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第一章
彼と私
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ーーーーーーーーーーーーー………
私は、生まれてすぐに親に捨てられた孤児だった。
名前も生年月日も親もわからない私は、戸籍を取得することができなかった。
施設で暮らし数年が経過してからも、友達の輪に溶け込むことが苦手な、すこし臆病な性格で、部屋の中で一人で過ごしていることが多かった。
ある日、私と同じ年齢の5歳の男の子が施設にやってきた。
明るくて優しい恭平という名の男の子は、すぐに施設の人気者になった。
当時私は極度の人見知りで、新しく入った恭平との接点はほとんどなかったのだが、ある日、彼と私の関係性が変わる出来事があった。
私は階段から足を滑らせ、膝を怪我してしまった。
施設内の医務室に行くと、そこには看護師と何故か泣いている恭平の姿があった。
いつも明るい恭平の涙を見て驚いたのと同時に、察しのいい私は、彼が怪我などで泣いているのではなく、悲しいことがあったのだと理解した。
看護師が私の傷の手当てをした後、包帯がないことに気づき、医務室の奥の部屋に行った。
ほんの一瞬だったが、私はソファに座っている恭平に駆け寄り、彼の頭を撫でた。
恭平は、私が近づいてきたことに驚いたようで、涙がすぐに止まった。
「小春ちゃん?」
「……よしよし」
「…え、あ…」
「…元気になあれ」
私は初めて彼の前で言葉を発した。
すぐに看護師が戻り、「小春ちゃん、優しいねー。良かったね、恭平くん」と、微笑ましく私たちを見つめていた。
膝に包帯を巻いてもらうと、私は何事もなかったかのように女子部屋に戻った。
翌日から恭平は、何度も私に話しかけるようになった。
「小春ちゃん、お絵かき上手だね。これお花でしょ?」
「………うん」
「外にお花があるから、一緒に見に行こう」
「…うん」
相変わらず応答は最小限だったが、恭平の優しさを少しずつ受け取るようになった。
ーーーーーーーーー…………
「小春!宿題見せて!」
「いい加減、自分でやってよ……」
小学生になった私たちは、施設で生活しながら、近くの同じ小学校に通っていた。
戸籍も住民票もない私の特殊な事情を知った校長が、教育委員会に直接交渉し、長い時間をかけなんとか入学を許可された。
小学一年生の夏休み、恭平に養子縁組の話があり、恭平はその家庭に何度か泊まりに行っていた。
恭平は、それまでにもいくつかの家庭から声がかかっていたが、条件が合わず上手くいかなかったらしい。
ようやく家庭に入ることとなったが、環境の変化を最小限に抑えるため、小学校は転校しないこととなった。
恭平と関わる時間は少なくなったが、あまり関係性に変化はなく、相変わらず私のことを何かと気にかけてくれていた。
高学年になるにつれ、私は漠然とした焦りが募っていった。
いつか自分も優しい親の元に行けるのだと信じていたが、待っているうちに、他の孤児たちも続々と施設を去り、いつしか私は施設の中で最年長になっていった。
性格も暗く愛嬌もない私は、どの家庭からも声が掛からず、時間だけが過ぎていった。
私は、そのうち家族を諦めるようになった。
私は、生まれてすぐに親に捨てられた孤児だった。
名前も生年月日も親もわからない私は、戸籍を取得することができなかった。
施設で暮らし数年が経過してからも、友達の輪に溶け込むことが苦手な、すこし臆病な性格で、部屋の中で一人で過ごしていることが多かった。
ある日、私と同じ年齢の5歳の男の子が施設にやってきた。
明るくて優しい恭平という名の男の子は、すぐに施設の人気者になった。
当時私は極度の人見知りで、新しく入った恭平との接点はほとんどなかったのだが、ある日、彼と私の関係性が変わる出来事があった。
私は階段から足を滑らせ、膝を怪我してしまった。
施設内の医務室に行くと、そこには看護師と何故か泣いている恭平の姿があった。
いつも明るい恭平の涙を見て驚いたのと同時に、察しのいい私は、彼が怪我などで泣いているのではなく、悲しいことがあったのだと理解した。
看護師が私の傷の手当てをした後、包帯がないことに気づき、医務室の奥の部屋に行った。
ほんの一瞬だったが、私はソファに座っている恭平に駆け寄り、彼の頭を撫でた。
恭平は、私が近づいてきたことに驚いたようで、涙がすぐに止まった。
「小春ちゃん?」
「……よしよし」
「…え、あ…」
「…元気になあれ」
私は初めて彼の前で言葉を発した。
すぐに看護師が戻り、「小春ちゃん、優しいねー。良かったね、恭平くん」と、微笑ましく私たちを見つめていた。
膝に包帯を巻いてもらうと、私は何事もなかったかのように女子部屋に戻った。
翌日から恭平は、何度も私に話しかけるようになった。
「小春ちゃん、お絵かき上手だね。これお花でしょ?」
「………うん」
「外にお花があるから、一緒に見に行こう」
「…うん」
相変わらず応答は最小限だったが、恭平の優しさを少しずつ受け取るようになった。
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「小春!宿題見せて!」
「いい加減、自分でやってよ……」
小学生になった私たちは、施設で生活しながら、近くの同じ小学校に通っていた。
戸籍も住民票もない私の特殊な事情を知った校長が、教育委員会に直接交渉し、長い時間をかけなんとか入学を許可された。
小学一年生の夏休み、恭平に養子縁組の話があり、恭平はその家庭に何度か泊まりに行っていた。
恭平は、それまでにもいくつかの家庭から声がかかっていたが、条件が合わず上手くいかなかったらしい。
ようやく家庭に入ることとなったが、環境の変化を最小限に抑えるため、小学校は転校しないこととなった。
恭平と関わる時間は少なくなったが、あまり関係性に変化はなく、相変わらず私のことを何かと気にかけてくれていた。
高学年になるにつれ、私は漠然とした焦りが募っていった。
いつか自分も優しい親の元に行けるのだと信じていたが、待っているうちに、他の孤児たちも続々と施設を去り、いつしか私は施設の中で最年長になっていった。
性格も暗く愛嬌もない私は、どの家庭からも声が掛からず、時間だけが過ぎていった。
私は、そのうち家族を諦めるようになった。
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