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第147話 #キアロスクーロ part2
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~織原朔真視点~
『え~薙鬼流さん、エドヴァルドさん、MANAMIさん、今晩は』
僕と一ノ瀬さんが挨拶を返す。
「こんばんは~」
『こんばんは』
薙鬼流がリスナーからのお便りの続きを読んだ。
『私はキアロスクーロの練習配信からお三方を応援しておりました。田中カナタ杯で優勝した時は自分のことのように嬉しかったのを今でも覚えております。そんなキアロスクーロの皆さんが最近またそれぞれの分野でご活躍しているのを目の当たりにして、昔から応援している私からしたら歯茎を剥き出しにせざるを得ません。そこで質問です。昔と現在で変わったことがあれば教えて頂きたいです。これから季節は秋に入ります。お身体にお気をつけてお過ごしください。とのことですが、エド先輩は何か変わったことあります?』
「ん~変わったと言えば変わったか……うん、かなり変わったかも。例えば、チャンネル登録者数が増えてやっと生活がマシになったってのもあるし、後はそうだな、多くの人が見てるから発言には気を付けてるかも」
『あ!わかる!!なんて言おうかちょっと間を置いちゃうときありますよね!MANAMI先輩は?』
薙鬼流のチャンネルで配信をしていることもあり、彼女がMCのように話を振ってくれる。
一ノ瀬さんが声を発した。
『私は結構自発的に発言や行動をするようになったと思います。eスポーツの大会に出たのもそうですし、今後のことも親とよく話し合うようになりました』
「薙鬼流は?」
僕が話をふる。
『私は、そりゃあ変わりましたよ!どっかのオタキングは物語に出てくるキャラクターが成長したら読者は置いていかれた気持ちになって離れていくとは言っていましたが、Vチューバーは決してそうじゃないと思っていて、私なんか特に、お二人に出会う前なんか炎上してましたからね?昔と今の違いは、炎上中だったのが今は鎮静化されて元気にやってるってことだと思います!!』
「あ~、してたなぁ炎上」
『懐かしいですねぇ』
『あのぉ、恥ずかしいんで懐かしむのやめてもらってもいいですか?ということで次の質問読みまーす!キアロスクーロの皆さんこんばんは、3人のコラボをとても楽しみにしておりました。私事で大変きょう、しょく?』
『恐縮じゃない?』
『大変恐縮なんですが、現在学生の私には好きな人がいます。その人と仲は良いと思いますが、告白する勇気がいま一つありません。エドヴァルドさんやMANAMIさん、かわいいかわいいひなみちゃんは告白したことはありますか?告白をしたことがあるならどのように告白したのか教えてください。3人のご活躍いつも心より応援しております。とのことですが、恋バナ!!どうですか2人とも?』
僕は言った。
「その前に、視聴者さんからのお便りを改編して読んでただろ?」
『え~そんなことないですよ。MANAMI先輩は告白したことありま──』
『ないです!』
食い気味の返答に僕と薙鬼流は笑った。というか僕ら3人とも同じ学校出身であるし、一ノ瀬さんと僕は同じクラスだ。恋バナをするのは気まずい。しかも音咲さんも見ているのだ。僕は言った。
「MANAMIさんは現役女子高生で顔だしもしてるんだから、恋バナのリスクは高いんじゃないか?」
『え~そうですか?例えばどんなリスクが考えられます?』
「例えば、MANAMIさんに好きな人がいるってなったら、学校の誰かだって可能性が浮上するわけ──」
僕がそう言うと、呻くような声を一ノ瀬さんがあげる。
『はうっ!!』
『どうしたんですか!?MANAMI先輩!?』
コメント欄が動く。
〉これ学校に好きな人いるだろ
〉こーれ学校にいます
〉誰だ!?
