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嫌いな魔物、1位に浮上

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 名前:ハーピーの死骸(食用可)
 状態:優
 備考:羽根は矢羽に使用可

 ハーピーは上半身が人間の女性で腕が翼、下半身が鳥の魔物だ。 

 こいつの視線は初めはライムに、次いでハクに注がれていた。 拐って貯食にでもするつもりか、私には敵意を、2匹には獲物を見るような視線を向けてきた。

 今までのどの魔物よりも不快に感じたので、こちらに狙いを定めてホバリングしていた3羽の頭を、全力のウインドカッターで刎ね飛ばしてやった。

 綺麗な顔は高い位置からそのまま地面に落ちてぐしゃぐしゃになったが、特に感慨は無い。首から下はハクが結界魔法(?)で受け止めていた。(金目の獲物には気を配ってくれるのがハクらしい)

「土地が変わると魔物も変わるね~」

「そうにゃね~」

 私たちには不快感以外の被害は無かったので、ハーピーの胴体をインベントリに放り込み、また歩き始めた。





 朝食後すぐに野営地を発ち、西に向かって歩いていると、幅4m程の深い川があり、そこを越えるとごつごつとした岩が所々に見え始めた。

 離れた所に架かっている橋まで行くのが面倒だな~と思っていたら、

「アリスは跳べるにゃ!」

 ハクに軽~く言われ、試してみたら本当に楽々跳べてしまった!(ライムはハクが優し~く咥えて運んだ)

 水をインベントリに補充した後、自分の体の身体能力の高さに興奮しながら歩いていると、マップにポツポツと赤ポイントが付き始め、魔力感知で上空に魔物の気配を察知した所、件のハーピーがいたのだ。

 遠目にも綺麗な顔と羽だったので、一瞬だけ喜んでしまったのが今となっては腹立たしい。選りに選って、ハクとライムに目をつけるなんて!

「アリス、もう機嫌を治すにゃ」
「ぼくたち、ぶじ」

 ハーピーに対する怒りでイライラしていると、ハクが頬に、ライムが足に擦り寄ってきた。

 2匹を力いっぱいに抱きしめて、もふりながらイライラを癒すことにする。

「もう、元気にゃ?」

 私の機嫌が上昇したのを察知したハクが、頬を一舐めして離れた。
 
「うん。でもこの辺りの移動は、ライムはハウスの方が良くない?」

「そうにゃね……。ライムはハウスに入ってるにゃ!」

 ハクは先輩従魔の貫禄でライムに指示を出し、ライムは、

「ごはんのとき、だしてね?」

 とだけ言って、大人しくハウスに移動した。

「これで安心にゃ!」

 ハクも獲物認定されていたんだけど…。 ハクの名誉の為に黙っておくことにした。ハクなら自分で対処も可能だしね。 獲物認定の視線はとっても不愉快だけど…。

 のんびり移動を続け、太陽が真上を通り過ぎ少し陰が出来る頃には、何体かのハーピーとオーク、薬草を採取することができた。




「暑かったにゃ! 水がおいしいにゃ!」

 大きな岩の陰に入って、お昼休憩を取る。

「どらいあっぷる、おいしい♪」
「焼き魚のおむすびもおいしいにゃ~!」

 2匹の食欲も旺盛で、見ていて私も楽しい。

「マルゴさんのラビットの煮込みもおいしい♪」

「干しりんごも食べたいにゃ!」

「いいよ。1個分でいい?」

 お昼ごはんが定着してきたな~。インベントリに作り置きができるのが、3食食べられる理由だな。朝、昼、晩に煮炊きをしようと思うと、どうしたって活動できる時間が足りなくなる。インベントリ様様だ!

「今夜のごはんもおいしいにゃ?」

 お昼ごはんを食べ終わってすぐに晩ごはんに意識が行くなんて、期待されてるなぁ。

「そうだねぇ…。 じゃが芋と大根と椎茸、どれが食べたい?」

「オークにゃ! オークが食べたいにゃ!!」

「しいたけ」

「ライムは椎茸だね? ハク、オークをメインで出すから安心していいよ。じゃが芋と大根、どっちが食べたい?」

「……じゃが芋にゃ」

 ハクは野菜が嫌いなのか、悩んだ末にじゃが芋を選んだ。 今まで出した野菜に文句は言わなかったんだけどなぁ…?

「晩ごはんは椎茸のオーク肉巻きとオークの肉じゃがにするね!」

 そう伝えると、2匹は飛び上がって喜んだ。

「オーク!」
「おーく!」

 ……2匹とも肉好きにも程があるよね? 

「早く行くにゃ! 早く行って早く晩ごはんを食べるのにゃ!!」
「いこう!」

 食いしん坊たちは、早く行っても早く夜が来るわけではないことを忘れてしまったようだ。もう、そわそわし始めている。

「ちょっと、待ってね。 この岩…」

「どうしたにゃ?」

「うん、この岩を解体テーブルの代わりに持って行こうかと思って」

 都合の良い事に、上部が平面になっている岩があるのだ。少しでこぼこが気になるが、この大きさなら、十分に解体台として使えそうだ。

「解体テーブルは確かに必要にゃ」

 ハクの同意もあったので、そのままインベントリに収納した。解体をするのはほぼ野外なので、少し大きくても問題はないだろう。

「丁寧に解体して、1メレでも高く売るにゃ!」
「おふろ」

 ……2匹の応援を受けて、高級宿を想像しながら出発した。



「歩きながら本を読むなんて、行儀が悪いのにゃ~」

「ハーピーのページだけだから見逃して!」

 移動を再開してしばらくは平穏だったのだが、またハーピーが出没し始めた。 空中にいるハーピーを倒すのは【ウインドカッター】で楽に倒せるのだが、頭部の回収に迷う。今は自然落下に任せているが、もし売れる物だったらもったいない。

「ああ、頭部は要らないみたい。討伐証明部位は右足か。
 今までどおり、首から下は上手に拾ってね!」

「任せるにゃ!」

 忘れた頃に出てくる魔物を狩りながら、西へ向かって歩き続けた。
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