女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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 受け取ったオークのスライス肉をインベントリに収納したら、揚げ物開始!

 食べる直前に揚げなくても、インベントリに熱々のままで置いておけるから楽でいい♪

 揚げて肉を休ませて切って皿に盛る → インベントリ
 揚げて肉を休ませて切って皿に盛る → インベントリ
 揚げて肉を休ませて切って皿に盛る → インベントリ

 を繰り返していると、インベントリに入れる直前に2切れが皿から消えた。

「んにゃん♪」
「ぷっきゅ♪」

 揚げ物の匂いに釣られた2匹がつまみ食いをしたらしい。

「こら!」 

(ごめんにゃ! でも、美味しいにゃ♪)
「ぷきゃ~♪」

 かわいい顔をしても、許さないよ~?

「つまみ食いをした分は、ハクとライムの分から引くからね?」

「にゃ……っ」
「きゅっ?」

 お仕置きの内容にショックを受けて固まった2匹は放置して、オークカツを揚げ続ける。 しつけは難しいね~。







 オークカツを全てインベントリに収納し、明日の朝ごはんを何にするか悩んでいるとドアを叩く音がした。

 なんか、嫌な予感…?

「マルゴ! マルゴ! 治癒士様のことで話がある。 開けてくれ!」

 私のことで話ってなんだろう? 聞いた方が良いのかな?と悩む間もなく、マルゴさんはきっぱりと断った。

「もうすぐ夕食なんだ。後にしておくれ!」

「治癒士様次第で、すぐに終わる! 入るぞ!」

“入る”と言うが早いかさっさとドアを開けて、一組の男女が中に入ってきた。

 夕食前だってお断りしたのに、強引に入ってきちゃったよ……。

「ちっ、鍵掛けときゃ良かったよ…」

 舌打ちして嫌がるマルゴさんに、私も同意見だ。

「ああ、治癒士様もいるじゃないか。 どうして治癒士様はわしらの所に来てくれないんだね?」
「治癒士様が村に来て今日で3日目じゃないか。 今日こそあたしのところへ来てくれると思って、待っていたんだよ」

……2人はとっても元気に歩いているから、治療を急ぐ必要はないと思うんだけど?

「アリスさんは治癒士じゃないよ。 それに、あんた達には“アリスさんが村に残ってくれる為の条件”だってきちんと説明しただろう? 治療の順番だって、アリスさんの一存だ。 わざわざ文句を言いに来るんじゃないよ!」

「文句じゃないよ。どうしてあたし達の怪我を治しに来てくれないのか、説明を聞きに来ただけじゃないか」

 マルゴさんの一喝をものともしないほど、とっても元気に見える2人の治療を後回しにしている理由?

 ……わざわざ言わないとわからないかなぁ?

「治療は怪我が大きい人から優先しています。お2人の怪我は緊急を要するものではないので、明日以降になりますね」

 説明しないと素直に帰ってくれなさそうなので、治療方針を説明したけど、

「そんなことを言わずに、今、わし達を治してくれないか?」
「マルゴ、なんであたし達の所に来てくれるように、治癒士様を説得してくれないの!?」

 2人は説明を聞く気はないらしい。 やっぱり文句を言いに来たんじゃないか……。

「だから、治療の順番はアリスさんの一存だって言ってるだろう? あんた達の怪我は大したことないじゃないか。
 治癒に使う魔力にだって限りがあるんだ。順番だって言っているんだから、おとなしく待ってな!」

「今までおとなしく待っていたんだ! これ以上わし達をないがしろにされたら、村で立場がなくなってしまうじゃないか!」
「あたし達はこの村の顔役だよ。最初に治療されるのが当たり前じゃないか。 そんなことくらい、あんたにだってわかるだろう!?」

