女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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第一印象が全て! ではなかったようだ

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「【ウォーターアロー】!!」
「【ウインドカッター】!」

「ギャアアアアッッ!!」

 私に向かって飛んできたファイヤーアローはエミルのぶつけたウォーターアローにあっさり消され、私の飛ばしたウインドカッターは威力を落とすことなくファイヤーアローを放った男の肩に届き、腕を切り飛ばした。

 男の悲鳴が響く中、マルタとエミルが私の前に出て来て私を隠し、イザックが突然攻撃してきた男を取り押さえ、アルバロがこの場にいる全員に警戒の視線を飛ばす。

「こいつはさっきアルバロに絡んでいたヤツだな」

 間違った情報を聞いてここに来て、アルバロに金をよこせと食って掛かっていた男がギャラリーに交じって残っていたらしい。 ……どうしていきなり私を攻撃してきたのかは不明だけど。

「ねえ、こういう場合はどう対処すれば良いの?
 怪我人が出たから衛兵さんを呼んだ方がいい?  それとも、一応は依頼を受けに来た冒険者らしいからギルドに連絡?」

 こんなトラブルは想定していなかったので、どうすればいいのかを目の前のマルタに聞くと、

「衛兵ならここにいますので、呼ばなくても大丈夫です」
「ギルドへの連絡も不要だ。 私からしておく」

 ギャラリーたちの中から男性が2人出てきた。

 平服だけど衛兵を名乗る人の顔に見覚えがある。  拠点でハクに倒された男達を引き取りに来てくれた衛兵さんだ。 一緒に芋粥を食べたから覚えている。

「今日は非番ですか? 迷惑をかけてごめんなさい」

 せっかくのお休みに申し訳なく思っていると、

「気にしないでください。 面白そうだったのでギャラリーに来たのですが、予想以上に楽しませてもらいました。 
 実は俺も氷魔法を使えるんですよ。 衛兵はバイト禁止なので参加できませんでしたけど」

 爽やかに笑って昨日差し入れたクッキーのお礼言いながら、バスケットとビンを返してくれた。

 もう1人の、ギルドへの連絡をしてくれると言った人にも見覚えがあるような? どこかで見た気がするんだけど思い出せない……。

「なんだ、ギルマスじゃねぇか。来てたのか」

「アルバロの知り合い?」

「アリスもコンラートの家で会っただろう? 覚えていないか?」

 コンラートの家に行った時? あの場にいたのは……、

「思い出した! 事情も理解しないで他人を責めた、目つきが悪い上に視野の狭い男!」

 やっと思い出せてすっきりしていると、肩を震わせていた護衛組が吹き出した。

「視野が狭いって~っ!!」
「確かに責めてた!」
「ギルドでは“冷静で公平”だと評判なのになぁ!」
「思いっきり睨みつけてたからな!」
「「「「あははははははははっ!」」」」

 痛みにうめき続ける男を組み敷いたまま笑うイザックの姿は、なかなかシュールだ。

「おまえ達……。 まあ、いい。
 アリスさん、あの時は私が全面的に悪かったと反省している。 許して欲しい」

 コンラートの代わりにギルマスになったらしい男は、意外なほど素直に頭を下げた。

 ギルドのマスターとして、事情を何も知らないギャラリーの前で詫びるのは避けたい状況だろうに、きっちりと頭を下げる姿はコンラートの家にいた男と同じとは思えない。

「わかりました」

 事情はわかっているし根に持つことでもないので素直に謝罪を受け入れると、男は一瞬だけホッとした顔をしてから、真顔で礼を言った。 ……本来はとても真面目な人なんだろうなぁ。 コンラートの家での姿は忘れよう。

「イザック、その男はまだ生きているか?」

「ああ。出血が多いせいでぐったりとはしているがな。 死んだらまずいのか?」

 “生きている”と聞いて、ギルドマスターはポーションをイザックに投げ渡した。

「事情の確認が必要だろう?」

「まあな…」

 イザックは受け取ったポーションを半分だけ使い、残りを地面に流す。

「イザック?」

「出血だけ止めれば十分だろう? 甘やかすことはない」

 なかなか厳しい処置をするイザックに男は恨みの視線を投げるが、護衛組も衛兵さんもギルドマスターも何も言わない。 私も文句はないけど……。 

 捨てたポーションがもったいないと思ったのは私だけ? 








 非番なのに男を連行してくれる衛兵さんへお礼の生キャラメルを渡すと、衛兵さんはとっても嬉しそうに受け取ってくれた。 

 マルタがいたずらな笑顔で生キャラメルを一つ取り、包んでいた紙をはがして衛兵さんの口へ放り込むと、一瞬だけびっくりした衛兵さんの顔がとても幸せそうに綻ろぶ。

「今日、ここ来て本当に良かった! こんなに美味しいものがこの世にあるなんて……!」

 衛兵さんは男をきつく拘束したまま目を閉じて甘みを堪能していたが、ギャラリーの視線を感じたのか目を開くとすぐさま、アイテムボックスに大切そうにしまいこんだ。

 私もギャラリーの羨ましそうな視線は見ないフリをする。 










「で、あんたは何をしに来たんだ?」

 男を連行していく衛兵さんを見送りながら、アルバロがギルドマスターに聞いた。

 こんな朝早くに<ギルドマスター>がこんな所に来る理由を私も知りたい。 参加者の中にはいなかったしね。

「引退した元・冒険者への仕事の斡旋なんてそうそうあるものじゃないからな。様子を見に来たんだ。 ギルドとしても、怪我などで泣く泣く引退した冒険者のことは気になっている。 
 この依頼が今回限りなのが残念だ」

 ギルドマスターとして、元・冒険者たちを心配してわざわざ自分が来たんだ。 見直した♪

「ん~。まだ内緒なんだけど……」

 ハクに遮音結界を張ってもらった上で、情報を提供する。 

「今後、氷魔法とクリーン魔法とドライ魔法の使い手は、魔法さえ使えたら仕事ができるよ?」

「……それは本当か!? どれか1つでもいいのか? 体が動かなくてもいいのか!?」

「魔法さえ使えたら大丈夫だし魔法は3つの内の1つで十分。MP量の問題もあるから、2つ3つ持っててもあんまり意味ないよ」

 ギルドマスターは、“信じられないが信じたい”といった顔で護衛組に視線を向ける。

「アリスがそう言うならそうなるんだろう。確認をしたいなら<商業ギルド>のギルドマスターに会ってみろ。 俺たちからはこれ以上のことは言えん」

「早く囲い込まないと、商業ギルドに囲い込まれるよ?」

 一応忠告をすると、

「商業ギルドが? そうか、それならそれでもいい。 引退した冒険者たちの生活の安定につながるならそれで十分だ。
 アリスさんが何かをしたんだな? ありがとう!」

 と嬉しそうに笑う。   ……なんだ、随分といい人じゃないか。 

「ギルマスがそんなことを言ってちゃダメだろう? ギルドの儲けを考えないとな!」

「ああ、そうだな。 引退している冒険者たちを守ってやるためにも、冒険者ギルドが間に入ってやらないとな」

 アルバロにつっこまれても、視点は元・冒険者側にあるらしい。 冷静で公平だそうな男の嬉しそうな顔はなかなか可愛いくて、コンラートの所で会った時のイメージはきれいに消えた。 

 お近づきの印にクッキーをあげよう!
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