女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

文字の大きさ
291 / 754

初めての馬車旅 18

しおりを挟む




「馬を?」

「ああ。 あんたらは馬の餌なんて持っていないだろう? 3頭もいたらその辺の草だけでは足りないだろうし、悪い話じゃないと思うんだが……」

 馬の話をしてるけど、ディエゴの視線はごはんに釘付けだ。 そんなにお腹が空いてるのなら、ごはんを食べ終わってから来ればいいのに。

「餌か……」

 今、盗賊のものだった馬たちは辺りに生えている草をんでいるが、ディエゴの馬たちは干し草のようなものを食べている。 うっかりしていたけど、馬にも餌が必要だった。

「俺も十分な量を持っているわけじゃないんだが、あいつらの分を少しづつ分けてやることはできる。
 街に着くまでに途中の村には寄るが、そこで売っても安く買い叩かれるだけだぞ?」

「だが、お前に売っても買い叩かれるよな?」

「……痩せ細らせて安く買われるよりはましな金を払う。 今はそこまでの手持ちがないから街に着いてからになるがな」

 ディエゴの話だと、どっちにしても安く買われることに違いはなさそうだ。でも、イザックは、

「なかなか良い馬だから1頭は俺が飼うつもりだったんだが……。餌がなぁ…」

 と悩みだした。

「アリスはどう思う? 俺は1番良い馬を俺がもらって、残りの2頭を街で売ってからアリスの口座に入れる形でどうかと相談しようと思っていたんだが…。 
 でも、餌がなぁ…。 道草だけでなんとかならんかなぁ……」

「餌ねぇ…。 やっぱり草じゃないとダメかな? 
 りんごとレタス、人参、サツマイモ、ぶどうに木苺、オレンジとかなら馬も食べられるんじゃない? いっぱいあるから、しばらくはそれで持たせられないかなぁ?」

「……は?」

「馬たちに食わしても、この先アリス達が困らないだけの量があるのか?」

「うん。 だから3頭ともイザックの思うようにしたらいいよ」

「はあ……っ!?」

「「ディエゴ、うるさい」」

 馬たちの分も十分な量の食料があると聞いて目論見が外れたのか、さっきからうるさいディエゴを黙らせて、イザックには私たち(イザック含む)と馬たちが食べても十分な量の食料があると話して安心させてあげる。 

 せっかく手に入れた馬を安く手放して、どこかで高く買うことになるなんてバカバカしいもんね。

「と、いうことだ。 悪いが安く売る必要がなくなった」

「そ、そうか。 …いや! ちょっと、ちょっとだけ待ってくれ!?」

 話は終わったと思ったけど、ディエゴにはまだ言いたいことがあるらしい。 でも少し考えがまとまらないのかな? 視線だけをあちこちに流しながら黙り込んでしまった。

 じっと待っているのも暇なので中断していた食事を再開すると、ディエゴの視線もまたごはんに移る。 ……じっと見てるけどあげないよ?

 みんな視線を気にした風もなくおいしそうに食べてくれるので、私も気にしないことにした。
 
「ああ、キャベツもあるね。やっぱり丸ごとかじるのかな? 見たい!」

 おかわりのオークカツの横にたっぷりと千切りキャベツをよそいながら言うと、

「馬はキャベツを食わねぇぞ。 それにあまりでかい状態で食わせると喉に詰めるから、丸かじりはさせねぇな」

 とあっさりと否定された。 …葉っぱの代表みたいな野菜なのに食べないのか。 キャベツ丸かじりとか、迫力があって楽しいと思ったんだけどな。

「そっかぁ。 じゃあ、どのくらいの大きさに切ってあげるの?」

 今夜からの餌の準備の為に詳しく話を聞いている間に、ディエゴの考えもまとまったようだ。

「まずは馬のことだが。 1頭はイザックさんが飼うにしても、残りの2頭は街で売るんだろう? だったら見積もりを取ってその金額で俺に売ってくれ。 これならあんたらに損はないし、俺は通常の売値より安く買えて得をする。 
 その代わりに移動時、あんたらが寝ている間は俺たちが馬の面倒を見る。 ……どうだ?」

 条件としては悪くない。イザックも不満はなさそうだし、良いんじゃないかな。

 でも「まずは」って、他にも何かあるの? ごはんを食べ終わってからにしてくれないかなぁ?

