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第一章
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しおりを挟む生まれてから一ヶ月ほど経った。
毎日は、母乳を飲んで、下の世話をしてもらい、とにかく眠る。これの繰り返しだった。
今生に限っては、生まれた時から自我があり、前生までの記憶もある。
なぜかなんてわからない。
だが、自我がある状態で、下の世話をしてもらうのは……、ツライ……。
なんとしても、早くにこの状況を脱したいと思う。
最近、やっと目が見えるようになって、周囲の観察に余念がないが、首が座っていないので、見える範囲は前方だけである。
今もベビーベッドに寝かされているため、天井から視線を動かせる範囲を見ている。
手足をバタつかせていると、傍らの相棒に触れた。
相棒は、ホワッホワの白金の髪に紫紺の瞳で天使のように可愛いんだ。
僕の双子だから、僕も同じ顔なのだろうか?
男女だから二卵性だろうし、似ているくらいかもしれない。期待しないでおこう。
ところで、双子の不思議だろうか、相棒に手が触れると思考が流れてくることがあるんだ。
今も、お腹空いたなぁって思っているらしく、もう泣き出しそうである。
「ほっ、ほぎゃ、ほぎゃぁ~! ほぎゃぁ~~~!! ほぎゃあ~~~~~!!!」
あっ、やっぱり泣いた…。
廊下から、足音が近づいてきた。
「あらあら、クリスタ様。ご飯の時間でしょうか?」
そういって入ってきたのは、乳母のエマである。
彼女は、母の侍女で、僕たちの一ヶ月前に出産していた。
続いて母も入ってきたようだ。
「あらぁ、ユリアーンは、まだお腹空かないのかしら?」
(いや、ペコペコだよ?)
「あぶー。あぶぶっ?」
「まあ、お腹空いたのー?じゃあ、おっぱい飲みましょうね?」
そうして、たっぷり飲んでゲップをしてから、おしめを換えてもらった。
……うん。忍耐だ。
妹のクリスティアーナも満足したらしく、もうウトウトしている。
母が子守唄を歌ってくれている。
赤ちゃんは寝てばっかりだな。また眠くなってきたぞ……ZZZ
それから三ヶ月ほど経った。
もう首も座って、寝返りもうてるし、ゴロゴロして部屋中移動できる。
お座りももう少しでできそうだ。お座りができたら、トイレも……フフフッ。
あるとき、夜中に目が覚めた。
電気のような小さな灯りがついている。
これは魔道具らしい。
魔道具があるということは、この世界には魔素があり、魔獣がいるということになるのだろう。
たぶん、魔道具には魔石を使っているはずだ。
過去の世界で、何度か魔法を使う世界があった。
そこでは、魔石は魔獣から採れるかダンジョンで採掘していたものが売られていた。
今度の世界も、もしかすると、魔獣がいたりダンジョンがあったりして、武器は剣や槍などを使うのかもしれない。
ちょっと、今生について考えてみよう。
生まれた時から自我があり、一部だろうが前生までの記憶があること。
男女の双子で生まれたが、髪の色と瞳の色以外は、顔から何から妹とソックリであること。
身体のどこかが触れている状態ならば頻繁に、強い感情ならば離れていても、妹の感情が伝わってくること。
それらから導きだしたのは、一卵性の双子じゃないかということ。
もちろん、地球の常識ではありえないから最初は戸惑った。
でも、世界が違うなら遺伝子、生物等も異なっていても不思議ではないと思う。ましてや、この世界では、僕らの種族も人間ではなく、人族なんだから。
そう頭を切り替えて考えてみると、僕らの場合、一卵性の双子というより、同じ魂を分けて生まれてきたと考えた方がいいようだ。
そうであるならば、転生を繰り返してきた前生の僕の魂が、二つに分かれたことになる。
だが、妹はまだ何も思い出していないように感じられる。
やはり三歳の時に記憶が甦るのだろうか…?
それとも、僕が生まれた時から前生までの記憶があるから、妹はそのまま思い出さずにいられるのだろうか?
できることなら、妹には、転生を繰り返してきた僕と同じ苦しみを抱えることなく生きてほしいと思う。
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