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第五章 王都魔物侵攻編
第113話 称号と褒賞
俺は瀕死状態のローガンスの元へと近寄って様子を確認する。殺しはしないギリギリのラインでダメージを与えていたのでやつは死の瀬戸際を彷徨っていた。
とりあえず死なない程度に少しだけやつの体の治療をした。もちろん魔脈の状態はそのままなので魔法は使えないだろう。だが万が一のために身動きが取れないようにインベントリからロープを取り出し、ロープに耐久力上昇の効果を付与して拘束しておいた。
そして俺は土魔法で作り出した檻の中に閉じ込めておいた。動けない相手に厳重過ぎるかもしれないが、もう二度と取り逃がすことはしたくないという気持ちがこうしないと落ち着かないのだ。
とりあえず檻の下につけて置いた台車で檻ごとローガンスを街へと輸送することにした。彼の今後の処遇は国の正式な法に任せよう。街を襲おうとした張本人でかつてセレナを誘拐しようとした親玉なのだから俺個人で判断するわけにもいかないだろう。
と、その前に大事なことがある。
俺は急いでグランドマスターのところへと向かう。
「グランドマスター、帰りましょうか。みんなが街で待っています」
俺は静かに横たわるグランドマスターに向かって話しかける。もちろん返事が返って来ることはないがどうしても話しかけずにはいられなかった。
「...本当は、全員無事で帰りたかった。グランドマスター......ごめん、なさい...」
俺はグランドマスターの隣で膝をついて泣き崩れた。自分の不甲斐なさで彼は犠牲になってしまったのだ。そのことに対する自責の念が俺の心の中で嵐のように暴れまわっていた。
ちゃんと目的を達成し、戦いにも勝ったのに心が痛い。
その痛みに呼応するかのように涙が溢れてくる。
「うっ.....うっ......」
「泣くな、ユウト、くん」
「だって...俺のせいで...........えっ?」
俺は予期せぬ声が聞こえて勢いよく顔を上げる。すると先ほどまで目の前で安らかに眠っていたグランドマスターが目を開けてこちらを見つめていたのだ。
驚きの光景に俺は状況を飲み込めず上手く言葉が出なかった。
「えっ、グランドマスター...?!どうして、なんで...」
「...どうして、だろうね。私にも分からないけれど、何だか...深い闇の中で、温かな光に包まれて...気づいたら、ここにいたんだ」
「温かな光...」
もしかして先ほどのドラゴンゾンビ・イクシードを倒したときに生み出した新たな創造魔法のことだろうか?あれはイリス様の神聖さをイメージして邪を打ち払う奇跡を体現した魔法だったのだけれども、もしかしてその魔法の副産物...なのか?
でも何はともあれ...
「グランドマスター、ぐすっ、お帰りなさい」
「ああ、ただいま。そしてよくやったよ、ユウト君」
俺は奇跡によって生き返ったグランドマスターと笑顔を交わす。
ああ、神様。本当にありがとうございます。
俺はこの奇跡を心の底から感謝した。
===============================
「...あれは。おーい!グランドマスターたちが帰ってきたぞ!!!!!!」
「「「「「「「おおおおおおおお!!!!!!!」」」」」」」
そうして俺とグランドマスターは二人そろって無事に王都へと帰還した。
グランドマスターは生き返った後遺症なども特になく、しばらく休憩したら立ち上がって歩けるぐらいには回復することが出来た。もちろんしばらくは戦いなど出来そうにないけれど。
「「ユウトさん!!!」」
俺が街へと戻ると勢いよくセレナとレイナの二人がセラピィと共に駆け寄ってきた。三人とも心配そうな硬い表情でこちらを見ていたが、事の顛末を伝えるとみんなの表情が一気に解けて満面の笑顔となって抱き着いてきた。
「ちゃんと約束を守ってくださってありがとうございます!!」
「本当に無事に帰ってきてくれて嬉しいです!!」