「え~、これ以上言うのはやめておきましょう。ということで、薙鬼流は告白したことあるの?」
あまり聞きたくなかったが、ここは上手く回しておく。
『ありますよぉ!1個上の先輩でぇ、何回も告白してるのに全然返事くれなかったなぁ』
──コイツ…遊んでやがる……
〉告白されたことない
〉メンタルえぐいな
〉そんな経験したことないわ
「…そ、それでその1個上の先輩とはどうなったんだ?」
『どうもなってませんよ。私のことただの妹とかその程度に思ってるんだと思います。どう思いますぅ~?エドせんぱぁ~い』
「そ、それは…何回も告白するからその先輩は本気で考えてくれないんじゃないか?」
『えっ!?じゃあ本気で告白すれば、OKしてくれるんですか!?』
「俺に聞くなよ!!」
『じゃあエド先輩が私の好きな先輩だと仮定して、どう返事しますぅ?』
薙鬼流の問い掛けに僕は、生徒会室での出来事を思い出した。狭い空間で薙鬼流と密着した出来事を。僕が沈黙していると、一ノ瀬さんが声を出す。
『ダ、ダメです!いつの間にかどう返事するかって話になってます!告白したことがあるかの質問に答えましょう!エドヴァルドさん!!貴方は告白したことありますか!?』
一ノ瀬さんの勢いに気圧されたがしかし、僕は答えた。
「ないですね」
『好きな人とかいないんですか?』
『好きな人とかいないんですか?』
薙鬼流と一ノ瀬さんの2人が同時に訊いてきた。僕は答える。
「ん~俺にとって、恋愛は贅沢品で、誰かを好きになることよりもその日を生きていくことで精一杯というか……」
〉エド……
〉俺と一緒だ
〉わかる
〉エドの兄貴……
「でも……最近みんなのお陰でやっとまともな生活を送ることができるようになってさ…この人良いなって思うような出来事はあるっちゃあるかな」
『た、例えばどんな!?』
『どんなとこですか!?』
流石に恥ずかしいのではぐらかす。
「いや、いいだろ!詳しく言わなくても!!」
薙鬼流は引き下がらなかった。
『みんな知りたいですよ!特にエド先輩の女性ファンとか』
〉教えて!
〉気になる!
〉エドの民の巨乳JKです!教えてください
僕は観念したように吐露する。
「え~っと、俺自身強い人間じゃないから、なんだろう、この人となら弱さを共有できるかもってそう思った時に、魅力を感じた……かな?」
音咲さんがお父さんである鏡三さんとの関係を吐露した時のことを僕は思い出していた。
『え……』
『あぁ……』
薙鬼流と一ノ瀬さんが反応を示さないので僕は恥ずかしくなり、コメント欄を見た。
〉深い……
〉傷の舐め合い?
〉弱さの共有か……
「コメントにもあるけど、傷の舐め合いって捉えることもできるね。でも、ん~お互い支え合いながら生きていけるってそう思えるような人が最近良いなって思ったり、したり、します……っておい!JK2人が何も反応してくれないとめっちゃ恥ずかしいんだけど!!」
薙鬼流が言った。
『え~はいはい!それでは次にいこうと思います』
「流すな!!いや、流していい!!次行こ次!」
『え~、これはシンプルですね。3人の好きな映画を知りたいです、とのことです。お2人は映画とか見ますか?MANAMI先輩から訊こうかな』
『観ますよ!何が好きって言われると、そうだなぁ~トイ・ストリート4とか好きかな』
ディスティニーの映画で、玩具が意思を持ち、様々なトラブルに巻き込まれ、解決していく話だ。
『え~!?4はちょっとあれじゃないですか?私の中でトイ・ストリートは3で終わってます!エド先輩はどう思います?てか観ました?』
勿論観た。
「観た。でも俺も4が一番好きかな?」
そう言うと一ノ瀬さんが反応する。
『ですよね!?』
〉マジで?
〉3が最高!
〉あれ監督が途中で変わってラストシーンを改編したんだよなぁ
『なんで2人とも、4が好きなんですか!?』
一ノ瀬さんが逆に薙鬼流に質問する。
『ひなみちゃんはなんで4があんまり好きじゃないの?』
『だってだって!主人公は前の持ち主の大事な玩具だったじゃないですか?それがなんか最後……。3までの主人公だったら絶対やらないことをやっちゃって、なんか悲しかった』
『あ~、なるほど……私は主人公の玩具に物凄く共感しちゃったかなぁ。確かに3までの主人公は信念があって、それを実行していたんだけど4になるとその信念が揺れちゃうというか、やりたいことができない状況になっちゃうじゃないですか?それがなんかお医者さんになろうと勉強ばかりしていた私がゲームと出会ってプロゲーマーになりたいと思い始めた時の状況に勝手に似てるって思っちゃって……私の場合、主人公と違って物凄く自由度の高い状況だけど、今まで勉強してた自分を、信念を、捨てて新しい価値観に向かって行く。そんな4のラストがなんか胸に残って……だから4が一番好きなんですよね。エドヴァルドさんはどうして4が好きなんですか?』
一ノ瀬さんらしい解答だった。僕も自分の感じたことを思い出し、上手く言語化しながら答える。
「概ねいちの……じゃなくてMANAMIさんの意見に賛同してるかな?環境が変わるとやりたいことができなくなる。そんな主人公に凄く感情移入した……あと主人公は自分のアイデンティティーである声を捨てて、新しい自分になっていく姿が、僕が……俺がVチューバーになるのとなんか重なるというか……いま声を捨てるって言ったけど、悪者だった玩具にその声を託してるところも良いと思う。昔の価値観から新しい価値観っていうと昔の価値観が悪く描かれることがあるけど、そうじゃなくて昔の価値観も肯定しているところが……良い……」
〉僕助かる
〉エドが僕っていうの珍しい
〉Vらしい意見だな
僕は自分で言語化して思った。
──昔の価値観を、昔の自分を肯定してあげる。僕はそれを望んでいるのか?
