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令息は離縁された憧れの女性を幸せにしたい

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 幼いころからあこがれていた女性が離縁されて帰って来る。その一報を知らされたとき、アインは怒りを抑えきれなかった。
 父親同士が友人同士だったため、幼いころからマリナとアインはよく遊んでいた。少し考えの固いところがあるが、心根の優しい女性だった。放蕩息子と評判の伯爵家の男へ嫁いで、一年足らずで帰って来るのだ。

 記憶の中ではいつも強い意志を瞳に宿していた彼女も、さすがに気落ちしていると噂に聞いた。理由が理由なだけに、それは無理からぬことだ。
 
 マリナの結婚相手、マヌエルはどうしようもない男だった。遊びで新興の商家の娘に手を出した挙句、彼女を孕ませてしまった。娘を傷者にされたことに怒った商人は、人を雇いひそかにマヌエルを亡き者にしようと刺客を送った。
 
 愚か者でも夫は夫。マリナが身を挺して庇い、マヌエルはケガの一つもなかった。それなのに、どうにかして一命をとりとめたマリナが目を覚まして最初に投げかけられたのは感謝の言葉ではなく離縁状だったのだ。

 曰く、肌に傷を負った女は自身の妻にふさわしくない。

「あんまりです。お嬢様は背中に大きな傷を得て、まだ歩くのもおぼつきませんのに。離縁だなんて……」

 マリナに結婚後も付き従っていた老メイドがさめざめと泣きながら事の顛末を説明する。アインは腸が煮えくり返りそうだった。

「僕が結婚する……」
「マリナさんとは、僕が結婚する!」

 そう決意すると、父母も同情的だったので話はトントン拍子に決まった。唯一マリナだけが乗り気ではなかった。

 マリナの回復を待って、アインは彼女の部屋を訪ねた。老メイドがためらいがちに控えていたが、マリナは彼女を下がらせた。
 
 もっと気落ちしていると思ったのに、マリナは相も変わらず厳しい表情を浮かべている。それでも長年共に過ごしていたアインにはわかった。これは虚栄だ。

「アイン、あなたは若いわ。だから同情と愛情をはき違えているのよ」
「……姉さんこそ、僕の気持ちを勝手に決めつけるのはやめてくれないか」

 そう抗議すると、マリナは目を丸くする。何かを彼女に口答えするなんて、はじめてだった。

「……アイン、どうしたの」
「……初めから僕と結婚していればよかったんだ。僕なら、マリナ姉さんに悲しい思いなんてさせない」
「あなたは昔から優しいのね。けれどもダメよ。同情でそんな決断をしたらきっと後悔する……」
「後悔なんてしない!僕はもう大人なんだ。それに、僕はずっと昔から、マリナ姉さんのことが好きなんだよ……!」

