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第4章
28.束縛と優しさと
しおりを挟む「そのつもりだよ。だって、心は男だよ私。体は女でも男と結婚することはできそうにないもの。だから、ライオス殿下のことも好きになることはできない。ごめんね」
ライオス殿下の手を両手でそっと握る。ゴツゴツとして硬い、剣を握る人の手をしていた。
「ユーナが男を恋愛対象に見れないと言っていたのは覚えている。でもな、侯爵家の令嬢が結婚しないのは難しいだろ。俺と結婚をするならお前を縛ることはしない。それでも、ダメか?」
握り返してくる力が少し痛かった。
「それでも、ダメよ。私は平民になったとしても、誰とも結婚はしない。これは変えるつもりはないわライオス殿下。だからレオン様も、私はリリス様との仲を裂くつもりはないし、婚約者としてこれから扱う必要もないわ。ですから、ライオス殿下と言い争うことも無意味ですわ。さ、いつまでも廊下にいては次の授業を受けれませんわ。皆様、教室に戻りましょう?」
ライオス殿下から手を放し、両手をパンパンと鳴らして回りの生徒達を教室に促す。丁度良く鐘も鳴り響き、慌てるようにみんな教室へと戻って行った。廊下にはユーナとレオン殿下、そしてライオス殿下の三人だけになっていた。
「ユーナ、それでも君は僕のモノだよ。父上から婚約破棄の言葉を得るまで、君は僕の婚約者だからね」
意味深な言葉を残してレオン殿下も教室へ戻って行った。あくまでもユーナを手放すつもりはないと宣言したレオン殿下に一抹の不安が残る。婚約者という名がある限り、レオン殿下はユーナを縛り続けるつもりなのだろうか。
名だけの正妃としてユーナを迎え、リリスを側妃にして寵愛を施し、ユーナを飼い殺しにするつもりなのだろうか。
修道院送りも最悪だが、お飾りの正妃も地獄に違いない。陛下の考えも分からなくはないが、ユーナという犠牲の元に築き上げられる安寧にすぎない。そして、信頼を築けていない傷付け合う未来の国王夫妻が良い国を創れるのか。俺はそうは思わない。いったい俺はどうしたらいいのだ。
答えの出ない問いに自然と目頭が熱くなる。涙なんて流してなるものか。と、涙を堪えていたユーナの頭をポンポンと不器用に撫でる手があった。
「我慢するなよ。泣けばいい。誰にも泣き顔を見られたくないのなら、俺で隠してやる。フラれちまったけど、俺はユーナの味方だからな。何かあれば頼れよ」
そう言って、そっと抱き締めてユーナの泣き顔を硬い胸板に押し付ける。フンワリと香る柑橘系の香水が、鼻をくすぐる。明るくて、でもどこか素直じゃなくて直ぐにツンツンとした態度を取るライオス殿下に似合う香りだった。
「ほんと、優しいねライオス殿下…」
「俺様はいつでも優しいって言っただろ?」
「フフッ。…そうだね、優しいわ」
「笑うなよ。あと、誰にでも優しいわけじゃないからな。ユーナだから慰めてやってんだからな!それから、いい加減に殿下呼び止めろ。…ライオスと呼んでくれないか」
「…ライオス…様?」
「様はいらない。なぁ、キスしてもいいか…?」
「…遊び相手にはならないと言ったはずよライオス」
ケチッ。と小さく聞こえたが聞こえないフリをしたまま、また鐘が鳴るまでライオスの胸を借りた。
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