『え~なんかそうやって映画とか観たことないかも……次、私が好きな映画発表するの嫌なんですけど!』
一ノ瀬さんが教えてほしいと言った。
『ん~しょうがないですねぇ、私の好きな映画はホラーです!バードマンの悪役が主人公のやつとかも好きですけど、やっぱり私はデカルコマニーが好きですねぇ。もう1人の自分が襲ってくるっていう話なんですけど、不気味でぇ、どんでん返しとかもあってめちゃくちゃ面白いですよぉ』
へぇ~、僕と一ノ瀬さんは聞いていた。
『結構マイナーな作品なんで知らない人も多いかも知れませんけど是非観てみてください!エド先輩は?』
僕は言った。
「最近観た中では、シング・ストーリーかな?」
『あれ良いですよね!』
一ノ瀬さんが肯定してくれた。薙鬼流は知らないから教えてほしいと訊いてくる。
「好きな女の子に振り向いてほしくて歌を作ったり、MVに出演依頼したりする音楽ラブコメみたいな映画かな?それぞれ家庭環境があんまりよくなくて、それでも夢に向かって行く映画……」
好きな映画の話をする経験は今までない。配信でもなかった。映画の説明をしてて思う。
──僕の好きな映画は悉く家庭環境がよくない……
なんだか悲しい気持ちになった。
『え~!なんかエド先輩っぽくなくて意外ですね?今度観てみます。他にはなんかありますか?』
家庭環境が出てこない映画を敢えて言った。
「あとはクラブファイトとかパイオブライフかな」
『え~薙鬼流さん、エドヴァルドさん、MANAMIさん、今晩は』
僕と一ノ瀬さんが挨拶を返す。
「こんばんは~」
『こんばんは』
薙鬼流がリスナーからのお便りの続きを読んだ。
『私はキアロスクーロの練習配信からお三方を応援しておりました。田中カナタ杯で優勝した時は自分のことのように嬉しかったのを今でも覚えております。そんなキアロスクーロの皆さんが最近またそれぞれの分野でご活躍しているのを目の当たりにして、昔から応援している私からしたら歯茎を剥き出しにせざるを得ません。そこで質問です。昔と現在で変わったことがあれば教えて頂きたいです。これから季節は秋に入ります。お身体にお気をつけてお過ごしください。とのことですが、エド先輩は何か変わったことあります?』
「ん~変わったと言えば変わったか……うん、かなり変わったかも。例えば、チャンネル登録者数が増えてやっと生活がマシになったってのもあるし、後はそうだな、多くの人が見てるから発言には気を付けてるかも」
『あ!わかる!!なんて言おうかちょっと間を置いちゃうときありますよね!MANAMI先輩は?』
薙鬼流のチャンネルで配信をしていることもあり、彼女がMCのように話を振ってくれる。
一ノ瀬さんが声を発した。
『私は結構自発的に発言や行動をするようになったと思います。eスポーツの大会に出たのもそうですし、今後のことも親とよく話し合うようになりました』
「薙鬼流は?」
僕が話をふる。
『私は、そりゃあ変わりましたよ!どっかのオタキングは物語に出てくるキャラクターが成長したら読者は置いていかれた気持ちになって離れていくとは言っていましたが、Vチューバーは決してそうじゃないと思っていて、私なんか特に、お二人に出会う前なんか炎上してましたからね?昔と今の違いは、炎上中だったのが今は鎮静化されて元気にやってるってことだと思います!!』
「あ~、してたなぁ炎上」
『懐かしいですねぇ』
『あのぉ、恥ずかしいんで懐かしむのやめてもらってもいいですか?ということで次の質問読みまーす!キアロスクーロの皆さんこんばんは、3人のコラボをとても楽しみにしておりました。私事で大変きょう、しょく?』
『恐縮じゃない?』
