女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

文字の大きさ
23 / 754

森から出よう!

しおりを挟む
 

 目覚めると、背中はぷにぷにのライムに柔らかく包まれていて、首筋にはふわっふわのハクの毛皮の感触があった。

 昨日、たまたまじゃなかったらしい。 従魔2匹の思いやりだった。

「おはよう。ハクもライムもありがとうね!」

「おはようにゃ。どういたしましてにゃ!」
「ぷきゃ~!」

 ライムのお陰で背中は痛くないし、ハクのお陰で寒さを感じなかった。 ありがたい。

「顔を洗ったら、ごはんにしようね」

 そう言うと、2匹は競うように湖に飛び込んだ。

 私も、昨日用意しておいた肉串20本を全て焚き火の周りに挿してから、急いで2匹の後を追った。





 

 肉串が焼けるまで時間がかかりそうなので、今の内にライムを呼んで魚の内臓の処理をしておく。 これで食べたい時に焼くだけだ。 

 数日間は、食事の用意で手間取る事もないだろう。

 串を刺した魚をインベントリにしまい、焼いている肉串の方を見ると、ハクがせっせと串を回してくれていた。 小さな前肢を器用に使って回している。

「また、インベントリにしまうのにゃ?」

 残念そうに聞かれてちょっとだけ躊躇ったけど、焼けた順に保存分をインベントリに収納する。

 2匹の視線が刺さって痛い…。

 従魔たちのおねだりの視線を振り切って、焼けた肉とりんごで朝ごはんにしながら今日の予定を立てた。

「今日はこの森を出て近くの村に向かおう。 距離はこの森から北西の方角に30km位。 
 私たちは今、この森の南東の位置にいるから、森をこのまま北西の方角に抜けていくルートで行こうと思う。 
 ルート上の採取物は採取して、魔物がいたら狩っていく方向でどう?」

「それで良いにゃ!」
「ぷきゅ!」

 2匹も異存は無いようだ。  

 よし。 食べ終わり次第、出発しよう!










 昨日とは進む方角が違うからか、

 名前:毒消し草
 備考:解毒薬の材料。 茶にして飲むと病気の予防になる。

 が群生していた。見た目はドクダミ草に似ている。ドクダミ茶は生活習慣病の予防になるから、効能的にも似ているかな?

 どの程度の毒を解毒するのかはわからないけど、解毒薬を作れば売れるに違いない。 一面に生えているし、多めに摘んでも大丈夫だろう。 

「毒消し草は役に立ちそうだから、いっぱい採取しておこう!」

「イヤにゃ!!」

 お金になりそうだからハクも喜ぶかと思ったら、間髪置かずに拒否された。

「ここは臭いから、早く先に行くにゃっ!」

 臭いに敏感な猫(虎)だから、きつい臭いが辛いらしい。

「でも、これで解毒薬を作ったら売れるかもしれないし」

「こんな臭いの売れっこないにゃ!」

 確かに臭いけど、そこまで臭いかなぁ?  でも、ハクが辛いのはよくないね。

「じゃあ、ハクは従魔部屋に入ってていいよ。採取し終わったら声をかけるから」

「それはダメにゃ! こんなところでアリスを独りに出来ないにゃ!」

「大丈夫だよ! ちゃんと魔力感知を使っているし、マップもこまめに確認するから」

 ハクが嫌がるのはわかったけど、せっかく役に立つ草の群生地が目の前にあるのに素通りするなんてできない!

「この2日間、強い魔物には遭ってないし、私も少しは戦闘に慣れてきているし!
 こんなにいっぱい材料があれば、薬師スキルを上げるのにも役立つだろうし、もし、効能がイマイチで安くしか売れなくても、元手がただなら利益になるよ!」

 説得してみたけど、ハクはまだ納得してくれない。 でも、

「お金に余裕ができたら、美味しいものがいっぱい食べられるよ!!」

 これでどうだ!

「…わかったにゃ。 なら早く採取するのにゃ」

 ハクは前肢で鼻を押さえ、悲壮な顔をしながら折れた。 でも、そんな悲壮な顔で側にいられると私が落ち着かない。

「大丈夫だから、ハクは従魔部屋で待ってて? ビジューの装備もあるし、私も十分に気をつけるから、大丈夫!」

 インベントリを開いて説得を続ける。

「すぐ、だよ。 ね?」

 ハクを掴み、従魔部屋に押し込もうとするとやっと諦めて、

「わかったから、くれぐれも気をつけるにゃ! そして、僕を早く外に出すにゃ! 約束にゃ!」

 念押ししながら、しぶしぶと従魔部屋に入って行った。

 独りになると、森が静かなことに気がつく。 やっぱり少し心細くて、早くハクに出てきてもらうために毒消し草の採取に集中した。








 ………集中してしまったのが、いけなかった。

 魔力感知の反応に気がつくのが遅れ、気づくと同時に見えたのは、剣を持つ2本足の大きな豚。

 首から下は力士みたいな体型で、顔はどうみても豚。可愛くない方の豚。


 名前:オーク
 状態:興奮


 豚頭はオークだった。 でっぷりとした腹の下を布で覆っているだけなので、どこが興奮しているのかが丸わかり…。

「オオオオオオオオオッッ!!」

 あまりのおぞましさに一瞬硬直してしまったけど、オークの雄叫びで正気づいた。

 こんな醜いヤツに好きにされるなんて、冗談じゃない!

