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第4章
20.殿下の心情
しおりを挟む【レオンside】
今、いったい何が起きたんだ?
今日は久しぶりに婚約者のユーナが学園に来ると聞いて正門で待ち構えていると、そう待たずにヴァランド侯爵家の家紋、花菖蒲が描かれた馬車が到着した。
開かれた扉から優雅に飛び降りた人は、レオンの知っている人ではなかった。
令嬢たちはいかに自分を綺麗に見せるかに盲目で、流行に遅れないように美しいドレスを新調しては着飾って男を魅了せんとしている。
甘い香りを漂わせて取り巻く彼女達をレオンは微笑ましいと思う。
それが、どうだろう?今降りてきたユーナはドレスを身に付けていない。男のレオンと変わらない紳士服を身に付け、腰まであった長く美しい髪は男のように短く切られていた。
中性的でもともと綺麗な顔だっただけに、男なのか女のか区別がつかないほどに神秘的な美しさをしたユーナに、レオンは一瞬息を飲む。
いや、我を忘れてはいけない。今日はリリスの為にもユーナに釘を差しに来たのだ。それなのに僕がユーナに投げ掛けた言葉は全く違うものになっていた。
「ユーナ、君の髪はいったいどうしたんだい?その格好も!一応、僕の婚約者という立場にあるのなら、もう少し令嬢達が憧れるような淑女にならないとダメなのではないかい?そんなに短くしては男にしか見えない。僕は婚約者として恥ずかしいよ」
確かに美しかった長い髪を切ってしまったのは残念に思った。でも、男のようで恥ずかしいなんて思っていなかった。短い髪でも彼女は美しかったから。
「あら、レオン様。ごきげんよう?体調を崩して休学をしていた婚約者に会って初めの言葉がその言葉なんて、とても紳士のなさることとは思えないわね?」
「…ッ!ユーナ、この僕に口答えをするのかい?」
そして返ってきた言葉に、条件反射で言い返してしまった。いくらリリスに意地悪をする相手でも、体調を崩していた女性に、しかも婚約者に投げ掛ける内容ではなかった。内心、反省をしていたレオンに、ユーナは更に痛いところを突いてきた。
「当然のことを言っただけですわ。それに、休学中にお見舞いの一つもして下さらない殿方など婚約者だとは思えませんわ」
この二週間、ユーナがいないのを良いことにリリスと時間を共にし、デートをしていた。頭の中はリリスのことでいっぱいで、ユーナのことを一ミリも思い出さなかったのだ。僕は何も言い返せなかった。
以前のユーナはこんなにも僕に対してハッキリと意見を言ってきていただろうか?いや、なかった。いつも聞き手に回ってくれて、レオンの言うことに助言はしても真っ向から物を言う人ではなかったのだ。
「…記憶喪失だと聞いたが、性格が変わりすぎではいないか?以前はもっと淑やかで、僕を立ててくれていた」
そう言った瞬間、ユーナの目が笑っていなかった。表情は笑っているのに、目だけが怒っていた。一度も怒ったことのなかったユーナが。
コロコロと鈴が鳴るような声で、ユーナは言葉の攻撃をしてくる。婚約者とは名ばかりに、好き勝手やっている僕への鬱憤と、僕でさえ気づいていなかったユーナへの執着を教えてくれた。
グルグルと回り始めた思考回路。いろんな事がありすぎて頭が回らない。それでもユーナが王太子妃になること、家格を理由にリリスを糾弾していることは分かった。
「…未来の王太子妃?気が早いねユーナ。僕は君と婚約者ではあるが、結婚をするつもりはない。婚約も父上が勝手に決めたものだ。リリスこそが僕の運命の相手なんだ!リリスを見下すのは止めて貰おうか!」
そう言葉にしつつも、ユーナが誰かの隣に立つ姿を想像をするのも嫌だと思った。これは独占欲だろうか?
そして、王が決定した婚約を破棄するという言葉が重く乗し掛かった。分かっていたつもりでいた。でも、心のどこかで父上は許してくれるのではないかという甘さを持っていた自分に気がついた。
僕は王命を破れるのだろうか?
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