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第五章 王都魔物侵攻編
第99話 5体の超越種
しおりを挟むグランドマスターの号令と共に俺たちは一斉に魔物の群れへと向かっていく。先陣を切っているのは俺たちSランク冒険者たちとグランドマスター、そしてその後ろから一気に他の冒険者たちが続いている。
しかし実際には今の構図は最前線にガーディスさん、そして彼から少し離れたところに俺たち、でその後ろには他の冒険者たちという形になっていた。
「よっしゃああああああああ!!!!!ようやく俺の出番が来たぜ!!!!!」
ガーディスさんは準備の時点で何も役に立てなかったフラストレーションを一気に解放させているようで、意気揚々と魔物の群れに我先にと突っ込んでいった。
「あのバカ、張り切るのはいいけどあれ後でバテないでしょうね?」
「あやつは力と体力だけが取り柄みたいなもんじゃからのう。まあ大丈夫じゃろ」
イルーラさんと同じく俺もペース配分大丈夫かが心配だ。それにしてもヴェスティガさん、もっとオブラートに包んであげてよ...!
「はあああぁぁぁぁ!!!」
すると前方を走っていたガーディスさんが魔物の群れに辿り着くや否や大きく飛び上がった。そしてその次の瞬間...!
「砕けろぉ!!!!!」
ガーディスさんが上空から勢いよく魔力を込めた拳を地面に叩きつけるとその前方の地面がひび割れ、そこからマグマのように強烈な爆発エネルギーが噴き出した。
「グオオオオオォォォ!!!!」
その強烈な衝撃波と地面のひび割れに足を取られて多くの魔物が爆発エネルギーに飲み込まれた。その威力は凄まじくガーディスさんの前方100m以上に及ぶ魔物たちが一気に倒れていた。
「さあどんどん来いや!!!」
そして彼はその勢いのままさらに奥へと突っ込んでいった。俺はその光景を見て、失礼ながらやっぱりガーディスさんも凄いんだと思った。
そうしてガーディスさんの一撃をきっかけに俺たちと魔物たちが戦いを開始した。
作戦としては至ってシンプルで奥に控えている強い魔物はSランク冒険者が優先して相手をする。そしてその場の臨機応変な作戦変更はグランドマスターの指示に従う、ただそれのみである。
これだけの規模、およそ200~300人に及ぶ上位冒険者たちに細かな作戦を行わせるのは至難の業である。
だからこそ長年冒険者を見てきたグランドマスターは彼らをより生かすために少しの制約と大きな自由というバランスが大事だとこの作戦にしたのだそうだ。
「はああぁぁぁぁ!!!」
「くらえっ!!!」
冒険者たちがあちこちで魔物との戦闘を繰り広げている。見た感じ余裕はなさそうではあるが彼らでも超越種でなければ戦えそうである。
俺は少し安心して周りの魔物を蹴散らしながら奥にいる超越種たちに向かって進んでいく。
「イルーラよ、超越種と戦う前にあまり消耗しすぎるでないぞ」
「言われなくても分かってるわよ。どこかの脳筋と違ってね」
ホバリングしながら破格の威力の風魔法で周囲の魔物を切り刻みながら高速移動するヴェスティガさんがイルーラさんに忠告する。
しかし風魔法で歩幅をさらに大きくして走っているイルーラさんはレイピアのような細い剣で軽々と魔物を斬りながらその忠告を皮肉混じりに一蹴する。
そしてそれを少し後ろから走りながら見ている俺とグランドマスターはこんな状況なのにいつも通りすぎるやりとりに少し微笑ましさを感じていた。
「ぐあっ?!」
すると突然俺たちのど真ん中に誰かが飛ばされてきた。地面との衝突で舞った砂埃が消えるとそこには先行していたはずのガーディスさんの姿があった。
「どうしたんですか?!」
「いや~、思っていたよりも超越種ってのはタフなやつだな。不意打ちだったとはいえここまで飛ばされちまったぜ」
かなり強烈に飛ばされて地面に叩きつけられていたはずだけど、全くもって彼はピンピンしていた。それどころかますますギラギラと闘志が湧き上がっているのを感じる。
「あのデカブツは俺が相手するからな!他のは頼むぜ!!」
ガーディスさんはそれだけ言い残すと勢いよく地面を蹴ってジャイアントオークの超越種に向かっていった。まあ超越種の一撃を受けてピンピンしているなら大丈夫だろう。
「とりあえずあれはガーディス君に任せておいて、私たちもそれぞれ超越種を手分けしようか」
「「はい!」」「うむ」
そして俺たちは目配せをしてそれぞれ一体ずつ超越種の相手をすることにした。倒すことは大前提であるが、この先にまだ黒い沼を守るドラゴンゾンビがいる。そいつとローガンスの相手もしなければならないので多少の力は温存しておく必要がある。
超越種相手にかなりの難問を突きつけているかもしれないがこれが勝利への条件なのである。最悪の場合は俺が何とかする、そういう心づもりではいるけれども。
各々相手をする超越種を誘導し、お互いの邪魔にならないように距離を取らせる。
ここでヴェスティガさんが用意してくれた魔物の注意を引く魔道具が役に立った。何もない状態だったらこんなにスムーズに分断出来なかっただろう。
そうしてSランク冒険者たちと超越種たちとの1vs1が始まるのだった。
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「私の相手はあなたね。これほどの相手は初めてだけれども負ける気がしない、いや負けるわけにはいかないわ!」
イルーラは無数に生えた巨大な木の根と伸縮自在な無数の木の枝を持つ魔物とカーニバルトレントの超越種を相手にすることになった。