 マルゴさんに怒鳴られても、なお2人は言い募る。 狸より図太いかも…。凄いな…。

 2人の図太い神経に感心していて、もう少しで聞き流す所だったけど、

「え? お2人とも顔役さんだったんですか?」

 それなら最初にそう言って欲しかったよ。

「知らなかったんだな。 マルゴ、どうして教えないんだ?」
「知らなかったから、来てくれなかったのね?」

「知りませんでした。 マルゴさん、どうして教えてくれなかったんですか? 教えてくれてたら話は早かったのに……」

「さすがは治癒士様だ! 世の道理ってものをちゃんとわかっていなさる」
「マルゴの手落ちだったんだね。あたし達が顔役だってわかったんだから、当然、すぐに治療をしてくれるわね?」

 2人には凄く期待されてるけど、そんなわけないよ。

「お2人の治療は最後です」

「は!?」
「なんだと!?」

「お2人はこの村の顔役なんですよね? だったら治療は一番最後です。 それがわかっていたから、マルゴさんは教えてくれなかったんでしょうけど、知ってしまったからにはお2人は最後に回します」

「何を言っているんだ!? わし達はこの村の有力者なんだぞ? 最初に治療を受けるのが当たり前じゃないか!」

「何を言っているんですか? 村の有力者なんでしょう? 重症ならともかく軽症なんですから、他の村民を優先して診るのが当たり前じゃないですか」

 2人とも鯉みたいに口をパクパクさせているけど、

「村の顔役を自任しているなら、自分から最後にしてくれって言うものだと思っていましたよ。 それを自分たちを優先しろだなんて……。 あなた達にはびっくりです。
 と言うわけで、今は治療をしませんからさっさとお帰りください。私たちはこれから夕食なので、長居されたら迷惑です」

 わかったら早く帰れー? どんどん印象が悪くなるぞー?

「アリスさんは昼の治療で魔力をたくさん使ってるんだ。早く飯を食べさせないと、倒れでもしたらどうするんだ? 今日は帰ってくれ!」

 突っ立ったまま動かない二人に、ルベンさんが帰るようにうながしてくれたけど、

「じゃあ、ルシィはどうなんだ!? ルシィの怪我だってちょっとした擦り傷だったのに、もう、綺麗に治ってるじゃないか! ルベンだって村の顔役だぞ! その娘だけ先に治療を受けるのは不公平じゃないか!」

 顔役さん達はおとなしく帰るどころか勢いづいてしまった。 ルシィさんの顔がこわばっている。

「………あなた達は、私に何をしてくれたんですか?」

「…なに?」

「マルゴさんは、宿の提供から解体の指導。村の中を移動する時には付き添いやその他にも色々好き勝手する私の世話を。 
 ルベンさんは食材の提供から食事の仕度に、私の付き添いから従魔の世話までこまごまとしたことを。 
 ルシィさんはお使い事から食事の仕度、わたしの話相手など色々としてくれています。
 あなた達は、私に何をしてくれたんですか?」

「それは…」
「あたし達は何も言われてなかったし…」

「そうですね。私はあなた達には何も言っていません。
 私は、マルゴさんの家に泊まることをこの村に留まる条件にして、ルベンさんを私の世話係として選びました。 を治療することのどこが不公平ですか? 
 第一、ルベンさんもルシィさんも怪我を治して欲しいなんて一言も言っていませんよ。
 女性の顔には擦り傷でも十分に重症です。 痕が残ったりしたら、四肢欠損と同様に大変じゃないですか! すみやかに治して何が悪いんです?」

「「………」」

「あなた達が来た時に、マルゴさんは『食事時だ』って言いましたよね? 食事時だと分かっていて訪ねてくるのはマナー違反です。 今、私はとっても不愉快です。 さっさと帰っていただけませんかね?」

 ここまで言っても分からないなら、この2人の治療はしない! 決意を込めて見つめると、

「…治癒士様はまだ幼くて、世の中の道理がわからないらしいな!」
「まだ子供だから仕方がないね!」

 顔役の2人は私を道理のわからないおこちゃま扱いをしてから、足音高く帰って行った。

 ……とっても元気で、治療の必要はないと思うんだけどなぁ。
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