女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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とっても素敵な髪飾り

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 モレーノ裁判官は“宿泊料”だと言って、青みがかった淡い紫色が美しい宝石がついた髪飾りを私にくれた。

「アリスさんに贈るなら、赤い宝石か真珠などがいいかと思うのですが、この“ターフェアイト”は“お守り”だと思って受け取ってください」

 と言いながら私の頬にかかっている髪を耳にかけ、固定するように髪に差し込んだ。 

 コームタイプなので手軽に髪に挿して楽しめるが、落ちやすいので冒険者活動には不向きかな? と考えていると、裁判官が、

、使ってもらえませんか?」

 と優しく微笑むので、何か意味のある宝石だという事がわかった。

「ありがとうございます! 喜んで!」

 と答えると満足そうに微笑むので、どんな意味があるのかと聞いてみようと思ったら、

 “ぐぅぅぅぅぅ……”

 誰かのお腹の鳴る音で、タイミングを逃してしまった。

 振り返るとアルバロが明後日の方を向きながらお腹を押さえている。

「晩ごはんには少し早いかな?  アルバロ、何か食べる?」

「「「「食べる!!」」」」

「……みんなのお腹が空いてるなら、すぐに晩ごはんにしようか」

「そこまで減ってない! 晩ごはんは後から食うから、おやつに何か食わせてくれ!」

 晩ごはんにしようとインベントリのリスト開いたらアルバロが慌てたようにおやつを希望して、3人も何度も頷いて「おやつ」を連呼した。

 今、私がおやつに食べるとしたら、野菜スティックかクッキーを2,3枚摘む感じなんだけど、4人の希望は違う気がする。

 念の為にリクエストを聞いてみると、

「シチューライス」
「おむすび」
「炒飯」

 見事にお腹に溜まるご飯物を希望された。
  
 炒飯はお昼に食べたから却下。 食べる量の調整が簡単なシチューライスを採用して深皿とご飯とシチューを鍋ごと取り出すと、当然従魔2匹もテーブルに寄って行く。

「裁判官と隊長も食うだろう?  腹具合と相談して自分で注いでくれ」

 当たり前のようにエミルが声をかけ、出しておいた深皿を2人に渡すと、

「アリスさん、晩ごはんに誘惑のトーストを出してもらえますか?」

 裁判官はお皿にご飯をよそいながら、晩ごはんのリクエストを出した。

 ……本当に、晩ごはんを別に食べるつもりなんだ?  私はおやつを食べるのはやめておこう。









 モレーノ裁判官からのリクエストは<誘惑のトースト>。 お昼にも食べているからまったく同じものを出してもおもしろくないので、フレッシュチーズ、今回はカッテージチーズを作ることにした。

 クリーンをかけた手ぬぐいでチーズを濾していると、マルタがお皿を持ったまま近づいてくるのが見えた。

「マルタ、ちゃんと座って食べて? 行儀が悪いよ」

 野営中や移動をしながらの食事なら仕方がないと思うけど、今はそうじゃない。

 軽く叱ると慌てて席に戻ってくれたので、台所から出て声をかけてみる。

「どうしたの? 何か欲しい?」

「ううん。何をしていたのかが気になって……」

 最近料理に興味を持ち始めたらしいマルタの行動に納得して、

「晩ごはん用のフレッシュチーズを作っていただけだよ」

 と答えると、みんなが驚きの声を上げた。

「チーズって、そんなに簡単にできるのか!?」

「今作っているのが簡単なだけだよ。 後で食べて気に入ったら、作り方を教えようか?」

 好みがあるから今説明しても仕方がないと思って後で、と言ったのに、みんなはシチューライスを慌てて掻き込んで台所に集まってきた。

「今日、フェルナン君が持って来てくれたミルクを使って、カッテージチーズを作ってるの。 しばらく濾す必要があるから、味見はまだできないよ?」

 と言うととても残念そうな顔になったけど、好奇心は消えてないらしい。  質問タイムが始まった。

「この、薄いミルクみたいなのは捨てるの?」

「捨てないよ! 後で蜂蜜を入れたりして飲むの。  ミルクを足して、飲むヨーグルトを作るのもいいね」

「ヨーグルトを飲むのか?  …飲めないことはないけど、飲みにくいぞ」

「うん。だから、飲む為のヨーグルトにするんだよ」

「こっちの鍋は何?」

「りんごのコンポートを作ってるの」

「こっちはなんだ?」

「ハーピーの手羽元を煮込もうと思って、下準備中」

「「「「手伝う!」」」」

 説明を聞きながら好奇心が膨れ上がったのか、今夜も護衛組が手伝ってくれると言うので遠慮なくこき使うことにする。

 私たちが料理を作っている間、モレーノ裁判官はテーブルの上に大量の書類を取り出して仕事をしていた。 

 ウーゴ隊長が自然体で補佐のようなことをしているので、びっくりする。 生粋の武官かと思っていたのに文官の仕事までできるなんて、随分と優秀な人だったんだと感心するばかりだ。

 カモミールティーとお茶請けのクッキーを出すと、2人とも嬉しそうに一息吐いた。 

 とても大変そうなのにわざわざここに泊まりに来た理由を知りたかったが、まだまだ未処理の書類が山となっていたので落ち着くまで待つことにする。

 手が空いたら声をかけてくれるように言って台所に戻ると、鍋からりんごのコンポートをつまみ食いをしようとしている護衛組&従魔たちの姿があった。

「……全員、退場! 台所から出て行きなさい」

「ちょっと味見を」だの、「出来を確認しようとしていただけ」だのと言い訳をしているが、目が泳いでいるので目的はただのつまみ食いだと簡単にわかる。

「言い訳無用。 退場!」

 この人数でのつまみ食いを許すと作ったものがどんどんなくなっていくので、心を鬼にしてみんなを台所から追い出した。

 お手伝いは本当に助かるんだけどなぁ…。 残念!
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