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第一章
支配者と札束
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「嬉野様、珀斗王太子が1週間ぶりに戻られましたので、ご挨拶に行ってみませんか?」
担当官からの提案だった。
あまり気が乗らないが、呼び出されて急に行くよりは先に行っておいた方が印象がいいだろうと、一人で王太子の部屋に足を運ぶことにした。
「失礼します…」
担当官が同行していないので、控えめなノックをしてそっと入室した。
「!! すみません!あ、お帰りなさい。いや、あの…ごめんなさい!出直します…」
王太子は帰宅後すぐに入浴していたようで、腰にタオルを巻いているだけの状態で、バスルームか出てきたところだった。
その姿を見て恥ずかしさからパニックになり、自分から声をかけてしまい、さらに逃げようとしていた。
「待て。そこに座ってろ。」
王太子に引き止められ、仕方なくソファに座る。
また怒られるのではないかと、怯えながら静かに王太子を待つ。
王太子は、バスルームに戻り、着替えを済ませて、またリビングに現れた。
「急にどうした」
「い、いえ、お戻りと聞いたのでご挨拶に…」
「…そうか。留守中、何かあったか」
「い、いえ。普段どうり進講を受けておりました」
私は、無難な回答をした。
王太子の留守中に、幼馴染の恭平と会ったこと、そして警備の担当となったことを伏せた。
「来週、国王陛下と王妃殿下と面会が入った。」
「こ、国王と王妃にお会いできるのですか?!」
「はあ…。敬称もきちんと使え。国王陛下と王妃殿下だ」
「あ…、も、申し訳ございません…」
王太子の呆れた様子に、私は慌てて謝罪した。
国王と王妃は子供の時からよくメディアに取り上げられており、お会いすることは国民にとっての栄誉でもある。
もちろん、結婚の話が出てから、いつかはお二人に会う機会があるものだと思っていたが、こんなに早く実現できるとは驚きだった。
「粗相があっては困る。分かっているな」
「はい…」
血の繋がった家族のはずなのに、王太子自身が、国王と王妃に対して粗相があってはならないと思っているところが、やはり王族ならではの厳しさなのかと感じた。
「それから婚約の発表は半年後だ。それまでに世に出ても恥ずかしくないよう勉強しておけ」
「はい、殿下…」
王太子の表情からは喜怒哀楽が全く感じられず、私も何の感情も持っていないふりをするしかなかった。
「結婚しても、俺はお前に対して特別な感情は抱かない。お前も、俺のことは嫌ったままで構わない」
「…はい、殿下」
王太子は、はっきりとこの結婚に愛はないと言い切った。
私もそうだと分かっていたのに、直接言われると途轍もなく傷ついてしまった。
もしかすると、少しずつでも、2人の関係に信頼や安心感が生まれ、愛が育まれていくだろうという期待があった。
これまでの孤独な毎日を、結婚で変えられるとどこかで望んでいた。
それが、彼の言葉によってはっきりと否定され、私の人生には一切の救いがないのだと落胆した。
担当官からの提案だった。
あまり気が乗らないが、呼び出されて急に行くよりは先に行っておいた方が印象がいいだろうと、一人で王太子の部屋に足を運ぶことにした。
「失礼します…」
担当官が同行していないので、控えめなノックをしてそっと入室した。
「!! すみません!あ、お帰りなさい。いや、あの…ごめんなさい!出直します…」
王太子は帰宅後すぐに入浴していたようで、腰にタオルを巻いているだけの状態で、バスルームか出てきたところだった。
その姿を見て恥ずかしさからパニックになり、自分から声をかけてしまい、さらに逃げようとしていた。
「待て。そこに座ってろ。」
王太子に引き止められ、仕方なくソファに座る。
また怒られるのではないかと、怯えながら静かに王太子を待つ。
王太子は、バスルームに戻り、着替えを済ませて、またリビングに現れた。
「急にどうした」
「い、いえ、お戻りと聞いたのでご挨拶に…」
「…そうか。留守中、何かあったか」
「い、いえ。普段どうり進講を受けておりました」
私は、無難な回答をした。
王太子の留守中に、幼馴染の恭平と会ったこと、そして警備の担当となったことを伏せた。
「来週、国王陛下と王妃殿下と面会が入った。」
「こ、国王と王妃にお会いできるのですか?!」
「はあ…。敬称もきちんと使え。国王陛下と王妃殿下だ」
「あ…、も、申し訳ございません…」
王太子の呆れた様子に、私は慌てて謝罪した。
国王と王妃は子供の時からよくメディアに取り上げられており、お会いすることは国民にとっての栄誉でもある。
もちろん、結婚の話が出てから、いつかはお二人に会う機会があるものだと思っていたが、こんなに早く実現できるとは驚きだった。
「粗相があっては困る。分かっているな」
「はい…」
血の繋がった家族のはずなのに、王太子自身が、国王と王妃に対して粗相があってはならないと思っているところが、やはり王族ならではの厳しさなのかと感じた。
「それから婚約の発表は半年後だ。それまでに世に出ても恥ずかしくないよう勉強しておけ」
「はい、殿下…」
王太子の表情からは喜怒哀楽が全く感じられず、私も何の感情も持っていないふりをするしかなかった。
「結婚しても、俺はお前に対して特別な感情は抱かない。お前も、俺のことは嫌ったままで構わない」
「…はい、殿下」
王太子は、はっきりとこの結婚に愛はないと言い切った。
私もそうだと分かっていたのに、直接言われると途轍もなく傷ついてしまった。
もしかすると、少しずつでも、2人の関係に信頼や安心感が生まれ、愛が育まれていくだろうという期待があった。
これまでの孤独な毎日を、結婚で変えられるとどこかで望んでいた。
それが、彼の言葉によってはっきりと否定され、私の人生には一切の救いがないのだと落胆した。
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