女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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初めてのリカバー 

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「アリスさん、マルゴおばさん、親父、姉さん、よろしくお願いします」

 ルシアンさんの決意の篭った声に、みんなで力強く頷き合った。

「始めます」

 “ヒュン! ゴトッ”

「グッ! ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッ!!!」

<鴉>はルシアンさんの膝上を難なく切断し、整った断面から赤い血が噴出すと同時に、ルシアンさんの呻き声が響いた。

「「「ルシアン!」」」

「頑張れ!!」
「頑張るんだよ!」
「頑張って!!」

 ルベンさんは反射的に暴れるルシアンさんの体を押さえ込み、マルゴさんは切断面を上に向けて固定し、ルシィさんは震える手を宥めながらも、ゆっくり少しずつ切断面にポーションを垂らしている。

「ルシアンさん、頑張って…!」

 ルシアンさんは最初こそ痛みに暴れたが、自分で痛みを押さえ込むと目を堅く瞑り、何かを呟き始めた。出血の為に顔色は悪くなっているけど、ルシアンさんの表情の中には苦痛以外の感情の色がある。

「アリスさん…?」

 ルシィさんの不安そうな呼びかけにも応えず、私はルシアンさんの呟きを聞き取るために耳を澄ませていた。痛みに息を荒げながらも、懸命に『両足のある自分』をイメージしている。

 呟いている声が少しずつ大きくなって、“カッ”と目を見開いたルシアンさんは想像の中の何かに向かって大声で怒鳴った。

「グリフォンは俺の獲物だーっっ!!」

「【リカバー・ダブル】!!」

【リカバー】は【ヒール】以上の強い光でルシアンさんの体を包み込んだ。

 ルシアンさんの体が光に飲み込まれた様に見えて一瞬びっくりしたが、光は少しずつ切り落とした方の足に集まり、やがて足の形をかたどった。そのまましばらくすると光は徐々に弱くなり、最後に生身の足が残っている。

「成功、したの…?」

 ルシィさんの震えるような呟きが聞こえたが、まだ返事はできない。

「ルシアンさん、ゆっくりで良いのでまずはこれを飲んでください。【増血薬】、失った血液を増やす薬です」

 ルシィさんに増血薬を渡して介助してもらっている間に、血塗れになったマルゴさんを始め、部屋の中の全てにクリーンを掛けて綺麗にしておく。

 血が流れた痕跡を全て消し去りルシアンさんの様子を窺うと、増血薬を飲み終えてルベンさんに寄りかかり脱力していた。

「では、動かしてみましょうか」

 ルシアンさんに声をかけると、期待と不安に瞳を揺らしながらゆっくりと頷いた。

「足の指に力を入れてみてください。指を開いたり閉じたりできますか?」

「ああ」

 ちょっと不器用な動きだったが、足の指まで神経は通っているようだ。 

 解体台の縁から脚をたらすように座ってもらい、生えたばかりの足首に手を添えて蹴り上げるように伝えると、私の手は膝の高さまで持ち上がった。

「!!」
「「ルシアン!」」
「動いた…っ!!」

「では、ルベンさんとルシィさんは両側から支えてあげてください。 ルシアンさん、ゆっくりと立ち上がってみましょう」

 ルシアンさんは両側を支えてもらいながら、立ち上がる。

「……立ったぞ」

「では、支えはそのままで、ゆっくりと歩いてみてください。ゆっくりですよ?」

 ……歩けますように!! 祈りながら見守る中、ルシアンさんは何度か深呼吸を繰り返した後、ゆっくりと歩き始めた。

「「ルシアン…」」

 ルベンさんとルシィさんの嬉しそうな声が聞こえる。支えがなくても大丈夫みたいだ。

「…離してくれ」

 ルシアンさんは2人の支えを外して1人で立ち、 ……いきなり飛び上がった!

「「「ルシアン!!」」」
「ルシアンさん!?」

 飛び上がったと思ったらその場で足踏みをし、小走りで部屋の中を走り回る。

「動く! 走れるぞっ! ……動くんだ! 俺の足!!」

 走り回ったと思ったらいきなり立ち止まり、……涙ぐんだ。

「ルシアン!」

 涙ぐんだルシアンさんを見て、ルシィさんもたががはずれたのか大粒の涙をこぼしながら、ルシアンさんに飛びついた。

 いきなり飛びつかれてたたらを踏んだルシアンさんの背中をルベンさんが支えて、しばらく3人で抱き合っていた……、と思ったら、ルシアンさんが倒れた!

「「「ルシアン!!」」」
「だからゆっくりって言ったのにぃぃぃ!!」

 急いでインベントリから【増血薬】を取り出して、ルシィさんに渡す。

「飲ませてあげてください。多量の出血による貧血ですので心配はないですよ」

 そう声を掛けると安心したように、おかわりの増血薬をルシアンさんに飲ませ始めた。








「ありがとうよ…」

「いえいえ、お疲れ様でした」

「ルシアンを治してくれて本当にありがとうよ…」

 マルゴさんは私の手を握り締めて、……震えている? 今にも涙が溢れそうなのを、懸命にこらえているようだ。

 ただ喜んでいるだけではない雰囲気に違和感を感じる。

「マルゴさん?」

「…ルシアンの怪我は、アタシの」

「おばさんは関係ない!!」

 何かを言いかけたマルゴさんの言葉をルシアンさんが大声で遮った。

「ヤツ等とマルゴおばさんは関係ないだろ!? そんな風に言うなよ!」

 どうやらマルゴさんと『ヤツ等』は関係者だったらしい。 ……もしかして、狸村長の身内かっ!?

 疑問が顔に出ていたのか、

「おばさんとヤツ等は関係ないんだ! 誤解をしないでくれ!」

 ルシアンさんは私を見ながら強く言い切り、ルベンさんとルシィさんも同意するように頷いた。

 ルベンさん親子が「関係ない」と言っているのなら、マルゴさんが気にすることもないだろうが、強い責任感と厚い情を持っている人だから、どうしても気にしてしまうんだろう。

「まあ、とりあえず、部屋を変えておやつにしましょうか!」

「んにゃーっ♪」
「ぷきゃーっ♪」

 話題を変えようと提案した私に同意してくれたのは、私の従魔たちだけだった。  

 ………ん?
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