女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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旅立ちはにぎやかに 2

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「アリスさん!」

 呼びかける声に振り向くと、コンラート夫妻が駆け寄ってきた。 コンラートは土で汚れた防具を身に付けている。

「急な旅立ちで間に合わないかと思ったぞ!」

 私の前で立ち止まると、大きな声で笑いながらアイテムボックスを開き、

「時間もなかったからこれだけしか遭遇できなかったんだが、受け取ってくれ!」

 と言いながら取り出したのは、ホーンラビットが2匹とハーピーが1体だ。

「リハビリもなしで、いきなり討伐に行ってきたの!?」

「これがリハビリさ。 アリスさんのおかげで久しぶりに討伐に行けたよ」

 私の心配を吹き飛ばすように豪快に笑うコンラートの横で、奥さまが仕方なさそうな顔で笑っている。

「せっかくの獲物をもらってもいいの?」

 コンラートに聞いても意味がないので奥さまに確認をすると、奥さまは満面の笑みを浮かべて頷いた。

「主人が冒険者に復帰した記念の獲物なんです。 もらってやってください」

 そんな記念品を軽々しくもらえない、と返そうと思ったけど、夫妻が嬉しそうに笑っているのを見て素直に頂いておくことにした。 でも、手早く討伐部位だけは切り取ってコンラートに返す。

「ありがとう! 大事な食糧が増えて嬉しいわ。 でも、討伐部位はコンラートがギルドに持っていかないとね!」

 幸いフェルナン君はお母さんの方を向いていたから、残酷なシーンは見せずにすんだ。 あとは手早く受け取ってもらうだけだ。

「さすがに、他人の狩った魔物の討伐賞金は受け取れないからね」

 “私を恥知らずにしないで”との思いを込めてコンラートを見つめると、困ったように笑いながらも受け取ってくれた。 

 感謝を込めてもう一度微笑みかけた後は、インベントリを開いて造血薬と初級解毒薬を取り出して、

「せっかく来てくれたんだから、ついでに買い物をして行ってよ! 造血薬は1本12,000メレで、初級解毒薬は1本6,000メレね! もちろんギルドで転売してもいいわよ?」

 押し売りに早変わりだ。

「あ? ちょ、ちょっと待ってくれ! おい、今いくら持ってる?」

 全財産を私に取られたコンラートは、手持ちのお金に余裕がない。 それは奥さまも一緒だろう。 

 こんな時はだ!と私が視線を巡らせるよりも一瞬早く、興奮したあの人の大声が耳に届いた。

「全部だ、コンラート! アリスさんが売ってくれる分は全て買え! 金は私が貸してやる! 今回だけは無利子で良いっ」

「サンダリオ…?」

 ギルマスは戸惑うコンラートの耳を引っ張って、この2つの薬の特徴を説明する。

「そんな貴重なものをどうしてこんな値段で俺に!? それに転売って…」

「これを<冒険者ギルド>へ持ち込んだら、アリスさんとの関係の修復ができていることが1発でわかるし、こんなに素晴らしいものをギルドへ持ち込むお前の評価も上がるだろう!? 
 それに適正価格で売れば利益が出る。 それで美味いものでも食べろ、いきなり無理をするなって言っているんだ!」

 ギルマスが全てを代弁してくれたから私は楽なものだ。 インベントリからせっせと薬を取り出して、地面に敷いた帆布の上に並べて、

「造血薬が100本、初級解毒薬が150本あるわ。 何本買ってくれる?」

 なんのセールストークも展開せずに、強気で押し売るだけの簡単なお仕事だ。

「全てを!」

「お、おい…」

「アリスさんが商業ギルドではなくお前に卸す意味を考えろ! これからもこの町で冒険者を続けるお前への気遣いだ! おとなしく甘えておけ!」

 ギルマスがどんどん余計なことまでバラすから、周りの私を見る目がなんだかちょっと居心地の悪いものになってきた……。 

 コンラート、そんなに感激したような目で私を見ないで! 奥さま、泣き出すのもやめて! 

 もう、コンラート夫妻とは話になりそうにないので、コンラートのスポンサーのサンダリオギルマスを相手に話を進める。

「代理人さん! コンラートは何本買ってくれるの?」

「造血薬100本、初級解毒薬150本全て買い取らせてください! 代金は造血薬が120万メレで初級解毒薬が90万メレの合計210万メレですね。 では代金をどうぞ!
 …冒険者ギルドへ卸す時は、わたくし共で価格を設定しても?」

「いいけど、あまり高いと笑っちゃうわよ?」

「心得ておりますとも! 適正価格をはじき出して見せます!」

 自信満々の笑みで請け負うギルマスに後は任せることにする。

「大銀貨が2枚に中銀貨が1枚、確かに頂戴いたしました。 ありがとうございます。また、ご贔屓に~!」

「是非! 是非ともそう願いたいものですな!」

「ふふっ! 機会がありましたら、是非」

 ふざけてお愛想を言ってみたら、見事に食いつかれてしまった…。

 商人相手にはもっと慎重に物を言わないといけないな。 笑ってごまかそうとしたけど、きっとギルマスはそんなに甘くはないだろう。  

 ……何か新しい登録商品ができた時には、サンダリオギルマスの顔を思い出すことにしよう。









 代金を受け取り商品を渡し終わった私の目の前に、2種類の手紙が差し出されている。

「これは?」

「アリスさんが立ち寄った商業ギルドで、ギルドに対して何か要望ができたらマスターにお渡しください」
「アリスさんが立ち寄った冒険者ギルドで、ギルドに対して何か要望ができたらマスターにお渡しください」

「「紹介状です」」

 ……これは一介の旅人に渡すものではないような気がするけど、2人が満面の笑みを崩さないので、何も気が付かないふりで受け取ることにした。

「ありがとうございます! 遠慮なく使わせてもらいます!」

 にっこり笑ってお礼を言うと、2人もにっこりと笑い返してくれたので、どうやら間違ってはいなかったらしい。

 ホッとする私の後ろでイザックの声が聞こえた気がするけど、きっと気のせいに違いないよね~?
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