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第一章
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しおりを挟む屋敷から領主館の転移部屋に飛び、転移部屋を出ると、ドアの前に大きな男性が立っていた。
「ようっ! アドルフ! 久しぶりだな。元気そうじゃないか」
「ハイン兄上! お久しぶりです。兄上もお元気……ですね」
「おうっ! 見りゃわかるだろー」
「ハハハッ…。兄上は、お変わりないですねぇ~」
「それはそうと、お前の家族を紹介してくれないのか?」
「はっ、そうでした。私の家族を紹介しますね。
彼女が、妻のリーナです。そして、双子で兄のユリアーンと妹のクリスティアーナです」
父に紹介され、母はとても綺麗な挨拶をした。
僕とクリスタは、
「ユリアーンでしゅ」
「くりしゅたでちゅ」
「「おねがいしましゅ(ちまちゅ)」」
と元気よく挨拶をした。
今日のために、内緒でエマと練習をしてきたんだ。上手くいったー♪
父も母も驚いた後に、父はぎゅうぎゅう抱きしめてきて、母は嬉しそうに笑っていた。
(ちょっ! クリスタが潰れるだろう!)
父の腕をタップしていると、ハイン伯父さんが笑いながら僕たちを救出してくれた。
「ユーリとクリスタか。俺は、アドルフの一番上の兄のハインリッヒだ。よろしくな。
リーナ殿、アドルフと結婚してくれてありがとう。弟をよろしく頼む」
父がポヤポヤしている間に、伯父さんが勝手に自己紹介をしてくれた。
その後、サロンで大人はお茶を飲みながら話をし、僕らはグルショのジュースを飲んで部屋の中の探検をして過ごした。
昼食の時間には、お祖父さんとお祖母さんと父の二番目のお兄さんを紹介してもらった。
クリスタはごちそうに目が釘付けだったから、覚えていなさそうだ。
さて、昼寝の後に庭にやってきた。
母は晩餐の準備だそうで、エマもいないので父とギルに連れられている。
ここの庭は、どんだけ広いのっていうくらい広い! 領主館も何十部屋あるのかっていう大きさだし、騎士団の建物も厩舎も馬場も巨大な倉庫もあり、裏には畑や薬草園もある。
それらが、堅牢な城壁に囲まれているんだ。この城壁がごつい! とんでもなくゴツイ!! 厚みも高さもあるし狭間も見える。
この城壁が深遠の森と国境に臨むバッハム辺境伯領の砦か……と、シリアスな気分でナデナデしていたら、父が聞いてきた。
「ユーリ。城壁に登ってみるかい?」
おっ♪ それは良い。登ってみたいぞ。
「あい。のぼりゅ」
「りゅ!」
僕が返事をしたら、クリスタも手を挙げて返事をした。父は僕を抱き上げてさっさか階段を登っていく。後ろにクリスタを抱っこしたギルが続く。
城壁の上に出ると、向う側が二Mくらい高く等間隔で狭間が造られていた。こちら側は幅もゆとりがあるから、弓兵の待機も可能だろう。
狭間の間から領主館の外を覗く。
ここは、小高い丘の上らしい。
丘に続くなだらかな大地に、領主館を囲むように街が広がっている。
そして、その領都を遠目でもかなりゴツイ城壁が囲んでいる。
丘の上にあるから、領主館は敵から丸見えだろうが、領主館からも敵の動向が良く見えるだろう。
城下には戦うために計画的に造られた街が広がる。
この国の要の街……。
城壁の上で自分の思考に浸っていると、微かに音が聞こえた。
「……。………………」
ん?………………なんだ?
「---------!」
何? 何か聞こえたような気がするんだが、父達の様子だと違うようだな。
空耳か…?
でも、何かに呼ばれているよな、なんだかとても懐かしいような感じがしたんだ。
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