女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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元・冒険者は侮れない

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 商業ギルドの幹部3人が従魔たちに朝ごはんの約束をして帰ったのは、22時を過ぎていた。

「サンダリオさんが昨日言ってた、一目惚れをした娘さんとはどうなったの?」

「今はわたしの妻だよ。 わたしの代わりに商会を治めてくれている」

「へぇ、随分と優秀なのね! でも、サンダリオさんの商会はこの町にはなかったわよね? 別居?」

「わたしの見る目に間違いはなかったことを証明してくれる、とても素晴らしい妻だよ!
 実は今、この町に遊びに来ていてな……」

 帰り際にマルタに聞かれたサンダリオギルマスは嬉しそうに答えていたが、

「今夜はまっすぐに家に帰るのか?」

「今夜はギルドに泊まるんだ…。 家族に嫌われたくはないからな……」

 エミルに聞かれて、がっくりと肩を落とした。

 にんにく臭で家族に嫌われるのを避ける為に、幹部たちは全員ギルドに泊まることにしたらしい。

「にんにく臭って言うより、自分だけ美味いものをたらふく食ったことがバレる方が怖いんじゃないか?」

 とはイザックの冗談だけど、ハクがその通り!と言いたげに頷いているのが嬉しい。

 明日も頑張って、美味しいものを作るからね!

「明日も早いから、早く寝よう」

 商業ギルドの3人を玄関まで見送って戻ってきたエミルの言葉にみんなが頷く。 

 今日は少し疲れているから早く寝ないと……。 明日の朝、寝坊をすると大変だ。 









 表門を出て南に1kmほど歩くと少し大きな岩がある。 その付近が今朝の待ち合わせ場所だ。

 待ち合わせの相手は、氷魔法が使える元・冒険者たち。

 昨日、ギルドのオークションに参加するアルバロ達に、氷魔法が使える人たちを集めてもらえるようにお願いをしていたのだ。

「アリスの希望通り、引退した冒険者に声を掛けるように言っておいたが、ランクの低い冒険者が小遣い稼ぎに混ざっているかもしれん」

「別にいいけど……。 普通に魔物を狩った方が余程いい稼ぎになると思うよ?」

「氷1kgに対して3千メレなら十分だ。怪我の心配のない小遣い稼ぎになるからな」

 氷が多く買える分にはなんの文句もない。  インベントリからエミルに作ってもらった天秤を取り出しているとアルバロを呼ぶ声がした。片足が義足の男性だ。

「おお、やっぱり来たか!」

「ああ、飯代を稼がせてもらおうと思ってな。 氷魔法を見せるだけで1発3千メレなんて、随分と物好きがいるもんだ」

 ……少し話が違っているな。 参加者が集まったらちゃんと説明をしよう。

「氷魔法が1発3千メレじゃなくて、氷が1kgにつき3千メレだ。 おまえの腕が落ちてなかったらちょっとした稼ぎになるんじゃないか?」

 義足の男性はなかなか強い氷魔法を使えるようで、アルバロの説明を聞いて嬉しそうに笑っている。 

 大量の氷が手に入りそうで、私も嬉しい!









「-------------大きい方のビンの中身が1kg、小さい方のビンの中身が500gだ。これを目安に秤にかける。 頑張ってくれ!」

「おい! 俺は攻撃魔法を1発見せれば3千メレだと聞いていたぞ!」
「俺もだ!」

「どこかで話が変わっちまったんだな。今日は氷の買い付けだ。 おまえ達の属性は?」

「火」
「風だ」

「そうか、残念だったな」

「それだけかよ! 無駄足を踏ませたんだから、いくらかよこせよ!」

「ギルドの掲示板や職員にはきちんと伝えてある。 確認をしたか?  誰かから聞いてきたなら、文句はそいつに言え」

 話がきちんと伝わっていなかったらしく、間違って来た人が怒っているが、アルバロは意に介した様子もなく淡々と話を進める。

 アルバロが全体のまとめ、イザックが参加者の整理、エミルが氷の量を量り、マルタが支払いを担当してくれる。

「攻撃しなくても氷を出せるヤツは前に出てくれ!」

 イザックの言葉に、アルバロと話していた義足の男性が出てきた。

「この鍋の中に入れられるか? 出せるだけ出してくれ」

「鍋を壊さないようにだな?  【アイスボール】」

 義足の男性は上を向けた手のひらの10cmほど上に氷を出現させて、手を伸ばしながら寸胴鍋の中に氷をコロンと転がした。

 思わず拍手をするとこちらを向いてニヤリと笑い、どんどん鍋を氷で埋めてくれる。 途中で鍋を交換して、合計で30㎏を超える氷を出してくれた。

「9万メレと…、500メレと美味しいクッキーのどっちがいい? あたしのお勧めはクッキー」

「本当に9万メレもくれるのか…。 クッキーをもらおう。息子が喜ぶ」

 義足の男性は嬉しそうにお金とクッキーを受け取って、アルバロと何かを話した後に帰っていった。

「次はわしじゃ」

 次に出てきたのは矍鑠かくしゃくとしたおばあさんだ。 おばあさんはアイスウォールが得意らしく、鍋には入らないので、帆布の上に出してもらう。

「【アイスウォール】!」

「【ウインドカッター・トリプル】!
 あ…、もう1回【トリプル】!」

 おばあさんの作り出した氷の壁は思ったよりも硬くて、1度では切り離せなかったので魔力を強く込めて改めて【ウインドカッター】を撃ちだした。

「ちょっと、お嬢ちゃん……」

「せっかく大きく出してくれた氷を切り離した分は、少し多めに計るから安心していいぞ」

 エミルに声を掛けられておばあさんは頷いたけど、すぐに私を振り返る。

「こんな可愛らしいお嬢ちゃんに簡単に壊されるとは、わしも年を取ったな…」

 がっくりと肩を落としたおばあさんに、アルバロとイザックが声を掛ける。

「あんたの壁は分厚くていい壁だぞ。 アリスがおかしいだけだから気にするな」
「ばあさんの【アイスウォール】なら、今でも十分に戦力になるぞ?」

「ふん! お嬢ちゃん! もう1発行くぞ!」

 2人のおかげで気を取り直してくれたおばさんは、さっきより一回り小さい壁を2回出してくれて、合計で25㎏になった。

「75,000メレか。 孫に何か買ってやろうかね」

 ほくほく顔で帰るおばあさんを見送りながら、この調子だと、今日の目標の300㎏はあっと言う間に集まりそうだと、私もほくほく顔で残っている人たちを見る。  

 あれ? ……残っている人たちが微妙な顔をしている?

「どうかしたの?」

「私は攻撃しかできないんだけど…」
「俺もだ。 何かに向かって投げないと……」

 ああ、フェルナン君の所にいた冒険者と同じタイプか。

「大丈夫! じゃあ、私のお腹を目がけて攻撃して」

 帆布の上に立って攻撃を促すと、「自分をバカにしているのか!?」といった声が聞こえたが、護衛組が上手に説明をしてくれて、なんとか機嫌を治して氷魔法を使ってくれた。

 最初の2人を基準に考えてわくわくしていたが、2人がずば抜けていただけで、他の人は1人2~3kg、多くても10㎏ほどの氷しか出なかった。

 合計で75㎏にしかならなくてがっかりしていると、突然背後で魔力が膨れるのを感じた。

「【ファイヤーアロー】!!」

 はっ!?  なんで!?
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