『大変恐縮なんですが、現在学生の私には好きな人がいます。その人と仲は良いと思いますが、告白する勇気がいま一つありません。エドヴァルドさんやMANAMIさん、かわいいかわいいひなみちゃんは告白したことはありますか?告白をしたことがあるならどのように告白したのか教えてください。3人のご活躍いつも心より応援しております。とのことですが、恋バナ!!どうですか2人とも?』
僕は言った。
「その前に、視聴者さんからのお便りを改編して読んでただろ?」
『え~そんなことないですよ。MANAMI先輩は告白したことありま──』
『ないです!』
食い気味の返答に僕と薙鬼流は笑った。というか僕ら3人とも同じ学校出身であるし、一ノ瀬さんと僕は同じクラスだ。恋バナをするのは気まずい。しかも音咲さんも見ているのだ。僕は言った。
「MANAMIさんは現役女子高生で顔だしもしてるんだから、恋バナのリスクは高いんじゃないか?」
『え~そうですか?例えばどんなリスクが考えられます?』
「例えば、MANAMIさんに好きな人がいるってなったら、学校の誰かだって可能性が浮上するわけ──」
僕がそう言うと、呻くような声を一ノ瀬さんがあげる。
『はうっ!!』
『どうしたんですか!?MANAMI先輩!?』
コメント欄が動く。
〉これ学校に好きな人いるだろ
〉こーれ学校にいます
〉誰だ!?
「え~、これ以上言うのはやめておきましょう。ということで、薙鬼流は告白したことあるの?」
あまり聞きたくなかったが、ここは上手く回しておく。
『ありますよぉ!1個上の先輩でぇ、何回も告白してるのに全然返事くれなかったなぁ』
──コイツ…遊んでやがる……
〉告白されたことない
〉メンタルえぐいな
〉そんな経験したことないわ
「…そ、それでその1個上の先輩とはどうなったんだ?」
『どうもなってませんよ。私のことただの妹とかその程度に思ってるんだと思います。どう思いますぅ~?エドせんぱぁ~い』
「そ、それは…何回も告白するからその先輩は本気で考えてくれないんじゃないか?」
『えっ!?じゃあ本気で告白すれば、OKしてくれるんですか!?』
「俺に聞くなよ!!」
『じゃあエド先輩が私の好きな先輩だと仮定して、どう返事しますぅ?』
薙鬼流の問い掛けに僕は、生徒会室での出来事を思い出した。狭い空間で薙鬼流と密着した出来事を。僕が沈黙していると、一ノ瀬さんが声を出す。
『ダ、ダメです!いつの間にかどう返事するかって話になってます!告白したことがあるかの質問に答えましょう!エドヴァルドさん!!貴方は告白したことありますか!?』
一ノ瀬さんの勢いに気圧されたがしかし、僕は答えた。
「ないですね」
『好きな人とかいないんですか?』
『好きな人とかいないんですか?』
薙鬼流と一ノ瀬さんの2人が同時に訊いてきた。僕は答える。
「ん~俺にとって、恋愛は贅沢品で、誰かを好きになることよりもその日を生きていくことで精一杯というか……」
〉エド……
〉俺と一緒だ
〉わかる
〉エドの兄貴……
「でも……最近みんなのお陰でやっとまともな生活を送ることができるようになってさ…この人良いなって思うような出来事はあるっちゃあるかな」
『た、例えばどんな!?』
『どんなとこですか!?』
流石に恥ずかしいのではぐらかす。
「いや、いいだろ!詳しく言わなくても!!」
薙鬼流は引き下がらなかった。
『みんな知りたいですよ!特にエド先輩の女性ファンとか』
〉教えて!
〉気になる!
〉エドの民の巨乳JKです!教えてください
僕は観念したように吐露する。
「え~っと、俺自身強い人間じゃないから、なんだろう、この人となら弱さを共有できるかもってそう思った時に、魅力を感じた……かな?」
音咲さんがお父さんである鏡三さんとの関係を吐露した時のことを僕は思い出していた。
『え……』
『あぁ……』
薙鬼流と一ノ瀬さんが反応を示さないので僕は恥ずかしくなり、コメント欄を見た。
〉深い……
〉傷の舐め合い?
