女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

文字の大きさ
247 / 754

試食会 2回目 6

しおりを挟む


「私の娘が私の為に作ってくれたレシピなのだから、まずは我が家だけで商売を行う。 
 レシピの扱いだが……。 <商業ギルド>が検証実験の手伝いをすることを条件に<秘匿登録>をする。その後期限が切れる前に<公開登録>に切り替える予定だ」

 モレーノお父さまが少し考えてからギルドの皆さんに告げると、

「「「「「お手伝いさせていただきます!!」」」」」

 サンダリオギルマスや幹部たちだけでなく、職員さん達の声が揃った。

 皆さんの返事を聞いて、お父さまが微笑みながら続ける。

「希望があれば<商業ギルド>と<冒険者ギルド>へ商品として卸そう」

「「よろしくお願いします!」」

 両ギルドのマスターの声も揃う。

 部屋の隅のテーブルで“入浴の手順”の草案を作っていたミゲルさんが手を挙げて、

「商品の性質を考えると<治癒士ギルド>も放っては置かないと思いますが…」

 ちょっとだけ嫌そうな表情かおで提言してくれる。お父さまはチラッと私の顔を見てからミゲルさんに向き直った。

「私の娘はこの飲み物で利益を出そうと考えているが、暴利を貪ろうとは思っていないだろう。 レシピ次第だが、私もこの飲み物は」
 “ぽしょぽしょぽしょ”

「本当に? 本当にそれだけで体に優しい飲み物になるのかい?」

 耳元でスポーツドリンクのレシピを説明すると、お父さまは少し驚いた顔をした。

「はい。 でも、この飲み物は普段から水やお茶のように飲むことは勧められません。 汗を掻いた時や、風邪や疲れによる発熱、食べ過ぎなどによる下痢などの時だけにしておいた方がいいと思います。 
 レシピにする時に、改めて詳しく説明しますね」

 私が肯定を返すとお父さまはにっこりと微笑んで頷き、話を続ける。

「私はこの飲み物を砂糖入りの紅茶や果物のジュースなどと同程度か安価に設定して、必要とする者の元へ届けたいと思っている。
<治癒士>ギルドについては……、アリスはどう思う?」

 モレーノお父さまが多くの利益よりも領民のことを考えていることが伝わってきて、従魔たちとほんわかした気分をわかちあっていると、いきなり意見を求められた。

 ……治癒士ギルドかぁ。

「個人的な見解ですが……。 たかが【リカバー】魔法の1回に最低1千万メレからの値段をつける組織を、好ましくは思えません」

「【リカバー】はたかがな魔法ではありませんが……」

 幹部の1人が首を横に振る。 うん、確かに表現が乱暴だったかも。

「女神ビジューが、地上で生きる者たちの為に与えてくれた大事な能力だという事は理解してるけど、魔法は魔力がある限り使えるし、魔力は生きている限り回復するでしょ? 
 私が知らないだけで、リカバーを使える治癒士たちは、1年に1回しかリカバーを使えないくらいに魔力の回復が遅いの?」

「……魔力の回復にそこまでの時間が掛かると聞いたことはありません。 通常、1日休めば魔力は完全回復しますし、MPポーションもありますから」

 私の疑問には治癒士たちと係わりが深いミゲルさんが答えてくれる。やっぱりちゃんと回復するんだ。

 だったら、ひと月に1人治療をすれば1年で1億2千万メレ、10日に1人治療すれば3億6千万メレになる。

「治癒士にだって生活があるし、安くしすぎてしまうと治療の希望者が増えすぎて治癒士の身が持たないだろうから、ある程度は高額になってしまうのは仕方がないと思うけどね。 
 でも、『教会』…、教会は『女神の仮の家』でしょう? その教会で治療を行うなら、もう少しやりようがあるでしょう!?」

 皆さんが目を丸くして私を見ている。 …少し興奮してしまった。

 落ち着け、私! と1人で反省会をしていると、それまで調理をしながら静かに聞いていたエミルが笑い出した。

「ああ、なるほど! そこが気に入らなかったのか」

「ん?」

「わたしがアリスなら<冒険者ギルド><商業ギルド><治癒士ギルド>にそれぞれ登録をして、依頼を受けて魔物を狩って討伐報酬を受け取り、その魔物素材を商業ギルドに直接売って、空き時間に教会で荒稼ぎ、くらいのことを考えそうなんだが、アリスは“自由がない”“縛られるのがイヤ”だと、頑なに治癒士ギルドに近づこうとしなかったからな。 不思議に思っていたんだ。
 そうか、女神の御名を穢すやり方が気に入らなかったのか!」

