俺が侯爵令嬢として愛を知るまで

彼名

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第6章

48.氷の次期伯爵様

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「チッ…お前に謝る必要性を感じないね。例え視界が塞がれていたとしても、この俺の道を塞ぐ奴が悪いんだ。大体、レオンに見放されたヴァランドなど呼び捨てで十分。おまえこそ、謝ったらどうだ?その滑稽な姿を俺の目の前に晒すな!」

腕を組んで、右手で落ちかけた眼鏡をクイクイと上げながら睨み付けてくるカイル。

予想外の俺様ぶりに、思わず空いた口が塞がらない。目の前の俺様は何て言った?

レディーに対して舌打ちの上に、まるで虫けらを見るかのような蔑んだ目で見下ろして、俺のことを全否定だと?

何が滑稽だ。自分らしさを貫いたこの姿をどうして他人に否定をされなければいけない。ましてや、カイルに会いたくて会ったわけでもない。

姿を見せるな?では、逐一カイルがいるかどうか、情報を集めて避けて通れと。無理に決まっている。嫌がっているのはカイルなのだ。カイルが勝手に視界に入らないように気を付ければ良いのだ。

妙案を思いついた。と、心の中で手をポンッと打った。怒りを表情に出さないように、口元を意識してニコリと微笑えむ。

「まぁ!カイル様はまるで王様のようですのね。申し訳ありませんわ気づかなくて。次からは道を譲れるように致しますわ!だって、カイル様の行く道を塞ぐ者はカイル様から不幸を買うのでしょう?例え相手が家格が上の者でもあっても。流石はカイル様ですわ度胸がありますのね」

軽く会釈をして謝罪をし、カイルの言う通りにすると申しながら反撃の矢を射る。自然に見えるように。手を叩いて褒めるが、案の定カイルは烈火のごとく顔を紅く染めて怒っていた。

「誰がそこまで言った?!令嬢なら令嬢らしく淑やかに黙って頷いていたらどうなんだ?これなら以前の方がまだマシだった。お前は髪と共に女らしさも置いて来たのではないか?!」

組んだ腕の上で人差し指をトントンと鳴らされる音は、まるでカイルの心情をそのままを表しているのだろう。

段々と早くなる指の音と一緒に、声に苛立ちが滲んでいるのが分かった。

こんなにカッカッとしていてカイルはカルシウムが足りていないのだろうか?

「あら、カイル様?それは女性に対する差別ですわ。頭の硬い男はモテませんわよ?」

「うるさいッ!女が寄って来ても邪魔なだけだ!それに差別などではない。これが当たり前のことで普通だろう?」

こんなにも女性に毒づく男の何処が良いのだろう。俺には理解に苦しむな。

確か「この俺様を自分色に染めていくのが楽しいのよ!」と姉は言っていたが全くもって分からない。

そして考えが昔の日本と同じで、男性が尊いという考え方が通っているこの世界は、女性には生きにくい世界かもしれない。

思わず溜め息を吐いてしまう。

「まぁ。もっと物事を柔らかく考えましょう?〝当たり前〞と決めつけて疑問を感じないことは可能性を殺すことですわ。カイル様もお父様を目指して魔術師団に入るのであれば、新しい魔法を生み出すことは名誉なことのはず。何事も否定をせずに、多様な考えを持つべきですわ」

足下に散らばったままの本はどれも魔法についての蔵書で、カイルがどれだけ熱心であるかが窺える。

いつまでも床に放って置かれている本が可哀想で、下唇を噛んで黙りこんでいるカイルを無視をして本を拾いあげていく。
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