〉弱さの共有か……
「コメントにもあるけど、傷の舐め合いって捉えることもできるね。でも、ん~お互い支え合いながら生きていけるってそう思えるような人が最近良いなって思ったり、したり、します……っておい!JK2人が何も反応してくれないとめっちゃ恥ずかしいんだけど!!」
薙鬼流が言った。
『え~はいはい!それでは次にいこうと思います』
「流すな!!いや、流していい!!次行こ次!」
『え~、これはシンプルですね。3人の好きな映画を知りたいです、とのことです。お2人は映画とか見ますか?MANAMI先輩から訊こうかな』
『観ますよ!何が好きって言われると、そうだなぁ~トイ・ストリート4とか好きかな』
ディスティニーの映画で、玩具が意思を持ち、様々なトラブルに巻き込まれ、解決していく話だ。
『え~!?4はちょっとあれじゃないですか?私の中でトイ・ストリートは3で終わってます!エド先輩はどう思います?てか観ました?』
勿論観た。
「観た。でも俺も4が一番好きかな?」
そう言うと一ノ瀬さんが反応する。
『ですよね!?』
〉マジで?
〉3が最高!
〉あれ監督が途中で変わってラストシーンを改編したんだよなぁ
『なんで2人とも、4が好きなんですか!?』
一ノ瀬さんが逆に薙鬼流に質問する。
『ひなみちゃんはなんで4があんまり好きじゃないの?』
『だってだって!主人公は前の持ち主の大事な玩具だったじゃないですか?それがなんか最後……。3までの主人公だったら絶対やらないことをやっちゃって、なんか悲しかった』
『あ~、なるほど……私は主人公の玩具に物凄く共感しちゃったかなぁ。確かに3までの主人公は信念があって、それを実行していたんだけど4になるとその信念が揺れちゃうというか、やりたいことができない状況になっちゃうじゃないですか?それがなんかお医者さんになろうと勉強ばかりしていた私がゲームと出会ってプロゲーマーになりたいと思い始めた時の状況に勝手に似てるって思っちゃって……私の場合、主人公と違って物凄く自由度の高い状況だけど、今まで勉強してた自分を、信念を、捨てて新しい価値観に向かって行く。そんな4のラストがなんか胸に残って……だから4が一番好きなんですよね。エドヴァルドさんはどうして4が好きなんですか?』
一ノ瀬さんらしい解答だった。僕も自分の感じたことを思い出し、上手く言語化しながら答える。
「概ねいちの……じゃなくてMANAMIさんの意見に賛同してるかな?環境が変わるとやりたいことができなくなる。そんな主人公に凄く感情移入した……あと主人公は自分のアイデンティティーである声を捨てて、新しい自分になっていく姿が、僕が……俺がVチューバーになるのとなんか重なるというか……いま声を捨てるって言ったけど、悪者だった玩具にその声を託してるところも良いと思う。昔の価値観から新しい価値観っていうと昔の価値観が悪く描かれることがあるけど、そうじゃなくて昔の価値観も肯定しているところが……良い……」
〉僕助かる
〉エドが僕っていうの珍しい
〉Vらしい意見だな
僕は自分で言語化して思った。
──昔の価値観を、昔の自分を肯定してあげる。僕はそれを望んでいるのか?
『え~なんかそうやって映画とか観たことないかも……次、私が好きな映画発表するの嫌なんですけど!』
一ノ瀬さんが教えてほしいと言った。
『ん~しょうがないですねぇ、私の好きな映画はホラーです!バードマンの悪役が主人公のやつとかも好きですけど、やっぱり私はデカルコマニーが好きですねぇ。もう1人の自分が襲ってくるっていう話なんですけど、不気味でぇ、どんでん返しとかもあってめちゃくちゃ面白いですよぉ』
へぇ~、僕と一ノ瀬さんは聞いていた。
『結構マイナーな作品なんで知らない人も多いかも知れませんけど是非観てみてください!エド先輩は?』
僕は言った。
「最近観た中では、シング・ストーリーかな?」
『あれ良いですよね!』
一ノ瀬さんが肯定してくれた。薙鬼流は知らないから教えてほしいと訊いてくる。
「好きな女の子に振り向いてほしくて歌を作ったり、MVに出演依頼したりする音楽ラブコメみたいな映画かな?それぞれ家庭環境があんまりよくなくて、それでも夢に向かって行く映画……」
好きな映画の話をする経験は今までない。配信でもなかった。映画の説明をしてて思う。
──僕の好きな映画は悉く家庭環境がよくない……
なんだか悲しい気持ちになった。
『え~!なんかエド先輩っぽくなくて意外ですね?今度観てみます。他にはなんかありますか?』
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