<鴉>を構えてオークを睨み付けると、オークは持っていた剣を投げ捨て、足元の石や木の枝を投げつけてきた。

「ッッ!?」

 意表を突かれて避けることしかできない隙に、オークは私に掴みかかろうとすぐ側まで迫って来ている。

 剣で私を殺そうとしないことにオークの目的を痛感し、おぞましさに血の気が引くが、<鴉>を強く握り締め、気力を振り絞る。

 上から覆いかぶさるように迫ってくるのを何とか避けて、尻を力いっぱい蹴り付けてやる。体勢を崩した所を狙って、後ろから脳天目掛けて一気に刃を振り下ろした。

「グギャッ!!」

<鴉>は狙い通りにオークを両断し、オークは大量の血しぶきを上げながら地面に倒れこむ。

 とっさに後ろに下がって返り血は避けたが、オークの欲にてられたのか、少し気分が悪い。 

 生えている毒消し草にもオークの血がかかってしまったので、これ以上の採取は諦めハクを出すことにする。

 オークの流血が落ち着いて収納してからにしようかとも思ったが、後から説明をするよりも現状を見せた方が早いと判断して、このままの状態でハクを呼んだ。

「オーク…。アリス、大丈夫にゃ!?」

 ハクはひと目で現状を把握したらしく、私に飛びついて来た。 頬に柔らかいハクの毛が触れ、その感触に癒されながら状況を説明する。

「やっぱり独りにするんじゃなかったのにゃ……」

 そう言って、ハクは私の頬にスリスリしながら落ち込んいる。

「いや、怪我1つなく無事だったし、大丈夫だよ?」

 悪いのは油断していた私だし。 ハクは何も悪くないので落ち込む必要なんてない。 慰めようと思っても、

「アリス、顔が真っ白にゃ。 怖い思いをさせたのにゃ…」

 確かに怖かったし気分も悪いから顔色は良くないだろうが、ハクが気にすることじゃない。

「本当にもう、大丈夫だよ。ハクの顔見て安心しちゃった。 ねえ、それよりも、オークが食べられるって鑑定に出てるんだけど…」

 ハクへの対応に困って、なんとなしにオークを鑑定してみると、


 名前:オークの死骸 (食用可)
 状態:優      (血抜き済み)
 備考:美味しい


 この見た目で“美味しい”って言われても……。

「食べられるの?」

「鑑定で、“食べられる”って出たんだにゃ?」

 確かに鑑定にはそう出たんだけど、

「見た目がちょっと……」

「ボアは食べてるにゃ?」

 ………………。

「美味しいの?」

「ボアより美味しいらしいにゃ♪」

 そっかぁ……。

 じゃあ、回収しておこうかな。 オークが投げ捨てた剣も忘れずに!






 血の臭いが充満している場所から早く離れたいので、さっさと移動を再開する。

 途中で毒消し草の群生地をみつけたけど、そのまま通り過ぎようとしたら、

「さっき、採取できなかった分も、まとめて採っていくにゃ!」

 と言って、ハクは私の肩にへばりついた。

「でも、ハクには臭いがきついでしょ? 無理しなくていいよ」

 そう言ったら、

「いっぱい材料があれば薬師スキルを上げるのに役立つし、安くしか売れなくても利益が出るにゃ! 美味しいものを食べるのにゃ!」

 私がさっき言った事を、そのままハクから返されてしまった。

「じゃあ、従魔部屋に入っ」
「ここにいるにゃっ!!!」

 入っていた方がいいと思うんだけどなぁ。 でも、一緒にいてくれると心強い。

「毒消し草の臭いは我慢できそう?」

「大丈夫にゃ。警戒は任せるにゃ!」

 悲壮な顔のまま警戒をしているハクに辛い思いをさせないように急いで採取をすませようと、オークの持っていた剣でザクザク刈っていると、

「品質が落ちるにゃ!」

 と叱られてしまった。  ハク。あなたに気を使ったつもりだったんだよぉ…。
しおりを挟む
感想 1,118

あなたにおすすめの小説

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~

魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。 ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!  そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!? 「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」 初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。 でもなんだか様子がおかしくて……? 不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。 ※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます ※他サイトでも公開しています。 【無断転載・AI利用禁止 / No Unauthorized Use or AI Training】 本作品の無断転載・複製・AI学習利用を禁じます。 Unauthorized reproduction or use for AI training is strictly prohibited. © 魯恒凛 / RoKourin

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...