異世界でのんびり暮らしたい!?

日向墨虎

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第一章 幼少期

3.探検

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 探検に行くと決めたが方法は…。

 エリアに両手を伸ばして抱っこをせがむ。

 「あうーぶーうー!(探検に行きたいー!)」

 おっ!抱っこしてもらって部屋を出るぞ。通じたようだ。
 居間と食堂と裏庭のテラスと玄関は行ったことがあるけれど、他の部屋は入ったことがないんだ。
 いざ!探検に出発だ!

 そうして過ごした何日かの、お散歩という名の探検結果をお知らせしよう。

 我が家は、近世ヨーロッパの貴族の屋敷のように、広い中庭を囲むような石造りの建物から、南面の表玄関を囲むように両翼に建物が続いている。
 
 北側と西側は倉庫や使用人の居住区で、一階には厨房や水回りが集中している。
 東側の一階に家族の居間と食堂があり、二階に兄姉と私の部屋があり、三階は専属の侍従や侍女の部屋、執事や侍女長の部屋らしい。
 南面は一階にパーティーができる大ホール、晩餐室、応接室、遊戯室等がある。二階はすべて客室である。
 東翼の一階に図書室とお父様の執務室があり、二階にお父様とお母様の部屋がある。
 西翼は、今は領地にいらっしゃるお爺様、お婆様の居住区である。
 さらに、騎士団の詰め所と寮が西側に別棟として建っており、北西に厩、馬場、訓練場が広がっている。

 いったい何部屋あり、敷地はどれくらいなのだろうか…。
 掃除や庭の管理が大変そうだが、隅々まで行き届いていて、使用人達のプロの仕事に感心するばかりだ。

 これで、別邸だというから驚きである。
  
 侯爵家は王都の南東に広大な領地をいただいていて、その領都に本邸がある。
 今は、お父様にサッサと爵位を譲り隠居したお爺様が住んでおり、のんびりと領地経営を行っているらしい。
 お爺様は先の宰相なので、国の経営に比べれば領地経営はのんびりという表現がピッタリのようだ。
 
 これらも、エリアに探検中に教えてもらったことだ。
 そしてついに図書室に行くことができた。

 重厚な扉の向こうには、高い天井まで続く本棚の群れ。シンと静まり返った空気と少し古ぼけたインクの匂い。
 あーっ。この空気感は好きだなぁ…。
 前世は、休日に本屋や図書館に通ったもんだ。
 重い内容の小説は避けていたが、それ以外は雑食といっても良いくらいには何でも読んだ。ラノベがダントツで多かったけど~。
 本棚が連なるその空間が、なんとも落ち着いて気持ちがほぐれるので一日中過ごすことも多かった。
 生まれ変わっても、やっぱり好きなんだなーとワクワクする気持ちが抑えられない。

 「うーっ、ぶーわーっ!(さあ、本を探しましょう!)」

 高揚感でほっぺを朱くして指さす私。
 残念ながら、指差しはまだできないので、腕を前に伸ばしているだけ…。

 さて、文字を覚えるために最初は絵本だよね。

 『はじめてのことば』・・・そのまんまじゃないか。
 『くにのれきし』・・・・・この国の歴史か?
 『まほうにゅうもん』・・・これこれ!!
 『ゆうしゃとりゅうおう』・おー?勇者?竜王?

 エリアに選んでもらった本を借りて部屋に帰り、何度も読んでもらう。
 もう少し大きくなるまで、図書室での読書はダメなんだって。シクシク…。
 お絵かき用の紙とペンも用意してもらい、誰もいない時間に文字を書いて覚える。
 小っちゃい手だと書きにくいが頑張るんだ。
 持ち方はグーだ! 多少持ち方が変でも仕方がない。成長してから直すしかない。
 書いて書いて書いて………をできるはずもなく、ゆっくりと覚えた。
 二ヶ月で国語の読み書きは完璧にできるようになった。
 たとえ、紙いっぱいにぐちゃぐちゃの何かわからない線が書いてあるだけでも、エリアは『アル様、うまいですねぇ。何描かれたのですか?』と聞いてくるので、『ぶーっ』と外を指しておく。
 どう見ても”文字”でも”絵”でもないな。
 きっと大丈夫だ! 脳みそは『書くこと』をちゃんと覚えた……はず?