全長およそ10~15mほどで、かつ直径約5mの金属以上の強度の幹を持つ巨木がその強靭な根を巧みに動かして移動してくる。
また無数に生えた枝を自由自在に伸び縮みさせて狙った獲物を串刺しにして捉えようとする。その枝の速度は常人には捉えられないほど速い。
それ以外にも無数の根の一部を地面の下に張り巡らせて下からの不意の攻撃を仕掛けてくるのもまた厄介である。
ちなみにこのカーニバルトレントは木ではあるが根や葉などからの栄養吸収や光合成だけではなく枝や根で串刺しにした獲物を幹にある大きな口で捕食する。
通常でも厄介な魔物であるにも関わらず、それが超越種となった今どのようなスペックを保持しているかは未知数である。
森生まれ森育ちのイルーラにとってトレントという魔物はよく知っている相手ではあるが今回ばかりは油断ならないだろう。
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「まさか日光の元でこやつと出会えるとはのう。この世界にはまだまだわしが知らぬこともあるものじゃな」
ヴェスティガの目の前には普段は常闇のダンジョン奥地や洞窟にしか生息していないリッチという魔物の超越種であった。
リッチは上位アンデットに分類される魔物で、骸骨が聖職者のようなローブを被っているような見た目通り生来は能力の高い聖職者であった。
しかしその死体に何らかの原因で怨念などの負のエネルギーが集まり、それがこのリッチという魔物を生み出したとされている。
リッチには物理攻撃はあまり効果がなく、魔法攻撃によってのみ倒すことができるとされている。しかしリッチ自身も魔法に長けているために魔法の撃ち合いとなってしまうので倒すのは困難を極める。
ただ通常、リッチは日の光や聖属性の魔法に弱い。聖属性の攻撃魔法が使える者が少ないという点を除けば対策方法は明確で容易である。
しかしながら今回の超越種は現時点で太陽の光を一身に浴びていながらも平気な様子であるために弱点である聖属性に耐性がある可能性が高い。
聖属性の攻撃魔法を覚えているヴェスティガであっても単純に有利というわけではなくなってしまったのだ。
そんなことを全て理解した上でヴェスティガは自然と口角が上がっていた。このリッチ・イクシードという存在は彼の中にある無限の探究心という炎をつけてしまったのだ。
「さて、時間をかけるわけにはいかんがお主のこと...できる限り調べさせてもらうとするかの」
彼にはこのリッチ・イクシードも研究対象に過ぎないようだ。
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「さて、この後も控えているのでね。ワンちゃんには申し訳ないけれど手短に終わらせてもらうよ」
グランドマスターが相対しているのは全身から熱波を放出している高さ3mほどの狼、マグマウルフの超越種である。
ウルフ種というのはいろんな土地に生息しており、環境適応能力が高いのでその土地に適した亜種がたくさん確認されている。
その中でもマグマウルフは最も気性が荒いと言われており、普段は火山地帯に生息している。
原種が比較的大人しいのにこの亜種が気性が荒くなってしまったのは火山周辺の環境が原因だと言われている。そこは食料となる生き物も少なく、凶暴な生き物が多いので生き残るために獲物を見つけたらすぐに襲うようになったようだ。
火属性に特化したマグマウルフだが、このマグマウルフ・イクシードは通常のマグマウルフと比にならないほどの熱量を保持しているようだ。
そのことは立っている周辺の地面がマグマウルフの出す熱波で赤く溶け出しそうになっていることからも分かる。
普通の人間であれば近づいただけで全身やけどを負って死んでしまうだろうが、グランドマスターはなぜか汗一つ流していなかった。
「グルルアアアァァァァ!!!!!」
目の前に余裕な雰囲気で佇むグランドマスターを本能で獲物ではなく敵だと判断したのか、マグマウルフはいきなり攻撃を仕掛けるのではなく威嚇して出方を窺っているようだ。
「なるほど、力や魔力だけではなく知能もそこそこ高いのか。確かにこれは種の壁を一応は超えているのか」
その様子を見たグランドマスターは人工的に生み出されたという目の前の超越種の分析をしていた。例え紛い物だろうと超越種の名は伊達じゃないのだなとグランドマスターの中でローガンスの危険度がさらに上昇していた。
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一方の俺はというと...
「ふぅ、誘導するのに時間かかっちゃったな。それにしても...縁があるというべきなのだろうか」
俺が誘導してきたのはゴブリン、もちろん超越種である。
ただし以前とは違ってただのゴブリンの超越種ではなくエルダーゴブリン・イクシードである。
エルダーゴブリンは長き時を経て武力・知力ともに最高クラスとなったゴブリンが行き着いた希少なゴブリンなのである。普通のゴブリンとは違って群れることはなく単独行動をしており、その強さはゴブリンキングと同等かそれ以上であると言われている。
このゴブリン自体も超越種と同等にその存在自体が幻なのではないかと言われているほどの個体であり、そのさらに超越種というのは奇跡に近いほどの確率であろう。
まあ目の前のエルダーゴブリンは強制的に超越種になっているのでレアかと言われればそうでもないかもしれないが、その強さは以前戦ったゴブリン・イクシードとは別格である。
「さて、俺がどれだけ成長できたのかお前で試させてもらおうか」
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