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第三章 王都誘拐事件編
第44話 森に潜む者たち
しおりを挟む「あ~、暇だな...」
サウスプリングを出発して約10時間、俺たちは穏やかな平原を進んでいた。町を出発してからしばらくはこの広い平原が広がっているので盗賊はもちろん、魔物も出ない。安全なのは良いことなのだが正直やる事がなくて暇を持て余している。途中の昼休憩がこの乗り心地の最悪な馬車から解放されて気持ちよかったっていうのと、あとはセラピィと語らうことが唯一の暇つぶしになっている。
セラピィと俺は何か契約?みたいなので繋がっているらしく言葉を発さずとも念話のような形で会話が出来るのだ。そのおかげでマーカントさんに変な目で見られずにセラピィと話すことが出来ている。
今通っている安全な平原はまだまだ続いていくのだが、しばらく進んでいくと広大なスケーアの森というところを抜けていくことになるのだという。その森は俺が以前行ったことがあるフーリットの森の何倍もの広さがあり、その分魔物もたくさん生息しているのだという。それにスケーアの森は王都へと向かう近道となっており、今回のように多くの商人たちが通るためにそれを狙う盗賊たちもそこに潜んでいることが多いのだとか。
マーカントさん曰く、もう一つ王都へと行ける道があるらしいのだがそちらは遠回りになって今回の倍以上の日数がかかるのだそうだ。護衛を俺一人しか雇えなかったことからも分かる通り、今のマーカント商会には余裕があまりないので王都へ向かうために遠回りをしている余裕がないのだそうだ。
それにもうすぐしたら王都では建国祭という盛大なお祭りが行われるらしいので、この商売チャンスを逃さないよう一刻も早く王都へと辿り着きたいのだそうだ。
「おっ、ユウトさん!そろそろスケーアの森が見えてきますよ!」
「本当ですか?!」
俺は荷台から顔を出すと進行方向の先の地平線から少し顔を出し始めたたくさんの木々が見えた。あれがスケーアの森なのか、俺の地図化スキルでも未だにその全貌が把握しきれないほどの広さがある。これはこの森を抜けるのも時間がかかりそうだな。
俺たちはスケーアの森へと入る前にテントを張って野営をすることとなった。先ほども言った通り、スケーアの森は安全ではないので出来る限り森の中での野営は控えたいのである。とは言っても2,3回ほどは森の中で野営しないといけないのだけれどね。
「明日からは今回の旅で一番気を引き締めないといけないスケーアの森に入っていきます。ユウトさん、ぜひともよろしくお願い致します」
「ええ、任せてください!」
俺はマーカントさんに対して自信満々に答える。
依頼主を安心させるのも護衛としての役割だと思うので俺ははっきりとそう告げた。
どんな脅威が来ようともマーカントさんを守り切るという自信はもちろんあるが、どんなことにも想定外の事態というのはあり得る。この先どんなことが起こるかなんて誰にも分からないのだ。ゴブリン・イクシード並みの脅威なんてそう来ないとは思うが油断は大敵である。
そうしてマーカントさんと俺は交代に見張り番をしながら休息を取った。
幸いにも魔物や盗賊などの襲撃もなく、平和に過ごすことが出来た。
次の日、俺たちはついにスケーアの森へと入っていった。
森には交通のために切り開かれた一本道が通っており、それ以外は完全に自然豊かな木々に囲まれている。もちろん前世とは違って舗装や整備などされていないから今まで以上に馬車の乗り心地が悪い。お尻が痛いっていうのもあるが、俺のスキル『健康体』がなければ確実に乗り物酔いしていただろう。これで酔いもあったら本当に地獄だっただろう。ただただこのスキルには感謝しかない。
森に入ってからはセラピィがとても楽しそうに僕の周りを飛び回り、口数も心なしか増えているように感じた。やっぱりまだ俺以外の人がいるところではなかなか普段通りに出来ないのだろう。特に調べた限りでは精霊というのは人を選ぶとは聞いたが人を嫌っているとは聞いていないので人見知りなだけかもしれないな。
スケーアの森に入った初日は何事もなく進むことが出来た。
この長旅も残るはあと2日、おそらくは明日が山場と思われる。
明日からがこの森でも一番深いところを進むこととなっているのでそこからが一番危険度が増すのだという。狂暴な魔物や金目の物を狙っている盗賊たちも討伐隊に発見されにくい森の奥深くに潜んでいるらしい。明日はより一層気を引き締めていかないといけないな。
そして翌朝、俺たちは太陽が昇って辺りが明るくなってきたタイミングで出発する。出来れば今日中にこの森を抜け切りたいところだそうだ。そうすれば予定通り明日のお昼ごろには王都へと到着する予定とのこと。このまま何事も起こらずに終わってくれたらいいのだけれど...俺の尻のためにも。
「...?!」
するとフラグを回収するかの如く、俺の地図化スキルに反応が現れた。
俺たちの進行方向の道を取り囲むようにいくつもの魔力反応が確認できる。
反応からするにこれは魔物ではなく人だろう。
まあ盗賊、だろうな。
残念ながら森の中の道は一本道であるが故にここから回り道をするなんてことも出来ない。このまま奴らのもとへと正面から突っ込んでいくしかないのだ。幸いなことにまだ目視でも確認することが出来ないほどの距離はあるから対策をしておくとするか。
そうして俺はマーカントさんにこのことを告げ、時間を稼ぐためにわざとスピードを若干遅くしてもらった。明らかにスピードを落としすぎると盗賊たちに怪しまれてしまうのでそこは上手く調整してもらった。
「俺たちは盗賊狩りに行くとしますか。セラピィ、手伝ってくれる?」
「うん!もちろんいいよ~!!」
俺たちは馬車から飛び降りて森へと入っていった。
俺は気配遮断を使って音や気配を断ち切り、そしてセラピィにお願いして透明化することによって完全に姿を消すことに成功した。これで盗賊たちがセラピィはもちろん俺を認識することは出来ないだろう。相手のレベル的に正面からやりあっても勝てるだろうけれど念には念をってね。
実はこの透明化の魔法は一度俺も挑戦したことがあるのだが、以前の並列思考の時と同じようにどうやればいいのか分からず断念したという経緯がある。しかしまさかセラピィがその魔法を使えるとは知らず、あとからそれを知ったときには思わず「使えるんかい!」と突っ込みたくなったものだ。
それはさておき初めての盗賊退治だ、油断せず全員残らず捕縛して牢屋に入れてやろう。そうして俺は先回りして盗賊たちの潜んでいる地点へと猛スピードで向かっていった。
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