女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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試食会 2回目 3

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いつもお読みくださりありがとうございます!
このお話の前半に出てくる『入浴方法』は<ビジュー>用にアレンジしたものなので、何の根拠もございません。
さらっと流してくださいね!


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 サンダリオギルマスを始め、商業ギルド幹部と私が答えを出せずにうんうん唸り続けていると、

「どんなに素晴らしい情報でも、それを皆が行わないと意味がない。
 情報は情報として正しく登録しておいて、今の入浴の現状に沿わせるように少し改良したものを広めてはどうだろう?」

 モレーノお父さまがあっさりと言ってくれた。

「そうだな……。 私の領地の公衆浴場では、冷える季節には入浴前にコップ1杯の白湯をサービスさせよう。 水と薪代の補助として税を安くしてやれば、公衆浴場の経営者も文句を言うまい。 
 体を温めた後に行うかかり湯であれば、少しは回数も減らせるのではないか?  であれば、かかり湯は湯を汚さぬ配慮としても有効だと2本立ての理由付けをしてやれば良い。浴場側にもメリットがある話だ。
 “かぶり湯”は面倒なので庶民には定着しないだろから、しばらく様子見で問題はないだろう」

 確かに、日本でかけ湯は当たり前に浸透していたけど、かぶり湯をしている人は滅多にいなかった。

「公衆浴場を使わない人たちはどうしましょうか」

「公衆浴場を使わないのは、家に風呂がある富裕層だろう。  情報は正しく登録するのだから、富裕層は自分の金で命と健康を買えばいい。 湯代など微々たるものだ」

 お父様の言葉に幹部の数人が頷き始めた。

「庶民はほとんどが公衆浴場を使うから、公衆浴場への補助をすれば十分だろう。 アリスはどう思う?」

 お父さまは幹部たちの賛同だけでは納得しないようで、私にも聞くけど、

「アリスなら別の意見を考えつかないか?」

 賛同が欲しいわけではなくて、意見が欲しいらしい。だったら…。

「概ねはお父さまの意見に賛成します。 追加として、浴室に入る前に、桶に溜めたお湯の中に足だけ入れてはどうでしょう」

 “足湯”のようなものかな? 服を脱いだ後だと冷えてしまうから、服を脱ぐ前に。 結構温まると思うんだけど。

 丁寧な言葉で話しかけたことに不服そうな顔をするお父様に、にっこりと笑いかける。 人前なんだから仕方がないよね? ちゃんと“お父さま”って呼んでるんだから、譲歩を求めます!

「あと、私が登録する情報によって、お父さまが出費をかぶることは許せません。 ……領主家で商売をする気はありませんか?」

「ほう? どんな商売かな?」

 “お父さま”と繰り返したのが良かったのか、モレーノお父さまは機嫌を治して穏やかに聞いてくれた。

「公衆浴場で、お風呂上りで喉が渇いている人たちに飲み物を販売するのです。 【クリーン】済みの冷えた水やミルク、またはお茶などを販売すれば、買う人はいるでしょう?」

 日本の銭湯では飲み物を売ってる所がほとんどだもん。 売れるはず!

 自信を持って提案したのだけど、お父さまは微妙な表情を作る。 なんだ?

「アリス。君は商人でもあるのだから、商売の種を簡単に人に渡そうとしてはいけない」

 ため息を吐きながら窘められたけど、私はこの商売には手を出したくない。

「売り子の教育やお金の管理などをしている余裕、私にはありませんよ。 基本は旅をしたり冒険者活動でうろうろとしていますからね。
 …お父さまはこの案が成功すると思いますか?」

「補助金以上の収入にはなるだろう」

「だったら、他の誰かが始めてしまう前にお父さまがしてください!」

 お父さまの目から見ても商売になるなら、是非、お父さまに儲けて欲しい。 ハクとライムをお父さまの膝に乗せて、可愛くおねだりさせてみる。

「んにゃ~?」
「ふきゅ~?」

 2匹がすり寄り可愛く鳴くと、モレーノお父さまは狙い通りに“仕方がない”と微笑んでくれた。

「あの……、公衆浴場の中にはすでに同様の商売をしている所もありますが」

「あら」
「おや」

 幹部の1人が言いにくそうに教えてくれたことで、私とお父さまは顔を見合わせた。

「お父さまも公衆浴場には行った事がありませんでしたか?」

「ああ。自分で思っているほど市井に馴染んではいなかったようだ。
 では、まだ飲み物を販売していない浴場と話をしてみよう。 場所の使用料として、売り上げからいくらか支払う形だな。 どう思う?」

 お父さまが先ほどの幹部に問いかけると、他の幹部たちと視線を交わししばらく考えてから「商売になると思う」と答えてくれた。 プロからお墨付きをもらった形だ。

 気を良くした私は、もう一つ提案することにした。

「では、すでに飲み物を売っている浴場の商品と差別化を図らないといけませんね? 
 …体が欲している間はとてもおいしいけど、体がもういらないと判断したらおいしくなくなる飲み物ってどう思います?」

「何ですか、それは!? そんな飲み物など聞いたことがありませんが、そんなものがあれば、美味しいと感じる間は飲み続けるという事ですね?  少量からの販売にして置けばおかわりで儲けが…」

 これにはお父さまより先に、商業ギルドの幹部が食いついてくれた。 悪くない反応だ。

「これは、病気などで発熱した際にも活躍する飲み物なのです。水よりも吸収が良くて弱った体に優しい」

「ほう? そんな飲み物があるのかい?」

「あるんです♪」

 論より証拠! 幸い材料は揃っているので作ってみよう。 もちろん、ハクの遮蔽結界の中で!






 水に塩と砂糖とレモンを搾って混ぜたもの。 そう! 日本ではおなじみの<スポーツドリンク>!

 作ってみたのはいいんだけど、今はこの部屋においしく飲める人材がいない。 

 味見をした皆さんの反応はとっても微妙で“不味くはないけど美味しくもない”と“やや不味い”って顔だ。 十分に飲み食いした後だもんなぁ…。

「これは、我々の体がこの飲み物を欲していないという事でしょうか?  ……では実験をしましょう」

 どう説明しようかと思案していると、ギルマスが検証実験を提案してくれた。

 私にスポーツドリンクとクリーンをかけた水を大量に作るように言うと、ギルドの職員を12人集めるように幹部の1人に指示を出す。

 しばらく待つと、キッチンに体力自慢の男女12人のギルド職員が集まった。

 ギルマスは全員にスポーツドリンクを飲ませて、美味しいと感じた組と美味しくないと感じた組に6人ずつ分けてギルドの周りを10周走ってくるように言い付けた。

「この実験は少し時間がかかりますから、アリスさんはそのまま自由にしていてください」

 私が今日は忙しいと言ったからギルマスが申し訳なさそうな顔をしているけど、発案したのは私だし、キッチンで今夜の準備をさせてくれているのだから、何の文句もない。

 ありがたく、調理を続けさせてもらった。



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いつもお読みくださりありがとうございます。
このお話の前半部分の『入浴方法』は、<ビジュー>用にアレンジしたものなので、笑ってスルーしてくださいね^^
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