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第二章 ゴブリン大増殖編
第18話 ランク昇格の条件
しおりを挟む「これで、依頼完了っと」
辺り一面に無造作に散らばっているゴブリンの死体。それらをインベントリにすべて収納し終えると、俺は木々の隙間から少しだけ見える青い空を見上げて一息つく。今日受けたゴブリン討伐の依頼、討伐自体はもう危なげもなく簡単にこなすことが出来る。
しかし討伐よりもその後の処理が大変なのだ。倒した10匹以上のゴブリンの死体を全てインベントリへと収納し、そして分解機能を用いて魔晶核やその他素材に分解する。この超便利スキル『インベントリ』のおかげで普通よりも大幅に労力や時間を削減できているのだが、それでも大変なのだ。もしインベントリがなかったらと考えると...恐ろしくて仕方ない。
俺がこの異世界アルクスへとやってきてからもう一か月が過ぎた。
一か月と言っても元の世界基準ではなく、このアルクス基準なので実は同じ一か月とはいえ長さが少し違うのだ。元の世界では一か月はだいたい30日か31日だったが、この世界では20日間しかないのだ。それに1週間も7日ではなく5日。そして1年は12か月ではなく15か月となっている。
つまり、この世界での1年は元の世界の約8割ほどしかないことになる。1週間や1か月は短いのに1年は15か月もあるから長く感じるから何だか訳が分からなくなりそうだ。
ちなみにそうなると年齢も元の世界とは感覚が違ってくるわけで、現在俺は15歳であるが元の世界で換算するとおよそ12歳ほどの年齢ということになる。しかしすずねこ亭の看板娘「ランちゃん」も元の世界観さんだと小学生ほどの年齢となるはずだが、見た目は年齢相応なのである。こちらの世界の人たちは成長が早いのだろうか。そうだったらあまり気にしなくてもよさそうだ。
依頼にあった数のゴブリンも討伐し終えて俺はサウスプリングの町へと帰って来る。
この町はいつも活気があるが、うるさすぎず居心地がいい。約1か月間も住んでいる間にこの町の雰囲気が好きになっていった。先日は面倒な事件などにも巻き込まれたりしたが、そんな風に感じることが出来ているのはそれを上回るくらいの雰囲気の良さを感じたり、人とのいい関わりを築き上げることが出来ているからこそだろう。ここに永住してもいいぐらいには思っている。
町に戻ってきて、俺は依頼の報告をするためにギルドへと向かう。
これも日課となりつつある。この世界に馴染んできた感じがして何だか嬉しい。
ギルドに到着し、いつも通りの活気に満ちている建物の中に入っていく。
そして空いているカウンターへと向う。ちょうど今はレイナさんのところが空いているようだ。
「ユウトさん、おかえりなさい。依頼の達成報告ですか?」
「ただいまです。これでお願いします」
俺はギルドカードとゴブリンの魔晶核をカウンターの上に置く。するとレイナさんはゴブリンの魔晶核を鑑定器を使って確認を行う。そしてちゃんと依頼の要件に一致したものかどうか確認が出来るとギルドカードに達成情報を記録する。この一連の流れも何度も見たのでもう見慣れたものだ。
「あっ、ユウトさんおめでとうございます!Dランク昇格条件の1つを達成されていますよ」
「えっ、そうなんですか!ありがとうございます!!」
今日も今日とていつもと変わらない流れかと思いきや、なんとランクが上がるようだ。Eランクに昇格したのが冒険者登録をしてから3日目だったから、Dランクへの昇格まではそこそこ時間をかけれたかな。やっぱり早すぎると何かと目をつけられそうだからな。今回は上手く出来た方じゃないか?
「これで僕もDランクの依頼を受けられるんですね」
「あっ、いえ今回はDランクへ昇格されたのではなくて"Dランクの昇格条件の1つ"を達成されただけなんですよ」
あ、昇格できたわけではないんですね。てっきりもうDランクに昇格できるものかと早とちりをしてしまったようだ。たしかによくよく思い返してみれば"条件の1つを達成"って言ってましたもんね。完全に勘違いしてました。
...いや、恥ずかしい。
「"条件の1つ"ということは他に何か条件があるんですか?」
俺は恥ずかしい気持ちを悟られないように特に何もなかったかのように返事をする。
これで先ほどのことは無かったことにする。...そうしてほしい。
「はい、実はDランクへの昇格条件としてもう一つありまして、護衛依頼を1つ以上達成するというものがあるんですよ。本来だとEランクでは護衛依頼は受けられないんですが、Dランクの昇格条件を一部満たした冒険者さんたちにはこちらから適当な護衛依頼を提示させて頂き、それを受けて無事達成されたらDランクに昇格、という形になっております」
なるほどね、実質Dランクへの昇格試験という訳か。おおよそDランクになる前に一度は対人戦闘や人を守るということを経験しておかないとっていう感じかな?たしかに俺も誰かを守りながら戦ったりしたことはないからな。
「了解しました。ではその護衛依頼って受けることはできますか?」
「ちょっと待ってくださいね」
そういうとレイナさんは立ち上がって何かを探しに行った。
しばらくしてレイナさんが戻ってくると、開口一番に「すみません」と謝られてしまった。
「どうしたんですか?」
「実は、ちょうど今は適当な護衛依頼がなくてですね、しばらくはユウトさんにご提示できないかもしれません...申し訳ありません」
あー、それは残念。早くランクを上げたいという思いはあるけれども、別にそこまで切羽詰まっているわけではないから特に問題はない。護衛依頼もそんな毎日来るもんじゃないもんね。物語のようなにいつも主人公が必要なタイミングで必要なものが舞い込んでくるような、そんなご都合展開なんて早々起こるわけないもんな。
「いえいえ、僕は全然大丈夫ですよ。そんな今すぐにDランクに昇格しなければいけない理由とかもないですし。ゆっくり上げていきますよ。ではまた適当な護衛依頼がありましたらぜひ教えてください」
「はい!もちろんです!!」
俺はギルドカードと今回の報酬を受け取ってギルドを後にする。しばらくは今のままでEランクのクエストを地道につづけていくことになりそうだ。少しゴブリンやコボルドの討伐にも飽きてきたところだったから今回の件は少し残念だな~とは思う。まあ急がば回れって言葉もあるしゆっくりやっていこう。
たまには討伐以外の依頼も受けてみようかな...
でも一番報酬がいいのが討伐依頼なんだよな、今のところ。
考えてみた結果、やはり今まで通りに討伐依頼をやっていくことが一番だということに落ち着いた。討伐依頼は危険な分、報酬も他のものよりも美味しい。お金を貯めることを目標としてやっている以上は報酬面を重視していきたいのだ。
そういえば日が暮れるまでまだ時間があるので今日は久しぶりに装備屋にいってみようかな。そろそろお金もある程度貯ってきたところだし、もっと良い装備にでも手を出してもいいかもしれない。もうすぐDランクにも昇格できるって言うのに装備が今のままという訳にもいかないだろうし。よし、決定!!
そして俺は久しぶりにあの装備屋へと足を運ぶことにした。
久しぶりにあの姉弟と会えるのも楽しみである。元気にしてるかな~。
そういえば今ふと思い出したのだが...
あの装備屋って名前なんて言うんだっけ?
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