【完結】人前で話せない陰キャな僕がVtuberを始めた結果、クラスにいる国民的美少女のアイドルにガチ恋されてた件

中島健一

文字の大きさ
4 / 185

第4話 ついてない

しおりを挟む
織原朔真おりはらさくま視点~

 昨日の鷲見わしみカンナさんの配信で僕のやっているVチューバー、エドヴァルド・ブレインが紹介されたことにより、僕のSNSアカウント、ツブヤイターの通知がえらいことになっている。

 通知を知らせるベルのマークには99+と数字が浮かんでいた。

 フォロワー数も1万人を越えた。チャンネル登録者数も増えた。昨日の時点では動画投稿サイトのチャンネル登録者数は6000人だったが、朝になってから1万5000人にまで達していた。

 ──ゆくゆくはチャンネル登録者数100万人になって……

 僕はそんな夢のような妄想を広げようとしたが、大勢の人によってその妄想は押し潰された。

 ここは満員電車。

 新しい職場や学校の始まるこの4月は、最も人が多い。

 目新しい制服と皺ひとつないスーツ。

 皆緊張と不安で胸が一杯と思いきや、そんな感慨にふける余裕など朝の通勤ラッシュ時の電車にはない。

 学校は家からそう遠くないところにした。電車で2駅のところだ。この混雑も2駅分の短い間だけだ。僕は吐き出されるようにして電車から降りると、バランスを崩し、ホームに転んでしまった。

「うわっ!」

 何人かがうつ伏せに転んだ僕の身体を踏み潰す。

 まったく朝からついていない。

 僕は痛みと恥ずかしさを噛み締めながら、両手をついてゆっくりと立ち上がった。

 ──はぁ、ついてない……  

 僕は恥ずかしくなって、学校に近い改札ではなく、同じ制服の者が少ない遠い改札から出て学校を目指した。

 いつも出る改札口よりも閑散としている。駅前から少し歩けば、誰もいない住宅街だ。いつもと違う風景の通学路に僕は心を落ち着かせる。転んだおかげで打った頬が痛い。僕は虫歯が痛む人のように左頬を押さえながら学校に向かって歩いていると、前に綺麗で艶やかな黒髪の女子高生が僕と同じ方角に向かって歩みを進めているのを発見する。

 同じ制服、短いスカートに細い足。

 後ろ姿なのになんだか見覚えのある生徒だった。

 その女子生徒は歩きスマホをしながらトボトボ歩いている。すると、カメラ機能を使って自分を撮影し始めた。腕を伸ばしたり、近付けたり、それでもあまりスマホが揺れないように気を遣っているように見えた。画面に写る自分の髪型が気に食わないのか手櫛で整え始める。スマホの内部カメラに向かって語りかけながら、たまにピースをしてポーズを決める。

 ──なんだ?ライブ配信してんのかな?  

 僕は同じライブ配信をしている身として、親近感を抱く。

 ──まぁ、僕は顔出ししてないんだけどね……

 僕はその女子生徒のカメラに写らないように外側を、つまりは彼女の歩く反対車線側を歩いた。配信中の女子生徒よりも僕の歩く速度の方が早い。僕は彼女と並んだ辺りで一旦、立ち止まる。

