【完結】人前で話せない陰キャな僕がVtuberを始めた結果、クラスにいる国民的美少女のアイドルにガチ恋されてた件

中島健一

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第48話 ぼっち

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~織原朔真視点~

 目的地へ着き、バスから降りた。昼食を終えた僕らはこれよりこの施設での自由時間を満喫するための説明を受けている。説明しているのはこの施設の館長だそうだ。内容としては、野外活動を通しての集団行動と体力の増進を図るこの林間学校の目的と去年自粛等で色々と制限がかかった高校生活を少しでも取り戻そうと僕らにたくさん楽しんで貰いたいという趣旨であった。またそれぞれが利用する施設には各々係員が常駐じょうちゅうしており彼等の言うことをよく聞くようにとのことだ。

 僕は思った。

 ──確かに普通?の生徒達は新しくできた友達とたくさん思い出をつくりたいのだろう。僕よりも上の先輩達はこんな林間学校や修学旅行等には行けなかったのだから、僕らは自分の生まれてきたタイミングに感謝をしないといけないのかもしれない。だが、これはあくまでも普通の高校生達の話だ。そう、僕には全くもって余計なお世話だ……

 もう少し早く生まれていたのなら、こんな林間学校なんてなかったしこんなに気を回さずに大会も出られた。

 僕が一頻ひとしきり、林間学校という学校行事に悪態をつくと、いよいよ各自の自由時間となった。みんなが一様に立ち上がり、各々が組んだ者達の元へと駆け寄る。僕の隣にいた男子生徒もそそくさと席を立った。同じ部屋の班であるが、ジャンケンで負けて仕方なく僕ら、ぼっち集団に入った者である。

 すると、僕の正面にいる同じ班のメガネをかけた男子が呟く、確か名前は渡辺君だ。

「フフフ、こうして集団行動から取り残された君たちを見てるとなんかホッとするよ……」

 メガネの彼の隣にいる目元を僕と同じように前髪で隠した男子生徒──名前は森君──が返事をした。

「クフフフ、わかりすぎて草……」

 彼等は僕と同じく班決めで残った2人だ。猛者と言っても過言ではない。メガネをかけた生徒、渡辺君が僕を見て言った。

「まぁ、こうして同じ班になったことだしよろし──」

「織原君!行こーー!!」

 彼の言葉は一ノ瀬さんの元気な声で遮られた。突然現れた一ノ瀬さんは僕の腕を引っ張って立ち上がらせる。

 僕は急に加わった力に体勢を崩しそうになった。その時、僕の正面にいるメガネの渡辺君と目元を隠した森君が驚いた表情で僕と一ノ瀬さんを見ていた。その視線はせわしなく、一ノ瀬さんに注がれたかと思うと、僕に行き、また一ノ瀬さんに戻る。

 生徒会に所属しているだけでなく成績も優秀で容姿端麗。クラスの人気者の1人が、自分と同じ陰キャ属性の男子生徒の腕を引っ張り挙げているのだ。驚くのも無理はない。意図してないのだが彼等の期待を裏切るようなことをしてしまい何とも言えない気持ちとなった僕はなるべく彼等と目を合わせないようにして、食堂を出た。

「さっき、何を話してたの?」

 一ノ瀬さんの質問に僕は答える。

「いや、特に何も……」

 彼女の走るスピードに合わせて、僕も走った。食堂をから抜け出し、外へ出ると広大な敷地が見える。うねる波みたいに起伏している丘陵きょうりょう。それをなぞるように通路が舗装されている。沿道には所々季節を感じさせる華が咲いていた。遠くには体育館を思わせるような施設があったり、ボールが遠くへと飛ばないようにネットで囲われたテニスコートのようなところも見えた。またナイターで試合をする為にか、大きな大木を想起させる照明がダイヤモンド型の球場を囲うようにして立っていた。そしてこれらすべての敷地を森が囲っている。ここからでは全てを見渡すことが出来ないほど広かった。アスレチック等を体験できる場所は体育館のような建物の奥にある森を抜けたところにあるみたいだが、ここからでは見えない。

 しかし、やはり一番目を引くのは僕らの戦場になる塔のように聳えるホテルだ。所々に様々な施設は見えるもののそれらの高さは木の高さと同程度か少し高いくらいだ。しかし、このホテルは天にも昇るほど高い。一見不釣り合いに見えるこのホテルは、おそらくこの敷地内のどこにいても目につくように敢えてそう造られているのだろう。

 僕が呆気にとられていると、一ノ瀬さんが電動のキックボードを2台持ってきた。

「なにそれ?」

「私たちがこれから体験するアーチェリー場にはこれで移動した方が早いと思って」

 そう言って一ノ瀬さんは僕にヘルメットを笑顔で手渡す。眩しい笑顔とはまさにこのことなのだろう。実際にヘルメットの光沢が太陽の光を反射させたせいでもあるかもしれないけど、彼女の笑顔で僕の心拍数が上がったのは確かだ。

 気を取り直すようにヘルメットを装着してキックボードを手押ししてから2、3回地面を蹴って、足をボードの上に前後にして乗せた。

 ここまでは普通のキックボードと同じだが、ボードに角のようにして伸びる手元にはアクセルがある。それをボタンのように押し込むと自動で走行する。僕は先に行く一ノ瀬さんの背中を追った。

 淀みなく走行する電動キックボードに多少の感動を覚えた。抵抗としては唯一、この広大な敷地にそよぐ風程度だ。また、キチンと舗装された道では、全く音を立てずに走行する。そのせいか、僕と一ノ瀬さんが、食堂を先に出た生徒達を抜かす度に彼等は驚いた様子を見せる。

 一ノ瀬さんは言った。

「楽しいねぇ~!!織原くん!!」

 僕も彼女と同じくらい大きな声を出せれば良かったのに。返事のない僕を気にしてか後ろを振り返る一ノ瀬さんに僕は首を縦に振った。

 彼女はクスリと僕に笑い掛け、目的地のアーチェリー場へと向かう。
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