 マリナは驚いていたが、やがて観念したように微笑むと、「ありがとう」と言ってくれた。

 少しやつれた体を抱きしめる。マリナは瞠目するが、抵抗はしなかった。アインは優しく、触れるだけの口づけをする。

「……私も、あなたのことをただの弟のような存在だとは思っていないわ。もう、ずっと前から」

 もう一度唇を重ねると、今度は舌を差し入れる。驚いたのかマリナは小さく肩を震わせたが、受け入れてくれた。

「んっ……ぁ、んぅ……」

 くちゅりと水音が響く。甘い吐息と共に漏れ出る声が愛おしくてたまらない。潤んだ瞳が弱弱しくて艶めかしい。もっと深くまで知りたい。彼女の全部を知り尽くしたい。けれども彼女は病み上がりなのだ。アインは名残惜し気に口を離すが、マリナはアインを離してくれなかった。
「マリナ姉さん」
「……私、あの屋敷でずっとさみしかったの。夫も、私のことを省みてくれなかったから」
マリナはそう寂しげにほほえんだ。
「だからかしら、あなたに甘えたくてたまらないの……。こんなの私らしくないわよね」
恥ずかしげにうつむき、視線を逸らす。そんないじらしい仕草に胸の奥がきゅっと締め付けられるような気がした。
「じゃあ今日はたくさん甘えていいよ。僕の前では我慢しなくていい」
「アイン……」
アインは彼女をベッドに押し倒す。そしてそのまま覆いかぶさった。
「姉さん、愛してるよ。あんな最低な男のことなんて忘れさせてあげる」
「……うん」
再びキスを落とすと、今度は服の中に手を滑り込ませた。
「待って、だめ……ッ」
 制止の声を無視して一糸まとわぬ姿にする。薄明りの中でもわかる、痛々しい傷が背中に見えた。
「み、見ないで……。醜い傷でしょう?」
「醜くなんてないよ」
 アインが傷跡にキスを落とすと、マリナは泣きそうな顔になった。
 「……ありがとう」
 「マリナ姉さん、辛いこと全部忘れていいんだからね」
 アインはマリナの豊かな乳房に触れる。頂はすでに固くなっていた。指先でつまんで刺激すると、マリナが小さく喘いだ。
「あっ……あ、アイン……んっ……」
「気持ちいい?」
「わか、らない……でも、変な感じ……。こんなに優しく触られたことなんてないんだもの」
未知の感覚に戸惑っているようだ。それでも体は正直で、胸の頂は固さを増して真っ赤に熟れている。それが可愛らしくてつい苛めたくなる。口に含んで転がすと、マリナの口から一際高い声が上がった。
「ひゃう!♡」
「可愛い。ここ舐められるとどんな気分になるの?教えて」
「ぞわぞわしちゃうの……乳首吸われるとびりびりするのぉ……!♡」
いつもの気高い彼女が、自分の手によって乱れていると思うとぞくぞくした。もっともっとこの人の乱れる姿が見たい。
「ふふ、姉さんのおっぱいすごく柔らかい。それに感度もいいみたいだね」
「言わないでぇ……!恥ずかしいからぁ……!」
マリナの顔は羞恥心からか赤く染まっている。その表情はたまらなく淫靡だった。
「でも、ここはもっとしてほしいって言ってるよ」
下腹部に手を伸ばすと、そこはすでにぐしょ濡れになっていた。軽く触れただけで、マリナは甘い声を上げる。
「ふぁ……!?♡やだ、そんなところ……汚いわ……」
「大丈夫だよ。姉さんの体で汚れたところなんて一つもないんだから。ねえ、どうされたいの?どうしたら一番気持ちよくなれるか、僕に教えて……」
耳元に囁くと、マリナはこくりと喉を鳴らした。
「アインの、好きにして……」
「わかった。僕のこともいっぱい気持ち良くしてね」
ショーツを脱がせて足を開かせると、秘部があらわになった。そこは物欲しげにヒクついている。
「綺麗……」
思わずそう呟いていた。慎ましやかな割れ目に、小ぶりだが形の整った陰核、そして蜜壺からはとろとろと愛液が溢れ出ていた。
「あまり、じろじろ見ないで……!」
「ごめんね。マリナ姉さんのここがあんまりにかわいいから」
「もう……」
マリナが恥ずかしそうに目を逸らす。その様子が愛らしくて、アインはゆっくりと顔を近づけた。
「ああ、すごい匂い……」
鼻腔に広がる濃厚な女の香りに頭がくらくらする。誘われるように舌を這わせると、マリナが甲高い悲鳴を上げた。
「ひゃうっ、な、なにして」
「姉さんをもっと気持ちよくしてあげる」
「そ、そういう問題じゃ……!」
