんだ?
僕はその動画を何気なくクリックした。1分程のショート動画である。軽いステップと腰を動かしたダンスをしている。ヘッドホンを外したせいでどんな曲で踊っているのかわからない。僕が動画にみいっていると、食卓についた萌の声が後ろから聞こえる。
「お兄ちゃん!!まだ?」
背後からやって来る萌に見られないように僕は同級生の動画を自分の身体で隠しながら消した。
「あ!なに見てたの!?エッチなやつでしょ!?」
「ち、違うよ!この動画投稿サイトにはそんなのないし!」
「きわどいの結構あるの知ってるんだから!」
僕は萌の方を向きながら、立ち上がる。そして話題をすりかえた。
「先に食べてて良かったのに」
もう深夜だ。僕の言葉に萌は口を尖らせながら答える。
「だって1人で食べるより、2人の方が美味しいんだもん」
「…そうだな……」
僕ら2人家族は遅めの夕御飯を食べた。
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