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第一章

王国と手紙

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宮殿の豪華な門の横には衛兵が4人立っており、私が王国からの手紙を見せると、大きな正門の横にある小さな通用門を開き、中にある護衛室に通されボディチェックと入館手続きを済ませた。


ここまで入れたことで、この手紙がいたずらではなく本物の文書であったことが判明し安堵する。


遠くには、すでに荘厳な存在感を放つ建物がいくつか見えているが、それぞれは数百メートル離れている。


衛兵の誘導で、とある宮殿までの広い庭園の長い長い道を歩き、ようやく建物にたどり着いた。



大きくて重そうな玄関の扉が開くと、さらにセキュリティチェックされ、携帯電話、財布が入った鞄など、持ち物全てが没収された。


やはり宮殿がテロの標的になり得ることを考えると致し方ないと、自分を納得させる。





玄関ホールから廊下を通りある部屋に案内され、しばらく待つように指示された。


高級そうなソファーとテーブルがあり座って待っていると、秘書のような女性にお茶とお菓子まで出された。


5分ほどすると、コンコンッとノックする音が響き、扉が開くとスーツを着た男性が入室し、私は咄嗟に立ち上がった。




「ようこそ、おいでくださいました。どうぞ、ご着席ください」


男性は私に名刺を渡し、対面するようにソファーに座り、簡単な世間話をすると、本題の無戸籍の調査について説明した。


話を聞くと、この男性は今回の調査の担当官で、全国の自治体が把握している無戸籍者の人数を調査するとともに、ランダムに抽出した無戸籍者に聞き取り調査を行なっているそうだ。


私は、無戸籍になった経緯や、幼少期から現在に至るまでの生活の状況、困ったことなど、赤裸々に語った。


2時間に及ぶ聞き取り調査を終えると、担当官はお土産にと、お菓子の入った紙袋を私に手渡した。


担当官は、調査の結果などはまた通知すると言って私を見送ると、案内を衛兵に引き継いだ。






しっかり無戸籍の実情をわかってもらえただろうか、調査をきっかけにして戸籍を得ることができるだろうか。


調査後も、そんな思いが心を埋め尽くした。







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