「月が太陽と眠る夜」 〜出自が分からず無戸籍の孤児として育った小春の前に現れたのは、日本王国の王子の兄弟?!〜

みなみ

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第一章

花と絵

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施設で働き2年が経ち、依然として新しい職を探していたところ、とある生花店を見つけた。


それが、私が今働いている花屋だ。



当時、社長が腰を怪我して長期で入院しており、人手が必要だったそうだ。


私は通常の雇用ではなく、いわゆる家事手伝いのような扱いで、社会的にはとても働いているとは言えない形だった。


とはいえ、家賃もかからず、生活に必要なアルバイト代も貰えることになり、長く就職活動に苦しんだ私は天にも昇る心地だった。



私は、採用と同時に社宅であるアパートに引っ越し、人手の足りない花屋ですぐに働き始めた。




幼い頃から花を描くことが好きだった私は、フラワーアレンジメントの虜になり、アレンジを考案してはスケッチブックに書き溜めた。


そして、売れ残った花でアレンジを作り、そのうち実力を評価され販売できるようになった。













「小春!遊びに来たぞ!」


「恭平、…あ、お友だち…?」


「「こんにちは!」」


恭平は週末になると、花屋に寄ってくれるようになった。


恭平の通う学校は全国的にも有名な進学校で、数人が制服姿で歩くだけでとても目立っていた。




「同い年なのに、もう働いてるなんて、尊敬します!」


「恭平の彼女は、本当に花の似合う人だな」


「ただの幼馴染って言ってんだろ!」




仲良し三人組は青春そのもので、エプロン姿の私との間には、すでに大きな社会の格差が表れているようだった。
 





「小春ちゃん、ごめんね。急に注文が入ったの。アレンジお願いしてもいいかしら?」


「はい。すぐに作りますね」


花屋の奥様から声がかかり、恭平とその友人も忙しさを察して、帰っていった。





「小春ちゃん、いつか見返してやりなさい」


「え?あ…」


「私は、あなたの才能をちゃんと分かってくれる人がいいと思うわよ。まあ、あの子も悪い子じゃないだろうけど」


「…あ、あはは…そうですね…」



私の気持ちを代弁するかのような奥様の発言に、私は笑って誤魔化すことしか出来なかった。






私は花屋が休みの日、夕方から翌朝まで施設で過ごし、ボランティアで子ども達の面倒を見ていた。



「先生、私のお母さんはどこにいるの?」


「会いたくて寂しくなったのかな?」


「うん、会いたいの…」


親のいない孤児を見守ることは、容易なことではない。


かつて私がそうだったように、この子たちも不安定な感情を持っている。


急に泣き出す子もいれば、他の子に危害を加えそうになることもしばしばある。





そんな子どもたちと触れ合う機会を、少しでも増やしたいと、私は様々な策を考えてきた。


私とって一番手軽にできたことが、花に触れることと、絵を描くことだった。




花屋で売れ残った花を施設に持ち込んでは、子どもたちと一緒に、フラワーアレンジメントをしたり、花束を作ったりして楽しんだ。


もちろん、それだけで心の安定を与えられるわけではないが、少なくとも花に触れる瞬間だけは、子どもたちも没頭できるのだ。



「小春先生、またお花持ってきてね!ピンクの花と黄色のお花!」


「分かった、また来週ね!」




そして、私が花を持ってくることを楽しみに待ってくれるようになり、私もますます嬉しくなった。






親を失う悲しみを味わったこの子たちが、どうか幸せな人生を歩んでほしい。


そして、幸せを掴むまで、私が支えたい。


それが、私の生きる意味になっていた。






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