女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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マルゴさんの解体講座

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「さて、何から始める?」

『元・冒険者ギルド解体部門責任者、現・肉屋店主』

 解体のプロ、マルゴさんの『解体講座』の最初の教材をまとめて取り出す。

「やっぱりスライムですかね?」

「ボアの次はスライムかい? 面白い選択だね」

「基本かと…」

 数も多いし。

「スライムの解体もやったことがないのかい?」

「私がやったことがあるのは、ワイルドボアのすね肉の切り取りだけです」

「初めての解体もどきがボアだったのかい! アリスさんはこの先食いもんには困らないだろうよ!」

「だと、良いんですけど…」

 肉が食べられなくてたべるものにこまって、ハクたちに心配をかけていました…。とは言えないな。

「スライムの解体は簡単さ。 ……スライムの廃棄物もライムちゃんに吸収させるのかい?」

「……共食いみたいで良くないですよね?」

「どうかねぇ…?」

「ぷっきゅきゅ♪」
(大丈夫だから、任せてって言っているにゃー)

 迷っていたら本獣ライムから、OKが出た。

(本当に大丈夫なの? ライムに無理はさせたくないよ?)

(大丈夫にゃ。スライムの1番の好物はスライムにゃ!)

 ! 衝撃の事実!?

(本当に!?)

(スライムは、スライムを吸収した方が、分裂が早いのにゃ~)

(じゃあ、ライムも分裂するの?)

 また、名づけするの!?

(栄養として溜めたかったら溜めるだろうし、分裂したくなったら分裂するにゃー)

 そっか…、ライムの気分次第なのか。  じゃあ、お願いしようかな。

「ライムが吸収してくれるようです」

 ライムはいつの間にか、すでに昨日のバケツに入っている。

「準備もOKみたいですね^^」

「そうかい。なら、今日も頑張ってもらおうかね。
 アリスさん、今日はコレを付けて、コレを使いな」

 マルゴさんは割烹着(!)と解体ナイフセットを渡してくれた。

「でも、汚れちゃいますし…。 解体用のナイフも昨日貰ってきましたよ?」

「汚れるから、それを上から羽織るんだよ。 解体ナイフも、最初にきちんとしたもので覚えておくと買い替えるときの参考になる。遠慮してないで使いな」

 マルゴさんの解体ナイフセットは色々な種類がある。使いこなせるようになったら、解体の仕上がりに違いがでるのは確かだろう。

「では、お借りします」

「ああ、きっちりと使いこなせるようにしてやるよ」

「よろしくお願いします!」

 1メレでも高く売れるように!

「…そろそろいい時間だね。 じゃあ、真ん中のこのナイフを逆手に握りな。こんな風だ」

「はい」

 マルゴさんの手元を見ながら逆手にナイフを握る

「スライムの素材は魔石とスライムジェルの2点だけだ。 討伐証明部位も魔石だよ。
 まず、魔石を体内から抜き取る。スライムの魔石は個体の中心から向かって右下辺りにあることが多い。手のひらで押して確認するんだ。魔石を見つけたらその付近にナイフを突き刺して、抉り取る」

「……取れました!」

「ふん。最初から指を突っ込めるなら、安心だね。
 スライムは先に魔石を抜いてやると、皮とジェルを剥ぎ易くなる。こんな風に簡単に手で皮を剥げるのさ」

 マルゴさんの真似をしてみると、本当に簡単! イカの皮むきより簡単だ!

「そう、上手いよ。アリスさんは筋がいいね」

「ありがとうございます♪」

  お料理、得意です♪

「死んですぐのスライムは、体内に酸を残していることがあるから気をつけな。通常なら5分程で分解するから、こうやって後から解体をする分には気にすることもないんだが、アリスさんは気をつけた方がいいだろう。
 で、魔石とジェルはこっちのトレイにいったん置いて、皮は廃棄。 ライムちゃん、頼んだよ?」

「ぷっきゃ~♪」

 マルゴさんに頼まれたライムは、嬉しそうに消化・吸収を始める。

 私のインベントリは時間経過がないから、今マルゴさんがしたみたいに、スライムの解体は5分ほど放置した後にしよう。  

(マルゴはアリスのインベントリが時間経過のないものだって、気が付いているにゃー)

(うん、やっぱり鋭い人だよね)

(……昨夜の生姜焼きを朝にぬくぬくで出したら、気が付いて当たり前にゃ)

 あ…。うかつだった……。 美味しい状態で食べたくて、つい。

「こんな風に真っ二つになっている個体は、皮を簡単に剥げるかどうかでどっちに魔石があるかがわかるね」

「なるほど」

 確かに、魔石を抜いていないと皮が剥ぎにくい。

「それで、だ」

「はい?」

「スライムの魔石は基本はくず魔石と呼ばれていて、売っても大した金にはならない」

「確かに、昨日のワイルドボアの魔石に比べたら、凄く小さいです」

「ああ。だけど、昨日の【クリーン】の魔法を覚えているかい?」

 忘れるわけがない!

 何度も頷くと、マルゴさんはいたずらに笑いながら言った。

「【クリーンの魔石】は、スライムから採れることがある」

「本当ですか!?」

「ああ。魔物の魔石の中には【スキルの魔石】があることは知っているね?
 スライムのスキルの魔石は【クリーン】なんだよ。 出る確率は低いがね」

「どのくらいの確率なんですか!? すっごくすっごく! 欲しいんです!」

「10万分の1くらいだ」

 10万分の1……。  スライムを10万匹狩らないと出ない魔石……。

「まあ、そんなにがっかりしなさんな。稀にだが市場に出ることもある。なかなかの高額だが、アリスさんなら買えるだろう?」

「高級宿屋とどっちが高いですか?」

「クリーンの魔石があれば、高級宿屋に食事付で何日も連泊できるね」

「高くて私には手が出せません。 まだ1メレも持ってませんし…」

 今の目標は高級宿屋に1泊だ。

「は……? 金を1メレも持っていないのかい?」

「ええ」

「冗談、だね?」

「いいえ?」

 無一文です。 まだ、この世界のお金を見たことすらありません。

「私の全財産は、ハクとライム。今身に付けている装備品と能力。 それと、途中で狩ってきた魔物とかですね」

「……1メレも持っていなくても、十分な気がするね」

「そうですね、十分です。 お金はこれから稼ぎます♪」

(いっぱい、稼ぐにゃーっっ!)

「ああ、そのためにも、解体をきっちりと覚えておきな。 腕次第で、ギルドに解体を任せるよりも高く売れるようになるよ!」

(がんばるにゃーっ!)

(頑張るよっ!)

「はい! 
 まずは、このスライムの山から【クリーン】の魔石を狙います! どんどんお願いします!」

「ああ、任せな!」

 本気モードのマルゴさんは凄かった…。 私が1匹分解体する間に、軽く5匹分の解体が済んでいる。

「ほら、目よりも手を動かしな! 解体の上達は数をこなすのが1番さ」

 頑張ります!
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