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第二章 ゴブリン大増殖編
第22話 魔法書で基礎を学ぶ
しおりを挟むゴブリンの討伐作戦が決行される日まであと3日。
参加する冒険者たちは各々準備に取り掛かっている。
今回の作戦は概要を聞くだけでもかなり危険なものであるというのは分かる。そのため入念に準備をしなければいけないのだ。それがもしかすると自分の生死を分けることもあり得るのだから。
もちろん俺も例外ではない。
女神イリス様から授けられたチート能力や馬鹿げたステータスを持っていようとそれを使う俺はまだまだ戦闘などの経験が浅い。一瞬の油断や準備不足で命を落とす事だって十分にあり得る、今回はそれほどまでの相手なのだ。
「さてっと、時間もないことだし出来る限りやってみますか!」
俺は宿屋の自室にて一冊の本を前に気合を入れる。それは以前に町の魔法書専門の本屋さんで購入した『魔法概論~構成理論と原理~』という本である。非常に分厚く、おそらく300~400ページくらいはある鈍器としても活躍しそうな本である。
なぜ今、緊急依頼の準備をしなければいけない大切な時期にこの本を取り出しているのか。そんなのんきなことしてないでもっと他にポーションなどの道具の準備や装備のメンテナンスなどをしたり、英気を養ったりした方が良いのではないかと言われるかもしれない。
しかし、むしろ今だからこそこの本を読まなければいけない理由があるのだ。
今度の敵はゴブリンの上位種、もしかしたらステータスで負けている可能性がある。接近戦ではステータスの差というのは大きな問題となってくる。そうなると今から残りの時間でステータスを大幅に向上させるのは得策ではない。疲れも残るだろうし、想像よりも上がらない可能性だってある。
そうなると別の方法でステータス差を埋める方法を持っておく必要があるのだ。
そこで俺が思いついたのが『魔法による戦闘のバリエーションの向上』である。
今まで俺は魔法を覚えていたけれど、基本的に戦闘では接近戦メインで戦っていた。せっかくMPも高いのにいわゆる宝の持ち腐れというやつである。だからこそ今までの戦闘スタイルに魔法を組み合わせることによって、戦闘の幅を広げようということである。そうなれば様々な状況下でも臨機応変に対応できる可能性が高まると思うのだ。
この本はタイトル通り、魔法の原理や理論が解説されているかなり難しめの専門書なのだが、チラッと見た感じ非常に詳しく魔法の根本的な知識が書かれている。魔法を上手く使いこなすためにはやはり魔法の原理などをちゃんと理解しないといけないと思ったのである。何事も本質を理解しないと、ね。
しかし、この本を全てじっくりと理解するまで読むのは時間がかかると思うので今必要だと思うところだけ読んでいくことにしよう。なんせ数百ページもあるんだから、やばいよな。
──気が付けば窓から夕日が差し込んでいた。
本を読み始めてから何時間経ったのだろうか?
最初はびっしりと書かれた文字に「うわぁ...」と唸りながらも頑張って読み進めていったのだが、途中から徐々に魔法理論の面白さに心を奪われて読むのに熱中していた。
貴重な準備期間の一日を費やしてしまったが非常に有意義な時間を過ごせたのではないかと思う。なんせ魔法の発動原理や簡単な理論を理解することが出来たのだから。この本にはさらに詳しい内容も書かれていたのだが今回は後回しにした。いつかちゃんと読んで理解したいものである。
今日理解した内容を簡単にまとめると以下の通りである。
1.魔法とは?
