女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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試食会 2回目 7

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 回復したギルド職員さん達と入れ替わりにキッチンに入って来たレシピ班と調理補助班は、前回よりも人数が多かった。 品数的には半分くらいの人数でいいと思うんだけど……。

「今回の登録予定数は前回の1/3ほどだから、調理補助班は半分以下に減らすようにとの指示を受けなかったか?」

「半分に減った椅子を奪取する為の争いが起きそうだったので、全員を連れてきました。 大事な手を保護する為です」

 料理部門担当のラファエルさんが素敵なもふもふ尻尾を揺らしながら呆れたように確認すると、調理班のリーダーらしき女性が悪びれることもなく堂々と説明するのでびっくりした。  

 殴り合いでもしかけたの!? 何の為に?

「調理補助って特別手当が出るの?」

 好奇心に負けてサンダリオギルマスに確認をすると、答えは“NO”だ。でも、

「今回は❝美味しい新作料理のオリジナルを味わう❞こと、またその調理法を取得することが彼らの狙いです。 前回アリスさんがレシピ班や補助班へ試食品の提供をしたことと、調理法を丁寧に説明してくれたことが好評過ぎました」

 ため息混じりにギルマスに教えられて、私は2度目のびっくりだ。 皆さんどれだけ食いしん坊なの!?

 自分の作った料理に興味を持ってもらえたのは嬉しいけど、試食に出した料理を全て作るとしてもこの人数は多すぎる。 はっきり言って、邪魔になるだけだ。

 “困る”とラファエルさんに視線で訴えると、

「では、調理班をまとめ切れなかった君と、前回の試食会に参加しなかった調理補助員はキッチンから出なさい。 レシピ作成担当はそのまま残るように」

 あっさりと、結論が出た。

 キッチンを出るように言われた人たちが不満の声を上げても、

「前回『調理補助員なんてものは自分たちの仕事じゃない!』と言っていたのは誰だ?  “くだらないプライドは折角のチャンスを棒に振る”という事を学んだな?  
 わかったらさっさと出て行きなさい」

 これ以上の不満も反論も聞く耳はない、とばかりにふわふわな三角のお耳を明後日の方向に向けてしまう。 

 リーダーだった女性は、自分が外されるとは思っていなかったようで愕然としていたが、ラファエルさんに冷たい目で見られていることに気が付くと、すごすごとキッチンから出て行った。

 ……部下に嫌われないように立ち回った結果が、自分の首を絞めることになったのか。 最初から指示通りに人数を減らしておいた方が傷は浅かったよね。 と、他人事だけど後味の悪い思いで見ていると、マルタがそっと近づいて来て、

「あれ、アリスも悪いんだからね?」

 耳元でボソッと囁いた。

「え?」

「前回、ギルド職員たちに大判振る舞いをし過ぎたの。 だから、今回人数を増やしたままでも、甘ちゃんなアリスなら文句も言わずに受け入れるだろうって、判断されたのよ。 
 わかる? あのリーダーだった女に舐めてかかられたの!」

「ええっ!?」

 びっくりしてマルタを見ると、マルタは珍しく、厳しい顔で私を見ていた。

「今回、アリスがあの大人数を受け入れなくてホッとしたぞ」
「そうだな。一瞬そのまま使ってやるのかと思っちまった」
「ちゃんと『いらない』って意思表示しているのを見て安心したよ」

 マルタだけじゃなくアルバロ達まで同意するのを聞いて、少し反省する。 常々言われていたことだもんね。『冒険者と商人は舐められてはいけない』って。   

 ……難しいなぁ。








 調理に取り掛かる前に、レシピ班と調理補助班のみんなに試食の料理を渡すと、護衛組の『わかっていないな?』と言う様な呆れた視線を感じたので、“最初に『こんな物を作るんだ』と認識している方が説明をする時に理解がしやすいんだ”と説明すると、しぶしぶ納得してくれた。

 レシピ班や調理補助班のみんなが「美味しい!」「綺麗!」「最高っ!」と嬉しそうな声を上げながらも、真剣な目で料理を観察しながら味わっているのが伝わったからだろう。 

 みんなが食べ終わり、私に『早く作りたい!』という視線を向けてくれたので、調理をスタートさせる。

 前回と一緒で、私は好きなように料理を作るだけ。 面倒なレシピ作成は、前回よりも人数を増やしたレシピ班が担当してくれているし、ひたすら“混ぜる”“潰す”といった力仕事は調理補助班が頑張ってくれるので、とっても楽だ。

<粉スライムジェル>を作っている時に、

「ああっ!! またそんな……。 どうやってレシピにすればいいの~っ!?」

 とレシピ班の数名が泣き言を言っていたこと以外はとても順調だった。

 素直に【ドライ】魔法の使い手を探せば良いんじゃないかなぁ? と思ったけど、魔法頼りにしない所にレシピ班のプライドを感じたので黙っておいた。

 今回は品数も少なかったので、全員で取り掛かるとあっと言う間に料理が次々に出来上がる。 

 1品目をテーブルに給仕するときには、席を外していた幹部さん達も戻って来ていて、嬉しそうに食べ始めた。

 ……前回に比べて、幹部さん達が疲れ果てた顔をしているので、今回の、デザートばかりの試食会は、別の意味で成功だったのかもしれない。

「これだけじゃあ全然足りないわ! きちんとお金を支払うから、4皿にしてもらえない?」

 と言う、グロリアサブマスターの声はもちろん聞かなかったことにした。

 きちんと学習した私は、何でも「いいよ」とは言わないんだ!
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