まねらきがいの家

箱戸 枻

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豚のルール 

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確かに筋肉がある

幼いころにかじられた歯形もくっきり数日間のこった

そして彼の適応能力は恐ろしいほどに敵を作らなかった

ゴリラのような握力でいて豚
もしかしたらその手は鼻なのかもしれない

そしてその肉を食べているのかと思えば避けてベジタリアンになりかわり

屠殺の授業を受ければ彼に足を縛り上げ麻酔と皮そぎへ、
はてはミンチのソーセージにするまでを頭から振り下ろし 
にやついてしまった

が、すぐに顔と足のすね毛を思い浮かべて
気持ちが悪くなる

私はそういうキャラじゃない


そんなあなたへオススメの豚のルールブックいりませんか?


アルコールで手を必要以上にきれいにして、
馬鹿にされた鼻も整形して歯科矯正してきたのだから当然そんなものは欲しくはない。
…が。

「マスター…なぜ今豚の話を?」

「今からお見せするのはこの鉄板の上で踊るお肉のルールなのです。少しばかりかじった程度ですけれども、」

「っああ、なんだそういうこと。
てっきりお酒に合うアイスでもだされるのかとおもいました」

「冷や汗、ですかね」

「そんなところ、必要以上の嫌悪なんです。」

香ばしく鼻を抜けていくたれと油

ミントをメインにしたカクテルはもう底をついてしまっていた

マスターの豚の話をきいたあとにぞわりと
怒り狂った小肥りのことを思い出してしまった

危なかった

日頃の疲れの果てだろうか、自分を追い込むなんて…

「馬鹿げていますよね、突拍子もなくこんなサービス」

「…へ、あ別に、たまには違う雰囲気もいいんじゃないですか?10周年記念ですからいいと思います。とても。」

「そうですか。よかった」
様々な部位とともにそれを巻く葉や付け合わせの野菜達が集まり始める



「こっちは焼きそばにしようかと思いまして、それからこちらは好み焼きなのでお好きなトッピングと焼いてみてください」

「私が…ですか?」

「はい」

マスターは自然な笑顔を浮かべながら小えびや刻んだ野菜、ソースなどをを渡してくる

「かつおぶしとあおさは隣の店からもらってくるので少しまっていてください。」

「はい。ありがとうございます?」


じゅうじゅうと聞き心地のよい音が香りと広がり、胸を高鳴らせる
唾液も浮き出てくるほどに…

「至福だ、」



カウンター席のないカフェのようなバーなのだが、意外と客とマスターとの距離感は近い。

近隣のスーパーや御菓子屋さんの食材を使って料理が振る舞われるためお酒がでてくるまで居酒屋なのか、何の店なのかと疑問視されるが。

「バーです。明るいアットホームな、」

ちょびひげマスターがいうのだから間違いではない。(若干 諭吉 似の)

「このプロペラが大事なのよ、ねマスター」

机を3つも借りてピーチウーロン飲みながらプラモする客もいれば

「今日のあいりんオススメはこのするめいかさん!」

ファンシーな服装とおっさんのような趣味が
かみ合いそうで合ってない独特youtuberだったりする

「アルバイトちゃんは、この店では働かないの?」
私の癒やしの場をストレスの場にはしたくない

当然この方は嫌みではなく心優しいおばさまで、だれかがお忍びできている占い師ともいっていた。有名な方らしい。


ちなみに今日は10周年記念のパーティーなのでさらにいろんな客が来る予定だ

はたして何人くらい来るのだろうか
「…………?」

「やあミナちゃん早いね~
何この美味しそうなにおいは」

「あ、しょうこさん
先に食べてていいよ~ってマスターが」

「健一さんったら、渋いわりにロリコン野郎だったのかしら」

きょとんとした顔で寂しそうに訊ねてくる

「違う違う。私がダンディなおじさま好きなだけであってしょうこさんが好きなのは知ってるからとらないし……」

「ありがと」

「泊まってるとこの友達と喧嘩しちゃってさ。
今日はみんな来るからどうせ泊まる人もでてくるだろうってはやめに朝からいれてくれたの、、」

「ふぅん、じゃあ私もとまろっかなぁ~
今日は定休日だし客として」

「えぇ~しょうこさんの手料理食べられないのか、期待してたのに。」

「みんなミナちゃんみたいに即席でつくるんだったらあげるけども」

さくさくと良い音をたててお好み焼きがわけられてゆく。

「ん!
かすかなレモンとスパイスさすが健一さん♡」

「ほんとだ おいしい……」

「あっちのお肉と野菜は?」

「ああ なんか、焼きそばにしようかとって」

「それでいないのか 私も手伝いに行ってこよっと!ごちそうさま♡」

残りの二切れを口に含み咀嚼し終えるとしょうこさんはルンルン気分でいってしまった。

「残りの生地も食べていいのかなぁ…
うんうまい。」

席のない雑多に置かれているパーティー用の取り皿からわける用のを数枚頂く。

まるしろさんと小山が来るんだったっけ、あとはミラーマンと……


「よおミナちゃん これソースかかってないけど食っていいのか?」

「!……しげはるさん、
それかけなくても美味しいやつです」

「そうかじゃあ、いただきます」


うめぇ最高と二枚目までたいらげてゆく。

「もう焼かないのか、俺焼く?」

「まっててと言われたのでまだいいと思います。
私昼ご飯でいただいてただけなので。」
「なんでぇ、冷てえつらして…なんか嫌なことでもあったのか
俺にあたるとは?」

「……豚の……いえなにも。」

「噛み付いてくる豚ちゃんか、俺もあったなぁそんな時期が」

きいてない。
「……先日ばったり会ったんです。
向こうは覚えてないでしょうけど、いきなりぶつかってきて」

「俺みたいな格好してたってか」

(相変わらずエスパー)
「……はい」

「ヒゲか」

「はい」

「髪型もか」

「はい」

「んで肥えていると」

「……前より遙かにゴリラになってました」

「すると俺はタヌキか、そこだけ違うな」
「タヌキはやせてます、あなたはセイウチです」

そんなやりとりを交わしながら自然と野菜を刻んだり飲み物を注いだりしてなごやかにみんなを待った。

ちょうど今日は小山の誕生日らしい

「まぁ、楽しめや」

「あなたの開いたパーティーじゃないですが楽しくなりそうですね。
ふふっ」


「だろ?未来をいきようや」
「今もですね?」

「ああ、今もだ」

ニヤリ

さあ、できたてほやほやのお好み焼きに今来たばかりのあおさとソースとマヨネーズで!
















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