この世界のありとあらゆる場所に存在する『魔力』というものを媒介とし、思い描いた事象を生じさせる行為である。この『魔力』というのはエネルギーの一種とされており、『生命エネルギー』と対をなす『精神エネルギー』とも言われている。生物の肉体が『生命エネルギー』を根源として存在しているのと同じように、生物の精神は『精神エネルギー(魔力)』を根源として存在していると考えられている。
2.魔法の発動原理について
術者は自身の『魔力』を任意に操れることが前提となる。有する『魔力』を自身の思考(イメージ)によって具体的な現象として発現させるのだが、ここで重要になってくるのが『思考の強度』である。『思考の強度』が強ければ強いほど魔力変換効率が高く、そして事象干渉力が大きくなってくる。
したがって魔法発動において重要になってくるのは『魔力操作』『魔力量』『思考強度』の3つであると考えられている。『思考強度』を補うための技術として『詠唱』というものが広く一般的に用いられている。起こしたい現象をイメージするとともに、それを想起させる言葉を唱えることによって強度が増すことが分かっているようだ。
3.未知の部分
魔力によって生じた事象についてはまだ分かっていないことが多い。術者の思考とは関係なく影響が及ぶものであったり、生命以外が魔法を発動させることがあったりなど未だに解明されていない謎が多い。また思考がどのようにして魔力に影響を与えているのかという部分についてもまだ分かっておらず、そこにはまた違う力が働いているのではないかという説も存在している。
一方で女神様への信仰心を媒体として発動する魔法──神聖魔法──についても多くの謎がある。そこには奇跡としか言いようがないような現象まで発生させるような魔法まで存在しているのだという。そのほかにも魔族が主に使用する深淵魔法や、時空間魔法、召喚魔法など魔法には分かっていないことが数多く存在している。
っとこんな感じかな?
やたらと回りくどく魔法の歴史や変遷などをだらだらと書かれていて、やたらと難解に書いてあったけれど要約するとこうだと思う。でもその分これでもかというほどに魔法について詳しく書かれていた。しかしそれでも分からないことは数多く存在しているようで、よく分からないけれど発動するものも多いそうだ。
要するに今の俺が分かっておかないといけない部分は魔法はイメージの強さが重要だというところだろう。その補完のために詠唱が使われているっていうことらしい。本にも書かれていたがイメージさえしっかりと確立していれば詠唱は本来必要ないらしい。しかし起こしたい現象が複雑であればあるほど、頭の中のイメージだけで魔法を発動させるのは難易度が上がっていくために詠唱が重要になってくるようだ。
詠唱の他にも文字を使った設置型の魔法など様々な魔法発動の手法があるらしいが今回は省かせてもらった。そこら辺を勉強していくと魔法工学と呼ばれる学問に入っていくようなので、いつかちゃんと勉強してみたいと興味が湧いてきた。
今回のことである仮説が浮かんできた。魔法というのは本来イメージを魔力を用いて具現化するものであるならば、既存の魔法の概念にとらわれる必要はないのではないだろうか?
簡単に言えば、俺が良く使う身体強化魔法も身体能力を魔力を用いて向上させるものである。ここで言われている身体能力とは主に脚力や腕力などの筋力のことが主に言われている。しかし身体能力というのを筋力だけにこだわる必要はないと思う。
以前町でチンピラどもに襲われたとき、俺は身体強化魔法を無意識に心肺機能にまで適用して思考能力や認識能力まで向上させていた。これは心肺機能を高めることによって血流量や肺活量を挙げた結果であろう。つまりは身体強化魔法を『筋力の増強』ではなく『身体機能の増強』と捉えれば魔法の効果の幅が広がるのではないかと思うのだが、どうだろう。
この仮説がもしも正しければ魔法の解釈をもっと自由に幅広くすることによって、新たな効果や事象を発生させることが出来るのではないだろうかと思う。そうなると戦闘の幅ももっと広がるし、臨機応変に対応することも可能になるだろう。何だかワクワクしてきた...!!!
仮説を立てて実験して検証する、こういうのって楽しいな~!!!
流石に今日は時間的にこの考えを検証するのは無理なので明日にすることにした。今夜は年甲斐もなく遠足前夜の子供のようになかなか寝れそうにないかもしれないな。
...そういえば俺、今は子供だったな。
そんな一人突っ込みを脳内で繰り広げながら俺は早くこの仮説を試したいという焦る気持ちを静かに抑えながらベッドに入るのだった。早く明日にならないかな~!
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