女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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助っ人してみた

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「みぃ~つけた♪ 【気配遮断】」

 探索を再開してからしばらく歩き続け、やっと見つけた魔物。

 まだ名前表示のない赤ポイントをターゲットに選んで移動して、やっと出会えた魔物の名前は<ヴェル>。 体調1mほどの芋虫のような魔物だ。

「慎重にいくにゃ!」

「うん。わかってる! イザックの情報だと……」

 私はインベントリから太い枝を取り出して、ヴェル目掛けて投げつけた。

「ピューイ!」

 ヴェルは芋虫らしからぬ可愛らしい鳴き声を上げながら投げつけた枝に向かって糸を吐きだすので、糸が枝に絡んだのを確認してから次の枝を投げつける。

 何度か繰り返し枝を投げつけて、ヴェルが糸を吐きださなくなったら糸とは離れた場所に誘導し、ウインドカッターで真っ二つだ。

 動かなくなったヴェルの体に繋がっている糸を切り離し、死骸をさっさとインベントリに入れてからゆっくりと糸の絡んだ枝を回収する。 

 注意点は糸が絡んでもつれない様に、枝を回しながら糸を巻き取ること。 糸を傷めないように、糸を引き摺らずに自分が移動しながら糸を巻き取ること。

「イザックから聞いた通り、質の良い糸にゃ! 高く売れるにゃ♪」

「これは売らないよ」

 ヴェルの吐き出す糸は綿に似ているけど、綿とは違って燃えにくい特性があるらしく、結構な値で取引されるらしい。 でも、せっかくの上質な糸なんだから、今後の為に売らずにとっておきたい。

 守銭奴しっかりもののハクはせっかくの収入源なのに!とお冠だけど、「糸は何かと使い道があるからどこかで買おうと思っていた。この糸を使えばタダだけど、買うとお金が出ていくよ?」と説得したら、納得してくれた。

 ……実は、機会があったら❝機織り❞をしてみたかったから。なんて言えないなぁ。 TVとかで見て興味があったんだよね。 その為にもいっぱい糸を手に入れておかないと!

 マップに<ヴェル>が表示されるようになったので、積極的に狩りに行く。 もちろん進行方向近くにいる魔物も見逃さない。 

 ヴェルの糸を売らない代わりに、他の魔物素材でお小遣いを稼がないとね!








 トレント、ヴェル、ゴブリンにオーク、ハウンドドッグにワイルドボア、そしてスライム。

 魔物の種類の豊富さに感心しながら移動をしていると、怒声のようなものが聞こえた。

 ゴブリンとハウンドドッグ、あとは名前のない赤ポイントが数点でわちゃわちゃしている所があったから向かっている途中だったので思わず足を止める。

「もしかして、他の冒険者パーティーが狩りをしているところ?」

「そうみたいにゃ」

 ここが『スフェーンの森』の中だということを考えると、誰かが襲われている可能性よりも、冒険者が狩りをしていると考えた方が自然だ。

「邪魔、しない方が良いんだよね?」

 獲物の横取りを疑われてはたまらない。 さっさと踵を返そうとすると、今度は悲鳴のようなものが聞こえた。

「負けてるっぽい?」

「優勢とは言えなさそうにゃ」

 ……すぐ近くで冒険者たちが劣勢の戦いをしているらしい。 

「行った方がいい…?」

「アリスの好きにするにゃ。 でも、行くならきちんと権利の確認もするにゃ!」

 冒険者たちが優勢なら、私はさっさとこの場を離れるだけで良かったんだけど…。 

 劣勢ならこのまま知らん顔をするわけにもいかないかな? 見ず知らずの人たちでも、見殺しにするみたいで目覚めが悪そうだし……。

 助けに行くことを決めて走り出すと同時にハクの声が響く。

「助けを求められるまでは姿を消しておくのにゃ! ゴブリンは若い女を好むから、アリスが姿を見せるだけで寄って来るにゃ。 タダで助けることになるのはダメにゃ!」

「わかった! 【気配遮断】!」

 ハクのアドバイスに従って戦闘状況を確認したら木の陰に身を隠し、戦闘現場に背中を向ける。

 ……身を隠して気配を隠しても、女の声がしたらゴブリンはこっちに来るんじゃないのかな? そんな疑問も頭をよぎったけど、とりあえずは声をかけてみる。

「助けは必要?」

「はっ!?」
「誰だっ!?」

「助けは必要? それとも不要なの?  …5秒以内に答えないなら私はこの場を離れる」

 グズグズしていてゴブリンをこっちに引っ張る羽目になったらハクに叱られる。 5秒と時間を区切ってみると、

「助けて!!」

 さっき確認した時にゴブリンに組み敷かれていた女性が助けを求めて大声を上げた。

「私が倒した魔物の所有権は当然…」
「あんたの物だ! だから助けてくれ!!」

 今度は男性の声が答えた。 反対の声は聞こえないから、これがパーティーの総意なんだろう。

「わかった!」

 普通の猫のフリをしているハクを肩に乗せて、戦闘現場に向き直る。

 冒険者たちよりも魔物の方が数が多い。何頭かは倒したみたいだけど、数に負けそうになっているって所か。

 まずは冒険者たちから少し離れた位置にいるハウンドドッグの首や胴を切り離すように、ウインドカッターを打ち込む。 

 冒険者たちと組み合っている個体は、もう少し冒険者たちに頑張ってもらおう。 まずは殺されかけている男性と犯されかけている女性の救出だ。

「【アイスボール】!」

 男性に馬乗りになって、首に噛みつこうとしているハウンドドッグにアイスボールをぶつけて気を逸らせ、その間に女性を犯そうとしていたゴブリンを横から<鴉>で串刺しにする。 ゴブリンが痛みに硬直した隙に女性がゴブリンの下から這い出したので、<鴉>を引き抜いてそのまま首を落とした。

「子供!?」

 助けた女性の口から漏れた失礼な言葉には目をつむり、次はアイスボールをぶつけられて私に敵意を露わにしている犬の相手だ。 

 と言っても、正面からウインドカッターを放つだけ。

 1発目は避けられたけど、すぐさま打ち込んだ2発目は犬の前足を切り飛ばした。 着地に失敗した犬にすかさず駆け寄って<鴉>で首を切り落とす。

 倒れたままの男性を【診断】してみたら、重症ではあるけど、まだしばらくは持ちこたえられそうなので放っておく。

 次は、1人でゴブリン1体とハウンドドッグ2体を相手にしている男性かな。 ゴブリンはもらっても嬉しくないので、ハウンドドッグを2体倒しておいた。

 次は……。魔物の数が減ったからか、残り2人の冒険者は自分で片を付けられそうだ。いつの間にか優勢になっている。

 こちらに向かっている魔物もいないことだし、このまま放っておいた方がいいだろうな。 念のためにいつでもアイスボールを打てるように準備だけしておいて、まだ立ち上がれない女性冒険者にマントを掛けてあげたら、あとは高みの見物だ。

 思った通り、冒険者たちはほどなく自分でそれぞれの魔物に止めを刺すことに成功した。
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