 その間も<鑑定>は続けており、鑑定できる回数も増えているから、魔力量は増えていると思う。
 絵本を卒業し、借りてきた物語や歴史書、魔法書を夜密かに読んでいく。

 『まほうにゅうもん』にも初級魔法が載っていたので、灯りは練習してできるようになった。
 だから、夜、布団の中で灯りをともして魔法書を読んでいる。
 どうしてか、部屋の灯りを小さくつけて読んでいると、エリアがすぐに気づいちゃうんだ。

 魔法の発動には、詠唱が必要だって書いてあったけれど…。
 まだしゃべることができないじゃないか……〈へにょり〉
 一度、やってはみたんだ。

 「あー、ばぶーぅ。はうーぅ!<闇を照らす光よ、この手に集え。ライト!>」

 ばぶーはうーでも、できたことはできた。
 掌の上に、小さな灯りが浮かんでいた。
 できたことは素直に嬉しい。
 初・魔法なのだから、もちろん非常に嬉しいんだ。
 でも、詠唱文は……恥ずかしい…。ものすごーーーくっ恥ずかしい!!!
 だって精神年齢〇十歳だもん。

 なので、ラノベ的に日本人ならいけるんじゃないかと無詠唱でやってみた。

 <ライト!>

 ほっほ~い!できた!できたよ~!!
 同じように掌の上に灯りがともった。
 よし。これからは、全部の魔法を無詠唱で発動できるようにするよ~!
 詠唱文は中二的で、私にはハードルが高かったから、やめっやめっ!

 それから使えるようになったのは、初級魔法の四つだけ。
 部屋の中だから、火や地はまだ試していないんだ。

 =====

 【 ラ イ ト  】:灯りをともす。
  小さくて暗かったのでやってみたら、大きさと強さの調節は可能になった。
 【 ウインド 】:風をおこす。
  一瞬ビュンて吹いたので、これも練習した。
  強さと吹く時間の調節ができるようになった。
 【ウォーター】:水を出す。
  たくさん出ると水浸しになるので、慎重すぎてチョロっとしか出なかった。
  これも量の調節は可能になった。コップからちょっと溢れちゃったのは内緒だ…。
 【  ヒ ー ル  】:軽傷を治す。
  魔法の発動が嬉しくて、ベッドの柵にぶつけてたんこぶを作ったのでやってみた。
  疲労も回復するような気がする。これはまだ検証ができていない。

 =====

 さすがに赤ちゃんの脳みそはすごい。
 スポンジが水を吸うように、新たな知識を吸収していくので自分でも驚いている。
 毎日が楽しい。
 
 魔法書はまだ初級だが、その中に魔力量の最大値についての記述があった。

  ***魔力量の最大値について***
 魔力量は成人になるころに最大値が決まる。
 成人を迎えるまでに、限界まで使うことによって魔力量を増すことができると考えられる。
 しかし、限界まで使用するということは死と隣り合わせである。
 この方法で魔力量を増すことは危険であるので古より避けられてきた。

 えーーーーーーっ!!!

 私、死ぬところだった???
 毎日やってるんだけど…?

 私の場合、なぜだか限界まで使ってもゼロにならないみたい…。
 不思議だけど、転生させてくださった神様のおかげかな?かな?かな?
 会ってないし白い空間も知らんからわからんけれど…。
 一応感謝しておいたほうがいいかなぁ…。
 
 (神様仏様ご先祖様、ありがとうございます!)

 やっぱり、(元)日本人はこれでしょ?!




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