女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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油断大敵

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「【ウインドカッター・ダブル】! 
 【ウインドカッター・トリプル】!  ……失敗かぁ。
 【ウインドカッター・ダブル】!!」

「もっとちゃんと狙うのにゃ!」
「ありす、がんばれ~」

 森の中に❝バサッ❞❝ドサッ❞という音と、私の可愛い従魔たちの声援(?)が響く。

 底を突きかけているまきの補充と、何かと使い勝手のいいウインドカッターのレベル上げを同時に行おうと、森の木をウインドカッターで伐り倒すことにしたんだけど……。

 枝を効率よく落とそうとウインドカッターを連発で放っても、同じ枝に攻撃が通ってしまって、複数の狙った枝を落とすことはなかなか成功しない。 ダブルまでなら何とか当たるんだけど、トリプルになると、3発目が2発目と同じ場所を通るか、狙った枝から逸れてしまうのだ。

 細かな狙いを定めないでいいのならクアドラプル4かいまでは普通に打てるんだけど……。 今までは当たればそれでよかったんだけど、いつまでもこのままではこの先、冒険者として活動する時に困るかもしれない。 

 幸い薪はどれだけあっても困るものではないので、ウインドカッターの練習台として遠慮なく伐り倒していく。 

 もちろん、森の中を移動しながら少しずつ。1か所をハゲにしないように気を付けながら。 ハクやライムのアドバイス通りに伐ればいいから楽なものだ♪

 枝を落とした後の木は、上から順に30㎝くらいの長さでカットする。 これは同じ場所にウインドカッターを重ね撃ちで大丈夫。 細い木だと一発で、太い木でも重ね撃ちをすればいいだけなので、ウインドカッターは本当に便利だ。

 伐った木は、枝はそのまま【ドライ】魔法で乾燥させて、幹は後で割るからそのままインベントリへ収納する。

 木を伐りながら少しづつ森の中を進み、所々に生えている椎茸ももいでいく。

 シーダの森の椎茸は全部そのまま食べてしまったけど、今回はドライ魔法で乾燥させて干し椎茸にするつもりだ。

 これで椎茸から出汁が取れるぞ♪  

 伐る木は従魔たちが、椎茸のありかや近くにいる魔物はマップが教えてくれるので、私はウインドカッターのレベル上げに集中できる。 

 少しづつ、狙いを定めた複数の枝に当たるようになり、トリプルでも外さなくなった時には、随分と大量の薪と椎茸が手に入った。 これを複製しながら使えば、もう、薪とお出汁の心配をすることはなくなるだろう。

 森の中で枝などを拾う手間が省けるので、獲物に向かって一直線に進むことができる。 大幅な効率のアップになるね!









 しばらく進むと、マップの赤いポイントと1本の木が重なった。 

 このポイントには種族名がなかったので、新しい食べ物か、まだ遭遇していなかった魔物かと思っていたんだけど……。 どう見てもただの木だ。

 薪にするのに最適な木なのかな? と思いながら、

「【ウインドカッター・トリプル】!」
「【鑑定】するのにゃ! それはトレント、魔物にゃ!!」

 私が木の枝を落とすためにウインドカッターを放つのと、ハクが警告の叫びをあげるのはほぼ同時だった。

 ❝ザンッ❞❝バサッ❞と枝が落ちるのと同時に、

「キシャーッッ!」

 という鳴き声(?)と共に、木に絡まっていた蔓が私目掛けて飛んできた。

「ライム! ハウス!!」

 慌てて避けながらライムを抱き上げ、従魔部屋ハウスに避難させる。 ハクの、

「アリスのバカッ」

 ❝にゃ~❞を忘れた本気のお叱りを甘んじて受けながら、急いで動く木を【鑑定】してみると、ハクの言ったとおり<トレント>という樹木の魔物だった。 

 なんとなく、❝木❞には<火魔法>で攻撃したくなるけど、こんな森の中で火の攻撃魔法を使って森林火災を起こす危険は犯せない。

 蔓や何かの木の実らしき物の攻撃を避けながら、薪づくりの為に熟練したウインドカッターでトレントの枝を落とし、根本と幹の中央辺りにウインドカッターを連続で放つ。 

 始めこそびっくりしたけど、蔓や木の実の攻撃以外はそこまで素早くはなかったので、伐採する要領で簡単に倒せた。

「大丈夫にゃ?」
「うん。最初は驚いたけどね。大丈夫」

 トレントをインベントリに回収しながら、心配してくれたハクに笑いかけると、

「アリスのバカ! うかつにもほどがあるのにゃ!」

 小さな口を大きく開いてハクが私を怒鳴りつけた。

「うん、ごめんなさい」

 この件に関しては何の言い訳もできない。ただただ、私がうかつだった。 きちんと鑑定をしておけば、ライムを危険に晒すことなんてなかったのに。 

「ライム、ごめんね」

 ハウスから出したライムに頭を下げると、

「ぼくはだいじょうぶだよ。ありすとはくはけがしてない?」

 何の文句も言わずに私たちの心配をしてくれる。 ……文句を言ってくれた方が気が楽だったなぁ。

 ライムの優しさが胸に突き刺さる。 この可愛い従魔たちを危険に晒さない為に、この森が魔物の生息している森だということを改めて認識する。

 ちょっと、気が緩んでいたなぁ……。と反省をして気を引き締めて、

「おやつ食べる?」

 従魔たち(特にハク)のご機嫌取りだ。 

 ハクにはクッキーとシャーベットを。 ライムには私が魔法で出す氷とクッキーを用意すると、

「し、仕方がないから食べてあげるのにゃ!」
「うれしい! おやつ~~♪」

 2匹は喜んで食べてくれる。

【マップ】でも【魔力感知】でも、この近くには魔物がいないことがわかっているので、安心して従魔たちのご機嫌取りに勤しんだ。

 2匹が嬉しそうに食べているところを眺めたり、ブラッシングしたり、なでなでしたり、もふもふしたり……。

 私が癒されてしまって、警戒心を奮い起こすのが大変だったことは計算外だったなぁ…。
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