「セラピィも心配してたよ!!」
俺はみんなとの約束通り、街を守って無事に帰って来ることが出来た。ただ帰ってきただけなのに今はそのことがこの上ない幸せに感じていた。またこの先もこの三人で無事に一緒に過ごしていけるんだと思うと守りきったものの大きさを改めて実感していた。
「みんな、ただいま!」
===============================
こうしてローガンス率いる魔物軍団による王都襲撃事件は幕を閉じた。負傷者や損害はあったものの、幸いにも死者は0人という結果となった。
ヴェスティガさんたちも特に命に別状もなく数日の療養の後にみんな元気に復活していた。ガーディスさんなんか修行が足りない!と元気になるや否やギルドの魔物討伐依頼を片っ端から受けて回っていた。
ただしばらくは安静にしていなさいとグランドマスターに怒られていたけれども。
そして今回の事件を起こした張本人であるローガンスは王都へと運び込まれて厳重な監視体制の元、長きにわたる尋問にかけられることとなった。
マモン教がここまでの力をつけていたことが今回の件で分かり、国のお偉いさんたちもこのままこの集団を見過ごしておくわけにはいかないと出来る限りやつから情報を絞りだそうということだそうだ。
ただローガンスはどのような尋問に対しても決して教団の内情を漏らすことなく、逆にどれほどマモンが素晴らしいか、どれほどマモン教の教えが素晴らしいかを永遠と話していたらしい。
最終的には王国の法律によって裁判にかけられてローガンスは死罪となった。この国の法律に関しては詳しくないがそうなるだろうなと判決内容はおおよその予想はついていた。
その刑が執行され、正式にこの事件は終わりを迎えることとなった。
一方で俺たちはというと...
「...静粛に!これより先日起きた魔物王都襲撃事件において首謀者の生み出した凶悪な魔物を討伐し、見事に首謀者を捕らえ、事件を解決に導いた者たちに国王より褒賞の授与を執り行う!冒険者ギルド、グランドマスターのエストピーク・オムニロード殿、Sランク冒険者のヴェスティガ・ウィークラフ殿、イルーラ・エレガ・イーストウッド殿、ガーディス・ギガイア殿、そしてユウト殿前へ!」
名前を呼ばれた俺たち五人は多くの貴族たちに見られながら王様の前へと並び跪いた。このような礼儀作法は直前にグランドマスターから教えられたはいいものの、緊張でちゃんと出来ているか不安で不安で仕方がない。
「...うむ。諸君、彼らはこの王都を守るために身を挺して凶悪な魔物に立ち向かい見事にそれを撃破した。我はその勇気ある行動と大いなる功績を称え、彼らに王認騎士の称号と王金貨100枚ずつを授与する!」
「「「「「ありがたく頂戴します」」」」」
《新たな称号『王認騎士』を手に入れました》
王認騎士というのは国王が直々にその実力と多大なる功績を認めた者だけに贈られるこの国最高位の騎士称号である。ちなみにステータスにもそれが付与されていたが、その効果が『国王や王国に属するものたちからの好感度が大幅に上昇する』というものだった。
まあ好感度も大事だからね、大切なことだから良い称号だ。
てかそれよりも王金貨100枚ってもう一生遊んで暮らせるお金だよね?
そっちの方がヤバいんですけど!!目標達成したじゃん!!
まあでも冒険者としての生活も今となっては誰かの助けになれて嬉しいから辞めるつもりはないけれど。今では自由な生き方ができ、誰かの力になれるこの冒険者という職は俺にとって天職なのではないかと思っているほどだ。
そうしてド緊張の授与式を終えたその後は夜通し豪華絢爛なパーティが同じく王城内で行われた。俺たちだけではなくセレナやレイナ、そしてセラピィも一緒にそのパーティを楽しんだ。普段ならこういうところは得意ではないけれどみんなが一緒なら何だか悪くない、そんな気がした。
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