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第四章 極寒山脈の凶龍編
第64話 冒険者ギルド本部
ついに王都へと出発する日の朝となった。
俺とレイナさんはギルマスが用意してくれた馬車に乗っていくことになっており、そのため見送りにもギルマスが来てくれていた。本当に律儀な人だと改めて感じる。
レイナさんがギルマスから少し分厚い大きめの封筒を受け取って荷物に入れる。これで馬車にすべての荷物を積み終わる。まあ僕は荷物はほとんどインベントリに入れてあるのでレイナさんのバッグ一つ分の荷物だけだが、これにて出発の準備が完全に整った。
「二人とも気を付けてな。グランドマスターによろしくお伝えしておいてくれ」
「ありがとうございます!」
「ギルドマスターありがとうございます!ユウトさんもよろしくお願いします!では、行ってきます」
俺とレイナさんが馬車に乗り込むと御者が馬に指示を出した。
馬がゆっくりと走り出し徐々に馬車のスピードが上がっていく。
段々とギルマスが小さくなっていき、そしてついには町も遠く小さくなっていった。
俺とレイナさんはしばらくの間、馬車の中で互いにいろんな話をして盛り上がっていた。それでも王都までの時間をすべて潰すにはあまりにも距離が遠く、途中でレイナさんは寝息を立てて寝てしまった。
いくら日が昇り切って気温が上がってきたとはいえこのままではレイナさんが風邪をひいてしまうのでインベントリから毛布代わりの大きな布を取り出す。それをゆっくりと起こさないようにレイナさんへとかける。
馬車の天幕からかすかに感じる太陽の暖かさと馬車の中を爽やかに過ぎ去っていく風が確かに眠気を誘ってくる。俺は馬車周辺の警戒をする必要があるので完全に寝るわけにはいかず、目をつぶって休む程度にとどめている。
そうして何事もなく穏やかな王都への旅路は過ぎ去っていった。道中に多少の魔物との遭遇はあったが、1km以上離れている時に遠距離でレイナさんにも御者にも気づかれないように全て対処していった。
地図化スキルやその他のスキル、魔法技能を訓練してレベルアップしたおかげでこのような芸当も簡単に出来るようになったのだ。やはり問題は発生する前に対処するのが一番だな。
そうしてようやく前回と同じく約4日かけてついに俺たちは王都へと到着した。
門での検閲を終えて王都の中へ入るととなりでレイナさんが街並みに見入っていた。
「そういえばレイナさんって王都に来るの初めてですか?」
「いえ、幼い頃に1,2回ほど両親と来たことはありますけどギルドの受付の仕事を始めてからは初めてですね。久しぶりに来たのですごく新鮮な気持ちです...!」
子供のように目をキラキラと輝かせながらいろんなお店を見ている。
あとでどこか行きたいところがあれば連れて行ってあげようかな。
門から少し中に入ったところで俺たちは馬車から降りることになった。
すると御者の人から話しかけられた。
「お客さん、今回は幸運でしたね。道中に全く魔物と出会わなかったんですから」
「あっ、いや~本当に運が良くて良かったですね~!今回はありがとうございました」
まあわざわざ「実は何度か気づかれないように魔物を倒してたんですよ~」なんて言う必要はないだろうからこの御者さんに話を合わせる。こうして俺たちは馬車とはお別れして早速目的地である冒険者ギルドの本部へと向かう。
と言いたいところだが、その前に宿のチェックインをしておかないと部屋がなくなっては大変だ。二人でそのように話し合って真っ先に行くのは宿にすることに決める。宿は前回俺が王都に泊まった際に行った宿でいいんじゃないかということになったのでそこへ急ぐことにした。
そうして俺たちは何とか宿泊できる宿もしっかりと確保することが出来た。
部屋にレイナさんが今必要のない荷物を置いてからようやく本部へと向かい始める。
「ここが冒険者ギルド本部です」
「すごく、大きいですね...」
レイナさんは目の前に建っている大きな建物を見上げて口をポカンと開けている。俺も最初この本部を見た時はレイナさんのように建物の大きさに圧倒されていたっけ。それに大きさだけではなく細部の装飾にもかなりこだわっており、建物全体が一つの芸術作品と言っても過言ではないのだ。
「とりあえず入ってみますか」
「え、ええ。早く資料も渡さなくちゃいけないですし、行きましょうか」
そうして俺たちは本部の中へと入っていった。中も外から見たらわかる通り、大きくて広いのだがそれぞれの豪華さがサウスプリングとはけた違いである。ある意味高級ホテルのロビーを思わせるその豪華さはここを荒くれ者たちが集まる場所だとは到底思えない。
しかしそこにいる人たちは鎧や魔力の帯びたローブ、大きな武器に魔法の杖など明らかに実力のありそうな冒険者があちこちに存在していた。それを見るとここはやっぱり冒険者ギルドなんだなと感じてしまう。
とりあえず俺たちはギルド職員がいる受付へと向かうことにした。
受付へとやってくるとサウスプリングのよりも倍近くのカウンターがあり、またそれに合わせて非常に多くの職員たちが業務に追われていた。さすが冒険者ギルドの本部ともなると業務の量も比べ物にならないくらい多いだろうな。
「あのー、すみません。冒険者ギルドサウスプリング支部からやってきたものなのですが...」
レイナさんはカウンターで働いていた受付嬢の一人に話しかける。
それと同時に何か僕の持っている冒険者カードに似たカードのようなものを渡していた。
「サウスプリング支部の方ですね、少々お待ちください」
カードを受け取った受付嬢はカウンターの奥で何か確認作業をし始めた。おそらくギルマスが事前に俺たちのことについて知らせておくと言っていたのでその確認だと思う。
「お待たせいたしました。サウスプリング支部のレイナさん、およびCランク冒険者のユウトさんですね。グランドマスターに伝えてきますので少々お待ちください」
確認を終えたであろう受付嬢が急いでカウンターから出てどこかへと消えていってしまった。待つこと数分後、その受付嬢が駆け足で帰ってきた。かなり急いでいたのか少し息が上がっているようだった。
「大変お待たせいたしました。応接室にてグランドマスターがお待ちです。さあこちらへ...」
そうして俺たちは応接室へと案内してもらうことになった。
応接室はこの建物の二階にあるらしく、建物の壁際にある大きな階段から上がっていく。見たところこの建物には地下や三階もあるようで階段がさらに続いていた。外観から考えてもかなり大きな建物であることは分かってはいたが、改めて中に入ってみるとさらにその広さに驚かされる。
「さあ、こちらです。グランドマスター、お客様をお連れいたしました」
ドアをノックして受付嬢がドアを開いてくれる。
入ってくださいとジェスチャーで促され、俺たちはゆっくりと部屋の中に入っていく。
応接室の中に入ると部屋の中は貴族の館を思わせるほどの豪華な装飾が施され、座り心地がよさそうなソファーが2つ、透明なガラス張りの机を挟むように配置されていた。
そして一番奥には俺よりも少し大きいぐらいの優しそうな白髪男性が仁王立ちでこちらを見ている。
おそらく彼がグランドマスターだろうが思ったよりも見た目が若い。グランドマスターというのだからもっとギルマスよりも屈強な体な老人を想像していたのだが...
それにこの部屋には彼だけではなく、なぜかもう一人...
その人は俺を見るとすぐさま立ち上がりこちらへと挨拶してきた。
「お久しぶりです、ユウトさん」
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