 交差点に差し掛かったからだ。その時彼女の声が聞こえた。

「え?音出てない?」

 配信中の彼女は歩き続ける。交差点に差し掛かっているのに。

 すると、交差点の右から左へ軽トラックが物凄い速度で走ってきた。

 彼女は気が付かない。

 僕は走った。

 彼女がスマホを握っている方の腕を引き寄せながら、僕は叫ぶ。

「あぶない!!」

 彼女は突然のことでバランスを崩して、持っているスマホを落とし、僕に全体重をかけるようにして倒れ込む。

「きゃっ!」

「うっ!」

 勿論僕には彼女を支える腕力などない。彼女に押し倒される形で僕らは道路の上に倒れた。

「っ痛……」

 倒れたのは今日これで2度目だ。今度はうつ伏せではなく仰向けではあるが、1日にこんな短時間で倒れる人はそういないだろう。背中が痛い。

 僕は女子生徒の重みを全身に感じながら、ハッとする。

 視界は彼女のサラサラな髪に覆われ、僕の耳には彼女の吐息がかかる。

 ──めちゃくちゃいい匂い……それに、この感触は……

 最も彼女の重みを感じる左腕に意識がいった。左腕は彼女の柔らかなお腹に押し潰され、その先端である僕の左手は彼女の最も柔らかいと思われる胸をがっしりと掴んでいる。

 僕は赤面した。鏡がないので確認は出来ないが絶対に赤面した筈だ。それだけ顔が熱いと感じたのだ。

 僕が女子生徒の胸の感触に気が付いてから少しして、彼女もこの状況に気が付いた。

 彼女は両手をコンクリートの地面につき、まるで壁ドンならぬ床ドンをして軽く起き上がり、僕の赤面した顔を見やる。

 この時初めてこの女子生徒の正体がわかった。

 ──音咲華多莉おとさきかたり……

 昨日、画面上で見た。今はこんなにも近くに彼女の可愛らしくも綺麗で整った顔がある。そして彼女も同様にして赤面していた。

 僕は黙ったまま。いや彼女に、大丈夫かと声をかけられたらよかったのだが、声が出ない。

 彼女は僕を見つめる。

 危うく軽トラックにはねられそうになったのだから、感謝くらいされるだろうと僕は少し期待していた。

『助けてくださりありがとうございます。今度何かお礼をさせてください』

 このくらいのことは、言われるんじゃないかと思っていた。しかし、音咲華多莉はついていた手をコンクリートから離すと僕の胸ぐらを掴んだ。

「っ!?」

 そして叫ぶ。

「この変態!」

 もう片方の手が僕の左頬をはたく。

「へぶらっ!!」

 めちゃくちゃ痛かった。ホームで転んだ時に打っていた左頬を、僕の弱点を彼女は的確に打ち抜いてきたのだ。

 彼女はそのまま立ち上がり、落とした自分のスマホを拾って足早に学校へと去っていく。

 僕はしばらく放心状態となり、その場で大の字に寝転び、空を見上げていた。

 助けた筈なのに、痛い目をみた。人生そんなものだ。

 僕は天を仰ぎながらおもむろにスマホを取り出し、とあるコメントを読み返した。ネガティブな考えが頭を満たそうとする時、ララさんのコメントを見るようにしている。彼女かどうかもわからない。僕はおそらく女性だと思っている。アイコンが両目を瞑って、片目から涙の雫を滴らせている画像だからというのも理由の1つとして挙げられる。僕は今まで彼女の応援コメントを読んではその場で励まされ、何度も立ち上がってきた。

 コメントを読み終え、スマホをしまう。ララさんからパワーを貰った僕は起き上がった。そして学校へ向かう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル

諏訪錦
青春
アルファポリスから書籍版が発売中です。皆様よろしくお願いいたします! 6月中旬予定で、『クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル』のタイトルで文庫化いたします。よろしくお願いいたします! 間久辺比佐志(まくべひさし)。自他共に認めるオタク。ひょんなことから不良たちに目をつけられた主人公は、オタクが高じて身に付いた絵のスキルを用いて、グラフィティライターとして不良界に関わりを持つようになる。 グラフィティとは、街中にスプレーインクなどで描かれた落書きのことを指し、不良文化の一つとしての認識が強いグラフィティに最初は戸惑いながらも、主人公はその魅力にとりつかれていく。 グラフィティを通じてアンダーグラウンドな世界に身を投じることになる主人公は、やがて夜の街の代名詞とまで言われる存在になっていく。主人公の身に、果たしてこの先なにが待ち構えているのだろうか。 書籍化に伴い設定をいくつか変更しております。 一例 チーム『スペクター』       ↓    チーム『マサムネ』 ※イラスト頂きました。夕凪様より。 http://15452.mitemin.net/i192768/

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

隣の席のクールな銀髪美少女、俺にだけデレるどころか未来の嫁だと宣言してきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な高校生、相沢優斗。彼の隣の席は『氷の女王』と噂のクールな銀髪美少女、雪城冬花。住む世界が違うと思っていたが、ある日彼女から「私はあなたの未来の妻です」と衝撃の告白を受ける。 その日から、学校では鉄壁の彼女が、二人きりになると「未来では当然です」と腕を組み、手作り弁当で「あーん」を迫る超絶甘々なデレモードに! 戸惑いながらも、彼女の献身的なアプローチに心惹かれていく優斗。これは未来で結ばれる運命の二人が、最高の未来を掴むため、最高の恋をする糖度MAXの青春ラブコメディ。

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ

桜庭かなめ
恋愛
 高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。  あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。  3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。  出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2026.1.21)  ※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

処理中です...