 エミルの解釈を聞いていたハクは私に飛びかかってくると嬉しそうに頬を舐めまわし、ハクに釣られたのか、ライムは私の足にすりすりと擦り寄ってきた。

 部屋の中の人たちも、頷いたり手を打って納得したり、「さすがは聖女…」とか言ってキラキラした目で見つめてくる人がいたり……。 

 「そんなんじゃない」って否定しても、もう誰も納得してくれない雰囲気ができてしまっていて、私は赤くなってしまった顔を伏せるしかなかった……。








「では、治癒士ギルドが欲しがったなら、こちらの決めた上限以上の値段にしないことを条件に卸すことにしよう。 ただし、どのギルドも『公衆浴場』への販売は禁止する。 
 アリス、これでどうだい?」

「……いいと思います。 販売できる所は多い方が、必要とする人の手に渡りやすいから」

「そうだね。アリスの想定している“この飲み物を必要とする人”は、きっとすぐにでも飲みたいだろうから」

 お父さまの言葉を聞いて、家に常備できるように“粉末”にすることを思いついたけど……、難しいかなぁ。
 
 粉末にしたら転売するのが簡単になってしまうし、成分がどうなるのかがわからない。 携帯用のスープとは訳が違うし。 でも、具合の悪い時にわざわざ買い物に行くのも辛いだろうなぁ……。

 1人悶々と悩んでいると、私の様子に気が付いたお父さまと護衛組が事情を聞いてくれた。

「ああ、それなら大丈夫じゃないか? 金のあるヤツは誰かに買い物を頼むだろうし、金のないヤツ等は横のつながりが深いから、誰かが代わりに買いに行く。 
 アリスが心配しているのは金のないヤツ等の方だろう? アイツらはいつ必要になるかわからない物を“買い置き”なんかしないからな」

「そうね。普段は飲まない方がいいんでしょ? だったらあたしも買い置きはしないわ。 メンバーの誰かが必要になったら、ギルドかお風呂に行けばすむんだし」

 そう言って笑う護衛組と頷くギルド職員さんたち。 庶民代表の意見が聞けて心強い。

「もう、心配なことはないかい?」

 と聞いてくれるお父さまに、安心して詳しいレシピや取り扱いの注意点を説明する。

 ギルドにはお父さまが登録してね!  検証実験の続きもよろしくです!

 実は【鑑定】の結果で、ちゃんと効き目があることはわかったんだけど……。

 頑張って走ってくれたギルド職員さんのこともあるし、この検証実験で効果を実感した方がいいよね? 
しおりを挟む
感想 1,118

あなたにおすすめの小説

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~

魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。 ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!  そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!? 「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」 初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。 でもなんだか様子がおかしくて……? 不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。 ※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます ※他サイトでも公開しています。 【無断転載・AI利用禁止 / No Unauthorized Use or AI Training】 本作品の無断転載・複製・AI学習利用を禁じます。 Unauthorized reproduction or use for AI training is strictly prohibited. © 魯恒凛 / RoKourin

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

最安もふもふ三匹に名前をつける変な冒険者ですが、この子たちの力を引き出せるのは私だけです ~精霊偏愛録~

Lihito
ファンタジー
精霊に名前をつける冒険者は、たぶん私だけだ。 うさぎのノル、狐のルゥ、モモンガのピノ。三匹とも最安の契約で、手のひらに乗るサイズ。周りからは「手乗り精霊で何ができる」と笑われている。 でも、この子たちへの聞き方を変えるだけで、返ってくる答えはまるで違う。三匹の情報を重ねれば、上位の精霊一体では見えないものが見える。 上位パーティが三度失敗した大型討伐。私は戦わない。ノルに地中を、ピノに上空を、ルゥに地上を調べさせて、答えを組み上げる。 ——この世界の精霊の使い方、みんな間違ってませんか?

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...