「わかった、それでいい。 まだ話があるなら飯の後にして」
「アリスさんは、どうしてそんなに食料をいっぱい持っているんだ!?」

 イザックも私と同じ考えで、先に食事をさせて欲しいと言おうとしたのに、ディエゴは話すら最後まで待てないようだ。 今度は私に向かって話しかけてくる。 

 ……ハクやライムの世話で忙しいんだけどなぁ。

「旅をするなら食料を多めに持っているのは当然でしょ」

「だからといって、普通は馬3頭に食わせるほどの量の野菜は持ち歩かないだろう? いくらアリスさんのアイテムボックスが時間経過が遅い大容量の物でも、入れ過ぎだ。 
 ……もしかして、旅先で食い物屋でも開くつもりなのか?」

「料理屋は開かないけど、商品になる予定の食材は多めに持ってるの。 これでも商人だか、ら……っ!?」

「飯を売っているのかっっ!?」

 ❝商品になる予定の食材❞と言ったとたんに、ディエゴは身を乗り出してきた。商品になるのは食材で、料理とは言ってないんだけど?

「なあ、飯を売っているのかっ!?」

「おい!! 少し落ち着け! って……、なんだ!?」

 ディエゴを落ち着かせようとしてくれたイザックだったけど、何に気が付いたのか驚きの声を上げる。 

 とっさにマップを確認して魔力感知を発動させたけど、特に魔物の存在はない。 何かと辺りを見回すと、話を聞いていたらしい乗客たちがこちらを凝視していた。 

「飯を売っているんだな!?」

「ああ、そういうことか! ……美味そうだろ? 美味いぞ!!」

 ああ。なるほど。 ごはんを売って欲しかったのか。 でも、まだ町を出て2日目だし、食料に困っている様子はないけど?

 そのことを聞いてみると、御者がお腹を壊したら大変だから、調理をしている食べ物は初日だけで、2日目からは食あたりを起こしにくい状態にしている携帯食に切り替えているらしい。

 そんな中、調理しているごはんを食べている私たちの姿は❝目の毒❞だったと。 ああ、休憩の度に何かを食べているのも気になっていたと。 

 うちの仔たち、食いしん坊だからね。

「売ってくれるのか?」と聞かれて思わず頷くと、イザックがすかさず「旅先なんだ、当然高いぞ?」と一言添えてくれる。 

 ……うん。オスカーさんにも念押しされてるからね。旅先のごはんは高値にするよ。

「「「「いくらだっ?」」」」

 って、揃って聞かれても、まだ値段を決めてないし……。 でも、期待に満ちた視線は無視できない。

 仕方がないので、急遽メニュー表を作ることにした。

 ……でも、私たちがごはんを食べ終わるまでは待ってね? そのくらいは待てるよね!? 
しおりを挟む
感想 1,118

あなたにおすすめの小説

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~

魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。 ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!  そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!? 「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」 初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。 でもなんだか様子がおかしくて……? 不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。 ※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます ※他サイトでも公開しています。 【無断転載・AI利用禁止 / No Unauthorized Use or AI Training】 本作品の無断転載・複製・AI学習利用を禁じます。 Unauthorized reproduction or use for AI training is strictly prohibited. © 魯恒凛 / RoKourin

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

最安もふもふ三匹に名前をつける変な冒険者ですが、この子たちの力を引き出せるのは私だけです ~精霊偏愛録~

Lihito
ファンタジー
精霊に名前をつける冒険者は、たぶん私だけだ。 うさぎのノル、狐のルゥ、モモンガのピノ。三匹とも最安の契約で、手のひらに乗るサイズ。周りからは「手乗り精霊で何ができる」と笑われている。 でも、この子たちへの聞き方を変えるだけで、返ってくる答えはまるで違う。三匹の情報を重ねれば、上位の精霊一体では見えないものが見える。 上位パーティが三度失敗した大型討伐。私は戦わない。ノルに地中を、ピノに上空を、ルゥに地上を調べさせて、答えを組み上げる。 ——この世界の精霊の使い方、みんな間違ってませんか?

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...