抗議の声を無視して、アインは夢中になってマリナの花芽をついばむ。
「はむ、んちゅ……まりなねえさんのここ…おいしいよ……」
「ばかぁ……!そこで喋っちゃだめ……!」
ぴちゃ、じゅぷ、という卑猥な音がいやに大きく聞こえる。マリナは顔を真っ赤にしてふるふると震えていた。
「もしかして、感じてるの……?」
「ちがう……!そんなんじゃないわ」
「嘘つき。だってほら、こんなにどろどろじゃないか」
アインは意地悪く笑って膣内に指を挿入する。すでに十分すぎるほどに潤っていたそこは、すんなりとそれを受け入れた。
「ふあ……!♡」
「姉さんはやっぱりかわいいね。もっといじめたくなってしまうよ……」
「あんっ、あっ……!♡」
マリナの中は熱くうねっていて、とても狭い。ここに自分のものを挿れたらどれだけ心地よいだろう。想像するだけで達してしまいそうだ。けれども彼女に負担をかけるわけにはいかない。十分に慣らさなければ。アインは指を差しいれ、ゆっくりと動かした。
「姉さん、痛くない?」
「だいじょうぶ……もっとあいして……」
マリナの理性はすっかり溶けてしまったようだった。アインは内壁を擦りながら、時折花芽を刺激する。するとマリナは腰を浮かせて善がった。
「あ、あっ……!♡それ、すきぃ……!♡」
「姉さんはこれが好きなんだね」
「あぅ!♡きもちいいの……!もっとしてぇ……!」
マリナはいやらしく腰を振り、快楽を求める。その姿は普段の彼女からはとても考えられないものだった。けれどもそんな姿すら愛おしい。アインは興奮を隠しきれず、自身も衣服をすべて脱ぎ捨てた。
「姉さん、挿れてもへいきかな」
マリナはアインのものに触れた。それは既に固く張り詰めていて、脈打っている。
「うん……きて、アイン……」
マリナは自ら足を開き、アインを受け入れる体勢をとる。そして誘うように両手を広げた。
「おいで……」
「姉さん……」
アインは自身をマリナのそこに押し当てると、ゆっくりと侵入していく。彼女の中は狭くて熱い。そしてきゅうと絡みつくようにうねっていた。
「はぁ……ぜんぶ、はいったよ……」
「うれしい……」
マリナは幸せそうな笑みを浮かべる。そんな彼女の額にキスを落としてから、アインは抽送を始めた。
「だいじょうぶよ、アインの好きなようにうごいて……?」
「うん……姉さんも、たくさんきもちくなってね」
「んっ……!♡」
アインは徐々に腰の動きを速めていく。やがてパンッ、パンッと肌がぶつかり合う音が響くようになった。
「んっ……!姉さんのなか、すごくきもちいい……!」
「あぅっ……!♡わた、しも……きもちいい……!♡」
マリナはとろんとした顔でこちらを見つめている。その瞳は情欲に染まり切っており、扇状的だった。
「んっ、ちゅ……んぅ……♡」
キスをしながら腰を打ち付けると、結合部からは愛液が飛び散った。お互い限界が近いようだ。
「んっ、んぅ……!♡アイン、わたし、もう……!」
「僕も……一緒にイこう……?」「んっ、あっ……!♡」
アインはマリナの膝裏を抱えて、更に奥深くまで貫いた。子宮口をこじ開けるような激しいピストンに、マリナの体が仰け反る。
「あっ!♡おくまできたぁ……!♡」
「はぁ、はぁ……!出る……!♡」
「出して……!♡いっぱい注いで……!♡」
「姉さん……!♡」
「アイン……!♡」
二人は同時に果てる。そしてほぼ同時に達したアインのものは、大量の精液を吐き出した。

「あ……あ……♡あつい……♡」

 マリナの秘部からは入りきらなかった白濁が流れ出ている。その光景に再び欲望が湧き上がってくるが、これ以上無理をさせるわけにはいかない。

「姉さん、大丈夫……?辛くない……?」
「ええ、平気よ……」

マリナは力なく微笑むと、アインの首筋に腕を回した。そしてそのまま引き寄せられるようにして唇を重ねる。

「……これからは、ずっとアインが側にいてくれるのね」
「うん。姉さんのこと、絶対に離さないから」
「ありがとう……。私、今すごく幸せよ」

 マリナは幸福そうに笑う。

 ――ああ、この人を一生守っていこう。たとえ何があっても。
 アインは強くそう誓ったのだった。
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