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発言はきちんと考えてから! 反省…
しおりを挟むモレーノお父さま・王様・宰相さんの3人がかりでのお叱りが終わると、今度は護衛組からの説教が始まった。
「何度も言っているけどな、<冒険者>は金に興味がないと思われたらいけないんだ! 他の冒険者や依頼主に食いものにされたいのかっ!?」
から始まって、冒険者活動には意外と経費も掛かることや、冒険者を食い物にしようとする性質の悪い依頼主や、他の冒険者の上前を撥ねようとする性質の悪い冒険者の話を懇々と言い聞かされる。
その後はサンダリオギルマスやセルヒオさんから、お金の大切さと<商人>としての心構えをレクチャーされた。
それが終わるのを待っていたように、ベルトランギルドマスターも近づいて来て、
「冒険者の安全は金で買うことが出来る。 手持ちの金に余裕のない冒険者は長生きしない傾向がある」
とギルドマスターが見て来たことの実例を交えての話をされて、もうこれで終わりだろうとホッと一息ついたところに、
「アリスさんはお金に絡む事件が1日にどれだけあるか、自分の利益を守る為に皆がどれほど必死になっているかをご存知ですか?」
ノーマークだったティト裁判官とウーゴ隊長のお話が始まる。
みんなからのお説教を受けてさっきの発言の取り消し宣言をする頃には、私はもうぐったりとしてしまい、深いことを考える気力はなくなっていた。
「じゃあ<商業ギルド>には今後10年間の間、きっちりと増収分の10%が振り込まれているかを調査してもらう手数料として、ギルドの私の口座に振り込まれる増収分のお金から3%を引いてもらうってことで……」
「そうだね、領主とギルドの癒着を防ぐためにもアリスが支払った方がいいね。 では、私はアリスへの支払いを3%増やそう」
「どうして?」
「その手数料は私が払いたかったからだよ。でも公正を保つためにはアリスが支払った方が良いからね。
親としては、減ってしまう娘のお小遣いの補填をしてやらないと」
娘を甘やかそうとする父親を、どうやって止めたらいいのか私にはわからない。
いらないと言っても聞いてもらえなくて、結局私は増収分から13%を受け取り、その中から3%を手数料として商業ギルドに支払うことになった。
その時は、増えた3%はギルドへの支払分だから、まあ、いいか。と思っていたんだけど……、違うよね?
それに気が付いたのは商業ギルドとの契約を済ませ、締結の握手をした後だった。
……おかしいなぁ、どうしてこうなったのかなぁ? どうして私の取り分が増えてるんだろうなぁ?
満足そうなモレーノお父さまの顔をぼんやりと眺めていると、
「アリス殿は税収を受け取る権利を手放して、これからどうなさるおつもりだったのですか? アリス殿が登録したレシピの使用料もなかなかの額にはなりそうですが…。いつどこで出費が重なるかはわかりませんよ?」
宰相さんが心配そうに聞き、王様もそれに同意する。「地位や立場によって、出費の桁は上がっていく」とか言っているけど、私には地位も立場もないからね?
「冒険者になって稼ぐつもりなので、大丈夫ですよ」
安心してね!の思いを込めて笑って見せたんだけど、なぜだか、部屋の中にため息がいくつもこぼれ落ちた。
特に冒険者組のため息は深く、目が合った次の瞬間にはくどくどと注意を受けることになった。
「もしも他の冒険者と獲物が被っても、簡単に譲るなよ?」
「野営中に近寄ってくるヤツに、食いモンを簡単にくれてやるんじゃないぞ!」
「魔物相手に苦戦している冒険者と出会っても、『助けてくれ』って言われるまでは手を出すな」
「アリスの後ろを付かず離れずの距離を保って付いて来るヤツがいたら要注意よ? アリス自身を狙っている場合もあるけど、魔物が出たらアリスを囮にしようと考えている可能性が高いからね!?」
「襲われている人を見かけたら、必ず、助ける前に報酬の交渉をするんだ。 ただで助けたり、後から値切られるようなことはしないでくれよ。 他の冒険者が迷惑を受ける」
護衛組+ギルドマスターの冒険者組の注意事項は、びっくりするような内容ばかりだ。 驚きを隠せないでいると、
「ああ、これだから心配なんだ…」
「腕は良いのに心配が尽きない冒険者なんて、性質が悪い……」
と、また深いため息を吐かれてしまった。
「十分に気をつけるよ……」
こちらとあちらの常識は違うってことを、そろそろ本気で覚えないといけないな……。
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