女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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広がる誤解

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 マルタが衛兵たちを連れて戻ってくると、イザックとエミルは急いで芋粥を搔き込み、説明の為に外へ出て行った。

「どうなったの?」

 戻るなり心配そうにマルタが聞くので、部屋の奥でハクに遮音結界を張ってもらってから説明すると、

「それが正解だと思うわ」

 ハクとライムを見て、大きく頷いてから芋粥に手を付けた。

「米をこんな風に食べるのは初めてだけど、オカユって言うの? 美味しいわ。 これなら二日酔いの朝にも食べられそう。 真似してもいい?」

「どうぞ、どうぞ♪」

 マルタはお酒が大好きらしく、休養日には深酒で二日酔いも珍しくないようだ。 人は見かけによらない。

「おかわり♪」
((ぼくも)にゃ!)

 ハクとライムは何杯目のおかわりなのか…。 

(同じものじゃ飽きるでしょ? 何か違うものを出してあげようか?)

(みんなと同じで良いにゃ)
(だいじょうぶ~)

 “肉”って答えるかと思っていたら“みんなと同じで良い”と言われて、きゅんと来た!  可愛いから、後で何か出してあげよう! 

 インベントリに何があるかを考えながらお粥のおかわりをよそっていると、衛兵が中に入って来たので、急いで遮音結界を解除してもらう。

「事情を確認……。食事中でしたか」

 衛兵は何かを言いかけたが、私たちが朝ごはん中だと気付くと言葉を止めた。 気を使ってくれるのが嬉しい。

「朝早くから、お勤めご苦労さまです。 こんなもので良ければ、一緒にいかがですか?」

「………よろしいのですか?」

 お粥じゃ嫌かな?と思いながら衛兵さんにも朝ごはんを勧めてみると、遠慮がちに、でも嬉しそうに目を輝かせた。

 領兵の隊長に酷い目に遭わされたばかりだったので、目の前の衛兵さんの丁寧な物腰はとても安心する。

 最初に会った門番さんも強面なのに優しかったし、この町の兵士さんは良い人が多いのかな? 

 自然に浮かぶ笑顔のまま、ドアから顔を覗かせている3人の衛兵と護衛組も呼んで、朝ごはんの仕切りなおしだ。

 昨夜の夕食時のようにみんなにクリーンを掛けると、護衛組が敷物を、アルバロが天板を中央にセットする。

 エミルが衛兵さん達にブーツを脱ぐことを教えてから中央まで案内してくれて、イザックが嬉しそうに水差しの水を注いでくれた。 イザックはクリーンを掛けた水が大のお気に入りだ。

 インベントリから芋粥の他に椎茸のオーク巻き串とホーンラビットの煮込みを取り出すと、アルバロとマルタが串以外をよそってくれる。 衛兵さんの分の食器はみんなで予備を掻き集めたので形も大きさも不ぞろいだが、同じ量の同じような具をよそっている。 

 ……これがパーティーリーダーのスキル。 ちょっと凄い♪

「では、改めて。 いただきます!」
「にゃん♪」
「ぷきゅ♪」
「「「「「「「「今日の糧に感謝を!」」」」」」」」

 冒険者と衛兵の食前の挨拶が同じだった。 職種で違うのかと思っていたが、地域で違うらしい。 

「この煮込み、すっごくおいしい!」
「でしょう! ここに来る前にお世話になっていた人が作ってくれたんです♪」
「この米の食べ方はいい! とても安らぐ味だ」
「これは…、オークでは?」
「ああ、オークだな。 アリスの料理は美味いだろ?」
「我々にまでオークを…!」

 若い衛兵さんが椎茸のオーク巻き串をとても喜んでくれた。 オークが好物だったのかな?

(アリス、これ以上はいらないにゃよ? ダメにゃ!)

 そんなにオークが好きなら、オークテキでも出そうかと思ったが、ハクに止められた。 どうしてわかったのか不思議だけど、ハクが止めるなら止めておこう。

「皆さんのことは上司から聞いていました。 危険ですので、今夜から我々も護衛に加わるか、巡回を増やしましょう」

 芋粥を食べながら「甘い。美味い…」と呟いていた衛兵さんが提案してくれた。最初に部屋に入って来た人だ。

 護衛組は黙って私の顔を見ているから、私の判断で良いのかな?

「そうですね……。 お気持ちだけ、ありがたく頂戴しますが、この家の周りには何もしないでください」

「…それは、どうしてですか!?」

 驚いたように聞かれて、少し困ってしまった。 “ハクの邪魔になるから”とも“自分たちだけで十分な戦力だから”とも言えないし…。

「襲うなら、この家で襲って欲しいからです。 この家の警備を強化して、他の無関係な人に被害が出るような場所で襲われる方が怖いので……」

 考えながら答えると、護衛組は静かに頷いてくれた。 勝手に断ったけど問題はなさそうだ。

 衛兵さんは、マルタがにっこりと笑いながらよそってくれた芋粥のおかわりを受け取りながら、静かに溜息を吐いて、

「皆さんのことは上司から聞いていました。 お嬢さんは警備隊長から聞いていた通りの方ですね」

 と、目をキラキラさせて私を見つめる。   

 ……警備隊長って、盗賊団の襲撃の後、町の中に入れてくれた人だよね? 大きな誤解が発生してる気がするけど、どんな誤解かは怖くて聞けないな…。

 私が反応に困っている間に衛兵と護衛組の間で事情聴取が済み、衛兵さん達は朝ごはんのお礼を丁寧に言ってくれてから、襲撃者の死体を回収して帰っていった。










「4時50分か…。 結構、時間を食っちまったな」

 アルバロが時計を見ながら舌打ちをするが、まだ5時前だ。

「朝市は何時からですか?」

「6時だ。店によっては多少前後する」

「なら、牛の牧場へ行きましょう! 味見とかできるといいな~♪」

(時間があったら、朝市にゃ?)

(うん、時間があったらね! おいしいものあるかな?)

(あるにゃーっ!)
(たのしみ♪)

 従魔たちと一緒に“おいしいもの”に思いを馳せていると、

「牧場にはチーズもあるぞ」

 エミルが嬉しそうに言った。 ヤギのチーズも美味しいけど、牛のチーズも絶対欲しい!

「んにゃ~ん! にゃにゃ!」
「ぷっきゅきゅ~、ぷっきゅきゅ~♪」

 “チーズ”は食いしん坊の2匹には嬉しい情報だったらしく、私が「行こう!」と言う前に、2匹がかりでエミルを玄関から押し出そうとしている。

「ちょっとだけ待って!! すぐに片付けるから!」

 慌てて呼び止めると、2匹は不服を表すようにエミルの回りをぐるぐると回りながら跳ね出した。

 可愛いけど、欲望に素直すぎるっ!  

 襲撃者の血痕は消しておかないと、家の価値が下がるってわかってるのかな? そこの食いしん坊さんたち?
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