「月が太陽と眠る夜」 〜出自が分からず無戸籍の孤児として育った小春の前に現れたのは、日本王国の王子の兄弟?!〜

みなみ

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第一章

彼と私

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ーーーーーーーー…


「学校側にも先に話しておきたいから、第一志望は、他の子達よりも早く決めるのよ。あと勉強はきちんとしておきなさい」



そう私に告げたのは、この施設の管理者である川崎施設長だ。


川崎施設長は、私が生まれて間も無く施設の玄関に置き去りにされた時に、私を見つけた人でもある。


川崎施設長は、まだ一職員だった当時からずっと施設で働いていて、現在は施設長として、身寄りのない子ども達のお母さん役も担っている。




そして迎えた中学生3年生の受験シーズン。


川崎施設長の予測通り、ここでも無戸籍のハードルに直面した。


小中学校ですら特別な許可がないと入学できなかった経験があるため、施設長も早い段階から志望校や関係機関に話をしに行っていた。


今回の高校受験ができるのか、入学できるのかは、学校側の判断となるのだ。




有名な進学校にも合格できる実力がないと、高校受験も厳しいかもしれないと思い、努力を怠らなかった。


必死になって勉強した結果、学校の中でもトップクラスの成績を取れるようになっていた。






しかし、無情にも、高校の受験は叶わなかった。


私は進路を就職に切り替え、正社員、派遣、パートなど業種問わず応募した。


中卒というだけでも難航するが、そこに施設育ちであること、戸籍や住民票がなく通常の雇用とは違うと分かると、壁はさらに高く、とうとう卒業まで進路が決まらないという結果になった。



施設長の計らいで、施設でアルバイトとして働くことになったが、当然、就業者は施設を離れる必要があり、私は施設の名義でアパートを借りて一人暮らしをすることになった。


すべての孤児に、施設での就労の機会が与えられるわけではないことから、あくまでも特例であり、一時的な雇用であることは理解していた。


施設で働きながら、何度も他の企業の面接を受け続けたが、どの企業も無戸籍であることを嫌い、新しい就職先はなかなか見つからなかった。






私にとって一番辛い時期に、恭平は私を心配してアパートを訪れてくれていた。



「小春、今日もアパート寄るから、待っててな!」


恭平は高校から寮に入り、土日に自宅に帰省する生活になっていて、帰宅前に私のアパートに数時間だけ寄ることが多かった。



「小春、ケーキ買ってきたから食べよう!寮は甘いものが全然出てこないから、食べたくなるんだ!」


「私の分まで、ありがとう」


「実は、俺、夏休みに短期留学でイギリスに行くことになったんだ。お土産何がいい?」


「留学なんて、すごい羨ましいな。お土産は…うーん、次までに考えてみるね」


「おう!それでな……」




恭平は、いつも楽しそうに学校での出来事を話した。


恭平は話上手で、私もその話を聞き学校生活を想像しながら、楽しませてもらっていた。


しかし、恭平が帰ると、私は毎回、切ない気持ちに苛まれていた。


何の不自由もなく学校に通い、様々な経験を積み成長する恭平に比べ、施設でのアルバイトを淡々とこなし、就職試験には落ち続け、存在を否定され続けていた私。




なぜ、私だけ、こんなにも不幸なのだろうか。



そう思わざるを得なかった。





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