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第一章

王国と手紙

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「小春ちゃんに郵便物が届いていたよ」


「私に郵便物が…?」




花屋の社長が、帰宅間際の私に声をかけた。


これまで働いてきて、一度も私宛の郵便物が届くことは無かった。一体誰からだろうか。


封筒の裏側を見ても送り主が書かれていないが、私宛てであることは間違いないようだ。


勤務先まで知られているということは、知り合いか。想像力を働かせてみたが思い当たる節はない。




私は封筒の上部をハサミで切り、封筒の中身をゆっくりと取り出すと、中には、さらに上質な封筒が入っていた。


白い和紙でできた上品な封筒には、見慣れない家紋と文字が印字されていた。





「日本王室…?」






世界戦争が勃発し混乱の時代となった2xxx年。他国からの侵略を阻止したことで民衆からの絶大な支持を受けた人物が、後に君主となり、今日の日本王国を作り上げた。


いまでも王室が存続し、日本の国防と世界一と言われる経済発展を成し遂げ、多大なる功績を残した国王が君臨している。






王室から封書が届くとは、一体、何事なのか。


開封することが急に怖くなり、ポケットに仕舞い込んだ。


仕事を終えると、封筒を自分のバッグに大切に入れ、足早に自宅へと急いだ。


自宅へと到着すると、私はバッグの中から例の封筒を取り出し、恐る恐る開封し、中で三つ折りにされている封筒を手に取った。




『王室特定支援事業にかかる無戸籍者の調査について』



私は、表題を読むと一瞬眉をひそめたが、一言も声を発することなく続けざまに本文に目を移した。


内容を要約すると、王室が、様々な問題を抱える国民を支援することを目的として、この度初めて社会で取り残されている無戸籍者の調査を行うこととなった、というものだ。



王室が難病や災害の被災者等に対し、慰問したり金銭的な援助をしていることは、たびたびメディアでも取り上げられており、驚くことはあまりない。


ただ、私自身が無戸籍であることや、職場まで把握していることに、不安を覚えた。







生まれてからこの方、だれでもない自分と向き合ってきた私だけがわかる、やり場のない不安感だ………ーーー。



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